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クエスト初受注。③

「はい、グラタンが出来たわよ。カイさんも

遠慮なくどんどん食べてくださいねー。」


「はい、ありがとうございます。」

「わぁー、グラタンだ。アン、お母さんの

グラタン大好きー。」


今俺はわかる通りアンちゃんの家へと

お邪魔させていただいている。そう、

俺はあの時のアイリさんのお誘いを

断ることが出来なかったのだ。いや!

だって!アンちゃんが、来るよね?、お兄ちゃん

来るよね?って、目で凄い見てきたんだもん。

それは断れないよねー。と言うことで。

俺は今アンちゃんの家で美味しくご飯を

食べているわけだ。てっゆーかこのグラタン

めちゃくちゃ美味しい。それに他のご飯も

めちゃくちゃ美味い。本当にここがゲームの

世界なのか疑いたくなってしまう。その後、

なぜかお風呂もいただいてしまい、俺が風呂から

出た頃には、疲れていたのだろう。アンちゃんは

もう寝てしまっていた。ちなみに

お風呂はめちゃくちゃ気持ちよかった。


「どうですかカイさん?くつろいでくれて

ますか?ここがカイさんの家だって

思って貰って大丈夫ですからね!」


アイリさんが風呂にあがった俺に気付いて

そう言ってくれる。


「いやいや、さすがにそんなに図々しくは

出来ないですよ。あんなに美味しいご飯も

いただきましたし、それにアンちゃんの

お父さんはどちらに?さすがにこんな

どこの馬の骨かも分からないやつが家に

いたらぶっ飛ばされるんじゃ。」



「いえ、うちの人はそんな人ではなかった

ですし、カイさんはアンの命の恩人なんです。

これぐらいは普通です。」



「いやいや!そんな命の恩人なんて、俺は

本当に自己満足なことをしただけですから、

それと、すいません。こんなこと聞くのは

失礼だと分かっているのですが

なかった。、って言うことはアンちゃんの

お父さんは、アイリさんの旦那さんは今は

もういないってことですか?、すみません

本当に突然こんな失礼なことを聞いて

しまいまして。」




「いえいえ、大丈夫です。はい。旦那は数年前に

病気で亡くなりまして、今は私が働いて

どうにか暮らせている状況です。旦那がこの

家を残してくれたおかげですね。」


寂しそうにそして懐かしそうに少し上を向いて

何かを思い出すようにアンリさんは言った。


「そうなんですか。いい旦那さんだったん

ですね。」


俺はそんなアンリさんの表情から心の底から

そう思った。


「はい。それはそれは優しい人だったんですよ。

冒険者で、そこそこ強かったのに、ある時

もうモンスターを斬ることが辛くなったって

言って急に冒険者をやめてしまうぐらいに。」


そう言って微笑むアイリさんの顔はさっきとは

違っていてでも、幸せだった記憶や何かを懐かしそう

に思い出している様子で惚れ惚れとしてしまった。


「うん?大丈夫ですかカイさん、」


「はっ、すいませんアイリさん大丈夫です。

本当にとても優しい人だったんですね。

聞いているだけで、アイリさんのことやアンちゃんのことを大切にされてたのだと分かります。」


どうやらアイリさんを見過ぎていたみたいだ。

俺は少し焦ってそう言い返す。


「まっ、そんな恥ずかしいです。」


そう言って照れるアイリさん。いや、可愛い!

キュン!ってしてしまった。この家族恐ろしい。

俺はそんなことを思いつつさすがにそろそろ

お暇しようと


「それじゃー、俺はここらで失礼しますね。」


とアンリさんに言った。


「そんな、泊まって行ったらよろしいのに。」


そんなことを言うアンリさんに


「いやいや、さすがにそんな所までお世話に

なる訳には行きませんよ。それに朝から

アンちゃんの顔を見たらどんどんこの家から

離れられないような気がするので。本当に

お世話になりました。まあ、何かあったら

言ってください。当分はこの街にいると

思いますので。」


さすがにこれ以上はと俺は断りを入れるのだった。


「ふふっ、本当にいいひとなんですね。

カイさんは久しぶりにあの人を思いだして

しまいました、今までは思い出したら悲しく

なってしまうから思い出さないように

していたのに。」


そんなことを言ってまた微笑むアンリさん。

その顔にはなんとも言えない美しさがあった。


「あの人って、旦那さんのことですか?」


「ええー、そうです。カイさんは旦那に

似ています。ですからこれもなにかの

縁だと思いますので、こちらを、」


そう言ってアイリさんはどこから

ともなく片手剣を俺の手元へと差し出した。


「これは?」


俺は突然のことに戸惑って、純粋に疑問を

浮かべる。


「それは旦那が冒険者の時に使っていた剣です。

他の防具は全て売ってしまったのにこれだけは

売ることが出来なかったんです。」


「売ることが出来なかった?、思い出あるから

ですか?」


そんな思い出のある剣ならば俺なんかが

貰う訳には行かないと俺はそう言った。


「ふふっ、いえ、この武器が売られることを

拒否するからです。」


どうやら思い出があると言うわけではないようだ、

でも。拒否するって言うのは?


「うん?それって一体?」


どうやら疑問が口に出てしまっていたようだ。


「ふふふっ、この剣はアーティファクト

なんですよ。」


うん?俺は自分の耳を疑ってもう一度アンリさん

に聞く。


「えっ?アイリさん今なんて?」


「ふふっ、だから、これはアーティファクト

なんですよ。だから、売ることも出来なくて、

でも、旦那が亡くなる間際に私に言ったん

です。いつか君が、君を、アンを、守って

くれると思った人がいたのならその人に

この剣を渡してくれないか?って、だから

この剣はカイさんに差し上げます。だって、

いつでも頼っていいんですよね?」

どうやら俺の聞き間違いなんかではなく、

この目の前にある剣はアーティファクトみたいだ。

そう言って微笑むアイリさんはやっぱり

可愛いくて、そして、悪戯が成功した子供の

ようにとても無邪気なものに思えたのだった。


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