ネガティブな私
4月。それは別れと出会いの季節が訪れる月。
この日、一人の少女が高校に入学することになった。
晴々しい高校生活。
友達が沢山でき、彼氏もでき、放課後までもがキラキラした日々。
そんな漫画みたいな毎日は「ないんだよっ!!」。そんな一言が、道に鳴り響いた・
「誰だよ、高校生になったらキラキラな日々が待ってるとか言ったの、、」ぶつぶつ言いながら歩いてるのは、
今年高校に入学した音々葉 (ののは)。
音々葉は、ネガティブな性格の女の子で、自分の世界観を持っている。
いわゆる、「陰キャ」ってやつ。
「今日も本屋にでも寄って帰るか」と音々葉は空を見上げながら思った。
ただいま、朝の7時30分。高校に入学して早1ヶ月、私、音々葉、友達ができません。
「神様って意地悪よなあ」と言いながら歩いてると、いつの間にか学校に着いた。
別に、クラスが最悪ってわけじゃない。皆優しいし、分からないことがあったら教えてくれるし。
何がダメなのかって言われると、他愛もない話をするために話しかけるのが苦手なだけだ。
拒否されたらどうしよう、とか、話しかけて迷惑だったらどうしよう、とか。
ほんとに、くだらないことで話しかけられないだけ。
まあ、普通に過ごしていれば、周りからは一人でいるのが好きな女の子にみえるんだろうなあ。悲しい、、
話しかけてきてほしいけど、きっと話しかけた方が早い。
分かってるんだよ?でもね、無理なんだよなぁ、これが。
なんだかんだで、一日はすぐに過ぎるもので。何もしてないに近いけど、「疲れた、」。
靴箱で靴を履きながらのため息。「電車通学じゃない時点で友達と帰るって夢はないよなぁ」
電車通学で一目惚れから始まる恋とか何度も漫画で見たけど、現実はそう甘くない。
電車通学どころか自転車通学でもない。「歩きなんだよな、、神様、、ケチ」。
空に向かって、頬を膨らませながら大きなショッピングモールを目指して歩く。
「地味に遠いんだよな」息を切らしながらだけど、ショッピングモールに着いた。
本屋さんに入ると、どこか安心してしまって「はぁぁぁ、落ち着く」と息を凄い吸い込んだ。
好きな作家さんの漫画を4冊くらい買った。「帰ってから見ないとなあ」と足取り軽く本屋さんを出る。
「あ、そうだ。」と、音々葉はお菓子も買って、るんるんでショッピングモールを出た。
学校からもショッピングモールからも、家は少し遠くていつも歩いて帰る。
別に苦ではない。帰り道には、花屋さんやパン屋さん。小さなスタジオ、公園、神社などがあって普通に楽しい
パン屋さんの前を通った時に凄くいい匂いがしたため、吸い込まれるように中に入った。
パンを買って、店を出たのは良いけどさ、、
「買いすぎた、?」袋には6つのパンが入っていて、音々葉は袋の中を覗いた。
「あ、そうか」と、音々葉はある場所に笑顔で走って行った。
「こんにちはー」と音々葉が入って行ったのは、交番。
小さいころから音々葉は、ここの交番にお世話になっている。というか、主に父が。
「あれ、誰もいない?」音々葉は交番の中を見渡した。すると、音々葉の後ろに一つの人影。
音々葉は、その影に気づき、思いっきり握りしめたグーの手を勢いつけて背後の人の目の前で止めた。
「うっお、、危な、、」そこには警察の服を着た男の人が居た。すると、「寧々ちゃんは元気よなあ」と
ケタケタ笑いながら、男の人の後ろからおじいちゃんの警察官が出てきた。
「静さん、こんにちは。あと、きっと、漢字違います。」と音々葉が言うと「すまんすまん」と静さんと呼ばれる人は、音々葉の頭を撫でた。
静さんは、父の “面倒”を見てくれる人。音々葉の父は裏社会の人で、すぐに喧嘩とかする。
警察沙汰になった時には、いつも対応してくれるのが静さん。父とは知り合いらしいがよくは知らない。
「えっと、とりあえず手を、」「あ」そういえば忘れてた。「ごめんなさい」「いや、うん、君凄いね。」
何がだろう、と思いながら、「静さん、この人誰?」そういえば初対面だ。
「こいつは新人の奴だよ。自己紹介しなさい」静さんはその男の人に言った。
「あ、はい!大阪府警所属、「そんなんいいから、名前」あ、水沢利です!」
音々葉に自己紹介を邪魔されながら名乗った。「利って呼ぶといい。で、寧々ちゃんは何か用事?」
「あ、うん。パン買いすぎちゃって、静さんパン好きでしょ?だからあげようと思って。あと、漢字違う」
「おおー、そうかそうか。丁度食べたかったんだよ、ありがとう。」「うん」
「えっと、寧々ちゃん?」「あ、そっか。音々葉です。ねじゃなくて、のです。」「ごめんね、音々葉ちゃん」
「いえ。なんでしょう」「誰から護身術教わったの?」「静さん。」「あぁ、なるほど」
「なんだい?」と言う静さんは貰ったばかりのパンを口いっぱいに頬ばっていた。
「これからよろしくお願いします。と、、利さん?」「利でいいし、タメでいいよ。よろしく」
二人は握手を交わした。
こうして二人は出会ったのだった。