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vs.クイズ王・卯澤拓未<2>

峯尾和・著

MC

「日本で、1番高い山は──」


MC、ここで言葉を止める。視線を手元の台本から卯澤の方に移す。少しからかうかのように微笑むが、すぐに台本に視線を戻し、続きを読み上げる。


MC

「富士山、ですが、

 日本で2番目に高い山は何でしょうか?

 お答えください」


 シンキングタイムの1分間が始まる……はずが、卯澤は問題を聞き終えたと同時にペンを取り、フリップへと走らせる。5秒も経たずにその動きは止まった。卯澤がこぼす。


卯澤

「あ、はい。もう大丈夫です」


MC

「え、本当に大丈夫ですか?」


 おどけるMC。照明は元に戻り、緊迫感を演出していたBGMも止まる。MCはあっけない雰囲気を演出して言う。


MC

「いや、あの超難問をたったの5秒で解き明かすとは、まさにクイズ王!

 それにしても、日本で1番高い山なら僕にも分かるんですが、まさかの2番目と来ましたか」


卯澤

「そうですね、こういった誰でも知っていそうな情報を前振りにして、知識の死角になりそうな部分にポイントを当てる問い方は、クイズの王道とも言えますね」


MC

「なるほど。解答にも自信がありそうだ。細かい話は後でお聞きするとして、まずは正解を確認していきましょう。それでは卯澤さん、フリップをどうぞ!」


卯澤

「はい、日本で2番目に高い山は──」


 卯澤、効果音とともにフリップを出す。


卯澤

「北岳です」


 そこには寸分の迷いもなく書かれた「北岳」の文字があった。


MC

「卯澤さんのお答えは『北岳』。では、判定に参りましょう。

 記念すべき第1回の1問目。判定は!?」


 スタジオに静寂が走る。

 やがて、正解を知らせる効果音が流れた。ピンポンピンポン。


MC

「正解です! 北岳、お見事!」


 スタジオ、拍手に湧く。


卯澤

「ありがとうございます」


 深くお辞儀をする卯澤。正解を自慢するでもなく、つつましやかに、しかし自信を持ち堂々と振る舞う様は、「王大王」をはじめとするテレビ番組で培った経験を物語るようでもあった。


MC

「いや〜、1問目から見事な正解でした。

 この知識、卯澤さんはどのように知ったのでしょうか?」


卯澤

「そうですね、この北岳を問う問題はクイズプレイヤーの間では”ベタ問”として知られています。様々なクイズ大会や問題集で多く出題され、ベタな状態になっているから”ベタ問”と呼ばれているんですね。

 ただ、僕自身としては小学生の頃、音楽の授業で、童謡の『富士山』を習った時に、”富士は日本一の山”であるなら、日本で2番目の山もあるよな、と。当時はまだ小学校の1年生か2年生くらいで地図帳を持っていなくて、父親と一緒に地図を眺めながら日本の山を調べた記憶があります」


MC

「なんと、童謡の『富士山』から疑問を持ったとは……! 凡人では到底考えない着眼点、まさに、幼少期からクイズ王としての道を歩んでいた卯澤拓未!

 さあ、向かうところ敵なし、どんどん行きましょう!

 第2問!」

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