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SCRAP

眠ること。

作者: 都槻 郁稀

誰かが、ドアを叩く。


誰かが、壁を叩く。


誰かが、窓を叩く。


微かな音。


気にしなければ気にならない。


生活音にかき消されるような音が、不自然なリズムで部屋を駆け抜ける。




忌々しいノック音がセミの声量を超えた日、彼女はベランダへ出る。


数日は眠れていないようだった。




それは、事故だった。


彼女を天国へ導く天使の、小さな恋が引き起こした、事故だった。


魂を受け止め、上を向いた天使は、羽とともに地へ落ちた。


自分が何をしたか、理解していなかった。




昼夜眠らない天使もまた、眠りを知った。

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