だって私には見えたから。
なぜ何も見えなかったのか。我に力があまりないからか?
自身を確かめようにも確認の仕様がなかったが以前より明らかに力が戻っている。
堕ちかけていたにも関わらずあの人間が来るようになってから少し自身が変化していることには気付く。
「あの人間に我が見えたらなあ…」
霊感なんてあっても我を視えるものは数少ない。
ましてやあの人間からはなにも感じなっかった。
「絶対ありえない…な」
もし。もし見えたとして一体何ができるのか。
封印を解くことは無理であろう。
淡い期待などとうに捨てている。
いつか消えるとき。最期はあの人間をみていたいものだ。といつの間にか気に入っていた。
ーーーーー今日はきたのか。
いつ来るかわからないその人間を今日も見守る。
「こんにちはー!今日は雨ですねえ。でも私雨もすきなんですよ。なんか色んなことに対していいよって言われてるみたいで」
その言葉には一体何が含まれているのかはわからない。
全く読めないのだ。
周りにふと目を配る。
やはり他の人間のオーラや心は簡単に浮かんでくる。我は神だ。このくらい容易い。あれを除いて。
報告し終えたのかこっちに来る。
「またいつか会えることを我は待っているぞ」
女の背に向けて呟いたと瞬間ばっと振り返った。こっちを、みた?
聞こえているはずなどないが目が合っている気がする。
「!?」と絵に描いたように驚いて走って我の所に来て
「???今話したのあなた?」と我に言った。
これまで過ごしてきて人間と話したことなどなかったが普通に話せば届くのだろうか。
我は今形すらままならないはずだが。
おそるおそる声を出す。
その間優しくこちらを待っている様子だった。
「人間、我が見えるのか?」
「みえてますよーばっちし!聞こえてもいます」と優しく笑った。
「我はここに封印されている者だ。何百年も」
「そうなんですねえ。悪いことでもしたんですか?」
「たわけが!我は高貴な存在だ。力が強いせいで今ではいらぬ存在のようだ。だから封じられた。我は破壊と力の神。戦があった頃は崇められて祀られていたがもう今はっ平和だ。むしろ我がいてはだめなのだということであろう」
ざっと説明をした。一体なんと返ってくるのかわからない。
少し経ってから
「神様はここから出たいですか?」
と予想だにしない返答がきた。
「いや、だから封印されて…」
「それは見たらわかりますし実際ここから離れられないんでしょう!?私は神様の気持ちを聞いているのです」
出たいか、なんて。
「そんなの出たいに決まっている」
聞こえるかわからないくらい小さな声で言った。
それを聞いた人間は
「じゃ、出ましょう!封印解きましょう!」と笑った。
そんなに簡単ではないことをさらっといつそいつに
「なぜそこまでしてくれるのだ。何も良いことなんてないぞ。むしろ封印を解くというのは簡単ではないし代償だっている。やめておけ」
死んでしまうことにんあるかもしれない。我はこの人間が死ぬ姿を望んでいない。
一年くらい勝手に見てきただけだが居なくなってほしくはない。
「ふふ。だって私には見えたから」
にっこり笑ってから我の封印のお札に触れる。
「ねえ神様、私ね自分に見えたり聞こえたりする声は逃したくないんですよ。いつか誰かがとか誰かはやるでしょみたいなのくそくらえ、ですよ。それなら私がやってやる。泥でもなんだって被る。それが一番最強だと思いません?」
初めてこの人間に色がないこと、その理由に気づいた。
ああこやつは白だ。真っ白で透明、何にも染まらずそして誰に対してもきっと寄り添える。
お札をはがした瞬間真っ黒な異空間に飛ばされてそれに気づくなんて。
ここまで周りが黒くならないとこうも見えないのかこの人間の輝く透明なオーラは。
暗闇でもその人間はいつもと変わらない様子で
「な…!真っ黒!!ってか神様…わたし…仕事中なんでした…今日は休憩返上コースですね…:と今の空間よりある意味冷静な姿に笑いが止まらなくなった。