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クエスト初受注。②

俺は初めてのクエストにドキドキしながらも、

目の前の女の子はまだ泣いていて本気で困って

いるように見えるので、NPCとかクエストとか

そんなこと関係なく早く女の子のお母さんを

探してあげなければという使命感に襲われて

いた。とりあえず情報もなくむやみに動き

回っても仕方が無いので女の子と話すこと

にした。


「ごめんね?俺の名前はカイって言うんだけど

落ち着いてからでいいからね。君の名前は?」


「うん、グスっ、私はねアンって、グスっ、言うの」


「うん、ありがとう。それじゃーアンちゃんだね、

それじゃーね?お兄ちゃんにアンちゃんが

お母さんとはぐれちゃった時の状況を教えて

くれないかな?」


「うん、えっとね、グスっ、」


「うんうん、ゆっくりでいいからねアンちゃん。」


「うんっ。大丈夫だよ。ありがとう。

お兄ちゃん優しいね。」


そう言って笑うアンちゃんの顔は純粋で無垢な

少女の笑顔でこの世界がゲームの世界

だなんて1ミリも感じないものだった。

そしてキュン!っとしてしまった。一刻も早く

アンちゃんのお母さんを探さなければと

改めて思ったのだった。


「ん?どうしたのお兄ちゃん。」


そんなことを考えていた俺をアンちゃんが

不思議そうな声で尋ねてくれた。

どうやらだいぶ落ちついたみたいだ。


「あっ、なんでもないんだ。ごめんよ

アンちゃん、でも、だいぶ落ち着いたみたいで

良かった。それじゃー、どうしてお母さんと

はぐれちゃったのか話せるかな?。」


「うん、大丈夫だよお兄ちゃん。えっとね、

お母さんとね、夕飯の買い出しに行っててね、

それでね、私が可愛いお洋服にね、夢中に

なってたらね、人が増えだしてね、そのままね、

人にながされちゃって、」


アンちゃんが一生懸命に説明をしてくれる

姿がとても可愛くて俺はほっこりしてしまっていた。


「うんうん、」


「それでね、気づいたらね、私ここに1人でいてね。

1人って気づいたらとても悲しくなっちゃってね。

気づいたら泣いちゃってたの。」


「うんうん、ありがとうね、アンちゃん。

色々話してくれて、それじゃー、夕飯の

買い出しにお母さんと来てたんだね?

今日の夕飯が何かお母さん何か話して

なかったかなー?」


「うーん?えっとね、たしか今日はね、

アンの好きなグラタンにするって言ってた!。

私お母さんのグラタン好きなんだ。」


「へぇー、グラタンか、いいね、凄く美味しそう

だね。うーん、でも、それだけじゃ少し難しい

かなー?、他には何か言ってなかった?」


「うーんとね、あっ、そうだ。グラタンを作るには

ミルクが足りないって言ってた。」


「うん。ありがとうアンちゃん。ミルクだね。

それじゃーお兄さんと一緒にミルクが売っている

所まで行こうか。」


「うん、ありがとうお兄ちゃん。」


「それじゃー、迷子にならないように手を

繋ごうか。」


「うん、繋ぐー。」


笑顔で俺の手を小さい手で健気にギュッと

握ってくれるアンに俺は絶対にこの子を

守ると誓ったのだった。何ゲームのキャラに

所詮NPCに感情移入してんだ、と言われるかも

しれないが俺はアンや周りのキャラたちが

NPCとは到底思えない。俺はここで改めて

NPC達を俺と同じ他のプレイヤーと同じ

人であることを再認識したのだった。

アンとしっかり手を繋いでしばらくたって、

俺たちはミルクが売っている酪農家さんの

お店の近くまで来ていた。

このお店は、さっきまで、俺たちがいた場所

からほぼ真っ直ぐの場所にあって、俺は

アンのお母さんがいるならおそらくここかな?

と感じて、ここまで歩いて来たのだった。

ちなみに歩いている途中は、アンがなにかの

歌を鼻歌で歌ってくれたり色々とおしゃべりを

してくれたので全然退屈じゃなくて、むしろ

めちゃくちゃ楽しかったのだ。現実世界では

人と話すことなど最近していなかったのも

楽しかったことの拍車をかけた。お店が

見えるとアンとよく似た女の人がまるで誰かを

探しているようにキョロキョロあたりを

見回していた。おそらくあの人がアンの

お母さんだろう。


「あっ、お母さんだ!」


アンに伝える前にアンが女の人に気づいた。

どうやらアンのお母さんで間違いなかった

ようだ。俺は走るアンにスピードを合わせて

お母さんの元へと急いだ。


「あっ、アン!、どこにいたの心配したんだから!。」


アンのお母さんがすぐにアンに気づいて、

大声を出して、すぐにアンを抱きしめた。

俺はただただその光景に感動していた。


「あっ、ありがとうございます。あなたが

うちのアンをここまで連れてきてくださった

のでしょうか?」


数分後アンを抱きしめるのをやめ、やっと

俺に気づいたお母さんが俺の顔を見て言った。


「うん、そうだよ。カイお兄ちゃんって、

言うんだ。お兄ちゃんとっても優しいんだよ。」


なぜだか俺が話すより先にアンが俺の自己紹介

をしてしまった。


「あははは、今アンちゃんが言ったことで

全てなんですが、カイと言います。たまたま

アンちゃんが困っているのを見つけてついつい

お節介をかけてしまいました。勝手なことを

してすみません。」

俺は少し笑いそして勝手なことをしたと

謝った。たまたまお母さんが見つかったから

良かったが、もし俺が変な推理で違うところに

連れて行っていたらアンちゃんはいつまでも

お母さんと会えなかったかもしれないからだ。


「いえいえ!本当にそんな、頭を上げてください。

本当にアンを連れてきてくれてありがとう

ございます。私がお詫びをする立場なのですから

そんなにかしこまらないでください。私は

アンの母のアイリです。本当にアンを

連れてきてくださりありがとうございます。

このお礼はほんとうになんと言えばいいのか。」


どうやらアンリさんは全然怒っておらず、

逆にとても恐縮されてしまった。いい人で

良かった。


「いえいえ、本当にお気遣いなく、私は

善意でやったことなので、そんなに褒められる

ことではないですよ。ただの自己満足です。

それでは私はこれで、アンちゃん。お母さん

見つかって良かったね。」


俺は膝をおって、アンちゃんと同じ目線に

なってから、アンちゃんの顔を見てそう言った。


「えっ、お兄ちゃんもう行っちゃうの、寂しいよー、」


そう言って俺の服を掴むアンちゃん。


「あははっ、うーん、ごめんねアンちゃん。俺も

アンちゃんとまだ居たいけどこれから

ご飯なんでしょ?じゃー!俺がいたら

邪魔になっちゃうからね?」


俺は少し困って微笑んで言う。


「うーん、でも、嫌、まだ一緒にいたいー、」


それでも駄々をこねるアンちゃん。俺は

アンちゃんを抱きしめたいのを我慢しつつ

アンちゃんの駄々を聞いていた。その時、


「あっ、それじゃ、今回のお礼も込めて

家に来てください。たいしたおもてなしは

出来ませんが。ぜひ、」


そうアイリさんが言って下さったのだった。

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