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源頼朝の最初の妻、八重姫についてー2

 つまり、伊東祐親と後妻の間の娘と見るならば八重姫は三女ということになりますが、伊東祐親の娘として見るならば四女ということになり、曽我物語の描写と整合性が取れます。

 坂井孝一氏はそのように説かれており、私としても得心のいく説のように思われます。


 さて、問題は八重姫が源頼朝と離婚し、江間小四郎の下に嫁ぐ云々のことになります。

 父である伊東祐親の強引な介入によって、八重姫は夫の源頼朝と離婚することになり、更に我が子の千鶴丸が殺されるという悲劇に見舞われます。

 そして、その直後に父の指示で江間小四郎と八重姫は結婚したという流れになるのですが。

 この江間小四郎の素性がまずは問題になります。


 まず、ここでいう江間小四郎ですが、北条義時の別名として江間小四郎と名乗ったと伝わっていることから、この時に八重姫と北条義時が結婚したという説まであるようです。

 しかし、二つの疑問点から、私はここでいう江間小四郎は、北条義時とは別人であると考えます。


 まず第一の疑問点が、源頼朝と八重姫の離婚騒動が起こった時点についてです。

 この離婚騒動は、一般的に安元元年、西暦で言えば1175年のこととされています。

 この時、北条義時は数えの13歳、満年齢で言えば12歳に過ぎません。

 更に言えば、第二の疑問点として、源頼朝と八重姫の離婚騒動の後、源頼朝は北条時政の下に奔って、伊東祐親の怒りをかわしているという状況にあります。

 こうした状況にあるのに、伊東祐親が八重姫を北条義時に嫁がせるようなことをするでしょうか。

 そうしたことからすれば、ここで出てくる江間小四郎は、後述する阿波局と同様に北条義時とは同名異人と解するのが妥当だと考えられます。


 又、「曽我物語」によれば、結果的に伊東祐親に味方したことによって、江間小四郎は源頼朝に討たれたとされているとのことです。

 例によって「曽我物語」が信用できるのか、という話になりますが。

 こうしたことからすれば、八重姫は源頼朝の挙兵成功後、今度は父の伊東祐親が自害し、夫の江間小四郎はかつての夫の源頼朝に殺されるという悲劇に見舞われたことになります。


 更に気にかかるのが、この後の八重姫の運命です。

 江間小四郎の所領は、北条義時に与えられたことが、「吾妻鏡」に載っているとのことです。

 又、江間小四郎の息子の江間小次郎は、北条義時に預けられ、北条義時が烏帽子親になって元服させている、と「曽我物語」に載っています。


 それこそ坂井氏と同様に推論ばかりになりますが。

 父と夫を失った八重姫は勝者である元夫の源頼朝の慈悲に縋って、官女となり「阿波局」と名乗るようになったのではないか。

 しかし、それを好ましく思わない北条政子(八重姫の姪にもなります)によって、八重姫は北条義時と結婚することになり、その縁から江間小四郎の所領は北条義時の所領となり、又、江間小次郎は北条義時が預かることになったのでは、と私は考えます。


 さて、何でこのように私が推論するか、といえば。

 北条義時の長子、北条泰時の母は「阿波局」ということしか伝わっていない、という不思議な現実があるからです。

 仮にも鎌倉幕府の執権を務め、得宗家の当主でもある北条泰時の実母の素性が名前しか分からないというのは、余りにも不思議ではないでしょうか。


 ですが、「阿波局」の正体が八重姫というのなら、何となく腑に落ちてきます。

 源頼朝の最初の妻の八重姫が、最後は源頼朝の義弟になる北条義時と結婚して北条泰時を産んだというのは、二人が叔母甥の関係になることもあり、余り大っぴらにいうものではないという空気があって、吾妻鏡等に書かれなかったのでは、と私には考えられてならないのです。

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