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騎兵の勇者は超乳超尻美女!

 この日、人間軍は徹底した防衛戦を行った。


 まず、人間国側からは絶対に前へは出ない。完全な待ちの姿勢だ。


 コボルト軍は、主力である戦象部隊を先頭に突っ込ませる。人間軍は、戦象部隊や、コボルト歩兵部隊に対して、徹底して矢を放つ。それも尋常な量ではない。

 

全ての弓兵たちが、まるで矢を使い切りのが目的なのかと疑われるような勢いで矢を消費していく。


 投擲部隊は、矢よりも遥かに重くて威力のある投げ槍を次々投擲していく。狙いは戦象の顔、飛距離が足りず足に当たる槍もあるが、それもまた狙いのひとつだ。


 そして、コボルト歩兵とは人間歩兵が真正面からぶつかり、戦線を維持する。


 戦象部隊には、近づかれる前に人間兵たちが後退して、正面からはぶつからないようにする。それでも、下がるときに火を点けたわら束を転がすのを忘れない。


 確かに風向きが逆になったことで、煙は人間陣営へと流れてしまう。


 だから大量には使えない。それでも、戦象たちが人間軍へ突っ込むと、薄いながら煙の範囲に入る。

 前のように戦象が苦しみパニックになることはないが、戦象は御者の言うことを聞きにくくなる。これ以上は進みたくないと駄々をこね、戦象の進行速度は大幅に下がった。


 信長が敷いた防衛戦はうまくいっている。そんななか、敵戦象部隊の中央が左右に開いた。戦象の軍勢。その奥からは、規格外のソレが姿を現す。


 ソレを目にしたとき、人間の砦で、信長も驚嘆の声を漏らさずにはいられなかった。


「なんだ……すげぇのがいるぞおい……」


 大地をえぐり、大地を揺らし、大地をねじ伏せながら疾走する巨獣。神話時代の幻獣すら彷彿とさせるソレは、確かに象だった。


 しかし、コボルト国の戦象は、この世界の単位で肩高は三メートルを超えるぐらいだ。しかし、その象の肩高は五メートルに達しようとしている。


 牙の長さも尋常ではない。ゆるやかなS字を描いて切っ先を前へ向ける牙は途中から枝分かれした凶悪なデザインで、四メートル以上はある。


 赤銅の体表を躍らせ、紅蓮の鎧を鳴らしながら燃えるように咆哮を上げるソレは、間違いなくこの戦場最強の生物であろう。なのにその象に、いや、マンモスと言って差し支えないソレにまたがり乗りこなす人物がいた。


「貴様らふざけているのかぁ!? この軟弱ものめ!」


 戦象が規格外の巨漢ならば、またがる人間も巨漢だった。


 二メートルを超える長身に、鍛えこまれた四肢、スイカ大の臀部に、乳牛大の乳房を持つ、絶世の美女だった。長い髪をなびかせながら、彼女は特大の戟を頭上で振り回し、声と足だけで戦象を乗りこなしている。


「我が愛騎には煙など効かぬ! あらゆる匂い、音、炎にも怯まぬよう幼い頃より訓練しているのだ! いざ! 尋常なる勝負を!」


 猛々しく叫ぶ彼女、チャンドラグプタから将軍と呼ばれた騎兵(ナイト)の勇者の威圧感で、人間の兵たちは腰を抜かしてしまう。


 蜘蛛の子を散らすように逃げる人間たちを前に、将軍ナイトは舌打ちをした。


「待たぬか!」


 将軍ナイトは戦象から跳び下りると、自らの足で戦場を駆けた。


 逃げる兵たちに追い付き、その背を戟で薙ぎ倒し、将軍ナイトはなおも人間陣営へと食い込んでくる。


 これはマズイと、人間兵たちは隊列を組み、槍で将軍ナイトに戦いを挑む。だがそれは、あまりにも無謀な戦いだった。


 相手は勇者なのだ。


 神の駒で、勇者として召喚されるのは並大抵のことではない。


 一つの時代、一つの国で『勇者』として活躍できるほどの実力を持ったツワモノだけが、死後、アガルタへと召喚されるのである。


 まして相手はナイトの勇者。前線での戦働きで、雑兵が彼女に勝てるべくもない。


「はぁああああああああ!」


 裂帛の気合とともに戟を一振り。それだけで豪風が轟き、五人の兵が鎧ごとミンチになった。生き残った兵は、心に一生消えない傷を刻まれる。将軍ナイトは、あまりの手ごたえのなさに怒りのボルテージを上げていく。


「弱い! それでも貴公らは男児か!」


 品があり、凛とした声。彼女の声は、美声と言ってもよいだろう。


 でもそれが、敵としてたちはだかっていれば、聞き惚れる余裕もない。


 コボルト国のキング、チャンドラグプタが召喚したナイトは百人力にも収まらない。まぎれもない、一騎当千の英傑だった。

  

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