コント【明治の農民の暮らし展】
係員の鈴木が空調設備工事の立ち合いをしていると携帯が鳴った。
(げ!課長じゃん)
とりあえず電話に出るが、騒音で良く聞こえない。
『おーい、鈴木!鈴木!聞こえてるか?』
「え?なんですか?ちょっと聞こえないんで場所移りますね」
移動している最中だというのに、課長は構わず話しかけてくる。
『来月のな、特別展示あるだろ、あれ【明治の農民の暮らし展】に決まったから準備しとけ!』
「え?なんですか?」
『特別展示だよ!明治の!農民の!暮らし展!!』
(はぁ?ハイジとムーミンの暮らし展???課長、頭おかしいのか?)
「何言ってんすか課長!そんなの出来る訳ないじゃないですか!!」
『な、なんだよ、急にそんなに怒って』
「そりゃ怒るでしょ!来月ですよ!許可とるの間に合わないでしょ!!」
(許可?鈴木は何の心配してるんだ?)
『ははは、何言ってんだ許可なんて取らなくていいよ』
「ちょダメダメ!何言ってんすか!訴えられますよ!」
『だいたい許可取るったってもう死んでるだろ?』
「だから、スイスとかフィンランドとか遺族の会社あるでしょ?」
『フィンランド?お前何言ってるんだ?それより農機具準備しとけよ!あと、収蔵室にそれっぽい絵があったろ?赤いモンペ履いた婆さんが稲刈りしている絵とか』
「ちょダメダメ!何言ってんすか!赤が一緒だからって婆さんはマズイでしょ!少女ですよ!?」
(少女?鈴木…大丈夫か?)
『何言ってんだ?…あと、ほら、余暇に潮干狩りを楽しむ絵もあっただろ』
「ちょダメダメ!何言ってんすか!それマテ貝でしょ!共通点細長いだけじゃないですか!無理ですって」
『あと、柴犬を畑に連れてってる絵があっただろ、当時からペットを飼う習慣があったということをだな…』
「あ~もう、何なのこの人!柴犬とか言っちゃてるじゃないですか!ヨーゼフはセントバーナード!!」
(ヨーゼフ??誰だその外人)
『鈴木、お前訳わからん事言ってないでさっさと準備しろ!どうせ農機具がメインなんだから、絵なんてお前が書いてもいいんだよ!俺は今日から二週間出張だから戻って来るまでに準備しとけよ!分かったな!!!』
「あ、ちょ、課長!?」
<2週間後>
「あ、あの、鈴木くん?これ何?」
「はい!ハイジとムーミンの暮らし展です!」
自信満々の鈴木の後ろには、鈴木画伯自筆の化物の絵が所狭しと飾られていた。
Fin.
もう二度と見られない(かもしれない)アンジャッシュのコントをイメージして書きました。