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優しいみんなにさよならを  作者: 島津宏村
11/21

冬の氷柱1

「ないなぁ」

 図書館に地下牢があると分かってから10日が経過した。もともと秋が終わりに近かったこともあってか、季節は冬に移り変わっている。空気も一段とひんやりとしていて、厚い上着を着ないと震えてしまいそうだ。


 織田は前回の問題から塞ぎ込んでしまった秋田の事情を探ろうと、図書館中を調べ回っていた。幾つかの資料は数日で見つかった。しかし、肝心の秋田に関する資料は1つだけのようで、今は秋田が持っている。

 さすがに貸せと言うわけにもいかず、同じような資料が図書館にないか調べているのだ。


「休憩にしましょうか」

 そう呟いて織田は備え付けの冷蔵庫から、独りでに追加されている料理をレンジで温め、三年一組の教室へと運ぶ。


 図書館を出た途端に冬の刺すような寒さが襲ってくる。あまりの寒暖差にぶるりと身を震わせた。織田は料理が冷めてはいけないので急ぎ足で教室へと向かう。相変わらずと言っていいのか、体育館や運動場からは悲痛な叫び声が聞こえてくる。ここ数日はデスゲームの頻度が増したようだ。未だ織田以外にゲームをクリアした生徒はおらず全員生還の希望はとっくに潰えていた。

 

秋田は問題を解き終わって以降織田以外の誰とも会おうとしなかった。そればかりか一人教室に籠ることを決め込んでいた。

 

最初は出てくるようみんなで説得したのだが、訳の分からない返事が帰ってくるだけで扉を開けることさえしてくれなかった。


 校舎に入れば一時の休息がとれる。暖房は正常に機能していた。異常な静けさの階段を登り三年一組へと向かう。汁物がないのが幸いして料理は運びやすかった。

「入ってもいいですか?」

 扉の外から声をかけるが返事はない。仕方ないのでノックをして中へ入る。

「返事くらいしてくれてもいいのに」

 織田は小声でつぶやいた。

 秋田は防災用段ボールベットにいるが、パーテーションで遮られており外から様子を窺うことはできない。

 良くないのは分かっていても好奇心が押さえられず「入りますよ~」とだけ言ってパーテーションの隙間に体を潜り込ませる。特別広いわけでもないベッドのスペースだがテレビが入るほどのスペースは確保されていた。

 秋田はテレビと話していた。そこに映るのは不気味なほど快活なゲーム主催者だった。声が小さいのか、たまたま沈黙の時間だったのか織田には会話内容を聞き取ることができなかった。


 「織田さん?ノックくらいしてよ」


秋田は織田に気づいたようで声をかけてくるが、声には元気がなく儚げに感じた。

「しましたよ! 声もかけましたしノックもしました」

少し怒れば秋田は目に見えてぐったりとした。

「そうか、ごめんね」

「いえ、それはいいのですが。食べないと死にますよ」

そう言ってぐいっと朝食を押し付ける。しかし、秋田はそれを受け取ろうとはしなかった。

「織田さんこそ寝ないと、からだに障るよ。僕なんかに構ってないで休みなよ」

「死ぬ気ですか?」

織田の表情は険しい。秋田の思惑が見抜けないようだ。

「あながち間違いとも言えないね」

「ど、どういう意味で?」

 明言はしていなくとも秋田の目的は生存する筈。目的が変わったとしたら、今彼が大事そうに抱えている本しかない。これを読めばわかる筈だ。

 織田は不安と好奇心に満たされていく中、冷静に対処することを肝に銘じた。

「それは言えないな。でも、君は助かるよ」

「それはなぜ」

「知らないからさ」

 秋田はそれだけ言うと話すことはないというように背を向けた。


「秋田さん、これだけは言っておきます。例え貴方にどんな考えがあろうと、できる限りみんなで生還するということを……私は諦めません」


 織田は鋭い眼差しを秋田に浴びせる。しかし、秋田は岩のように動くことはなかった。


織田は食事を置いて教室を去った。校舎を出るとぶるりと身を震わせる。睡眠不足が祟ったのかまだ朝だというのにふらふらとした足取りになっている。

「秋田さんの言う通りですね」

 織田は図書館に戻ると椅子を連ねて本格的に眠った。

いかがでしたでしょうか? 冬の氷柱シリーズスタートです!

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