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5の旅『祭りの国』

 シャンシャンシャンッと鈴の音がなったり、どんどんどこっと太鼓の音が鳴り響く。


 道行く人々はあちこちの露店に目を向けたり、入って楽しんだりしている。



「‥‥‥今日、ココってお祭りでもしているのかな?」


 にぎやかさに面白さを感じつつ、私もその中に紛れていた。



 夕暮時ぐらいにこの世界に到着したのだが、その時に明かりが見え、人のいる場所だと思って停車して、立ち寄って見たのだが中々にぎやかである。


 縁日とかそう言う類に近いようだが、そこは異世界。並んでいる露店が明らかにおかしいものが多い。


 金魚すくいではなく、ピラニアのような魚を釣り上げる『禁魚救い』。


 りんご飴ではなく、花を模した飴を売っている『花飴屋』。


 コルク鉄砲ではなく、レールガンで消滅させ、的と同じものを当てる『射的屋』…‥‥ん?


「あれ、なんか明らかにおかしいのが」



 縁日に、小型レールガンを持ちだす屋台がどこの世界にあるんだとツッコミを心の中で入れつつ、店主にちょっと聞いてみた。


「レールガンって、やり過ぎというか、こういうのは見たことが無いような…‥‥」

「おおぅ?あんちゃん、もしかして他国の旅人かい?」

「ええ、そうですが」

「なら、この屋台を見て驚くのも無理ねぇな。これは先日の戦争時に機密扱いだったのが回ってきた奴なんだぜぃ!」

「‥‥‥どういうことだ?」


 話によれば、このレールガンは私が訪れる数日前に、戦争で実際に使用されていたものらしい。


 そしてさらに驚くべきことに、ここに並ぶ露店の8割ほどはその戦争で使用された兵器が使われているのだとか。







‥‥‥実は今立ち寄ったこの町は、年がら年中祭りを行う。


 そしてその祭りの前後で、周辺諸国に戦争を仕掛けており、その戦争に使用された兵器をここで使っているのだとか。


「何しろ毎回新しい兵器が開発され、投入されるからねぇ。古い兵器は皆こっちで遊び道具にしてしまおうってことなのさ!」

「ってことは、あっちの店も、そっちの店も扱っているのは‥‥‥」

「先日の戦争で使用し、用済みになったのさ!ほれ、あっちで上がろうとしている花火も実は余った火薬でなぁ」


 


 聞くと、どうやらこの国は昔から兵器開発が盛んな国であり、周辺諸国へ新兵器ができるたびに戦争を仕掛け、その性能を実際に試すらしい。


 だが、新しい兵器ができれば前よりもより良いものができてしまい、それでも開発を止めることを上層部が行わず、結果としてどんどん兵器の山が積み重なり、その処分に困ったのだとか。


 そこで、処分に困って悩みに悩み抜いた結果、戦争後に入らなくなった兵器を色々と改造し、ある程度非殺傷にしたところで祭りの目玉として扱うようにしたのだという。


「あの禁魚救いは海洋生物兵器ピラニアンの稚魚でな、大きくならないように加工されて、ペット扱いへ。そしてあっちの花飴は、バンバン火薬とかで殺風景にするよりも、周囲を加工して花があるように装飾する兵器として使われていたのを飴に活かしたのさ!」


…‥‥軍用兵器が、民間用に転換される例はあるだろう。


 そしてここはそれをさらに短期間で行い、兵器を祭りの道具に変えているようだ。


「…‥‥あれ?でも祭りが終わった後は、また新しい争いがあるだろうし、その時にできた兵器が転用されたら、ココの兵器は‥‥‥」

「ああ、処分…‥‥といきたいが、それだと捨てているのと変わらねぇ。祭りが終わった後は丁寧に分解し、新しい材料に買えるのさ!」


 リサイクル精神が行き届いているというか、何と言うか。


 戦争で確実に勝利できるような兵器を開発しつつ、それらを終了後には士気を高めるために祭りに転用し、終わった後には再開発用にリサイクルされる。


 ある意味たくましいというか、何と言うか…‥‥兵器たちからすれば、ここは分解・リサイクル前の軽い休暇なのだろう。


「そうだ、あんちゃんもちょっとやって見な!ああ、狙いは正確になるから無理にやらなくても良いぜ!」

「店主に儲けが無いんじゃ?」

「あったぼぅよう!でも、楽しむ笑顔が見れるのであればそれでいいじゃねぇか!!」


 ぐっと指を立て、そう告げる店主。


 せっかくなので私も祭りに乗じることにして、楽しませてもらった。


 元は兵器とは言え、こうも人々のために転用されるとは、道具としてはある意味良いのだろうが‥‥‥これ、楽しめるかな?本当に狙いめっちゃ定まりやすい。




 




 何にしても一晩かけ、祭りを巡り歩いた後宿を取り、翌日私はその町を出た。


 昨晩の露店は既に撤去され、用済みになった兵器が運ばれていく。


「…‥‥さて、ついでにちょっと周囲を歩いてみるか」


 ふとおもったことがあったので、直ぐに機関車にならずに歩きながら先へ進み、森があったのでそこに入らせてもらった。


 周辺諸国にこの国は戦争を毎回仕掛け、ここは既に領内らしいが…‥‥入ったところで、予想通りというか、私は人に囲まれた。


「おい!!そこのお前!!」

「誰の事でしょうか?」

「歩いていたお前だよ!!」


 荒っぽい声を掛けられ、私が適当に返事すると、叫んだそいつはむっとしたような顔になる。


「お前は今、あの町から出てきたが、あそこの兵器を持ってないか!!」

「持ってないが?露店で当てた景品程度なら持っているけど、兵器なんぞ持ち合わせては‥‥‥」

「嘘こけぇ!!あそこの景品には兵器も混じっている!!それをよこしやがれぇぇぇえ!!」


 その叫び声が合図だったのか、周囲で囲んでいた者たちが一斉に走って来た。


 手にそれぞれ刃物や鈍器を持っており、盗賊行為を働く気のようだが…‥‥正当防衛になるし、ちょっと動くか。


「変身解除っと」


 まぁ、こちらも暴力で返すのではなく、ただの機関車ボディ&列車に戻るだけなんだけどね。シールド張っていて、それらに激突させるだけで楽な話しである。








「お、おおごべぇ‥‥‥」

「ぐ、ぐげぇ‥‥‥」

「ううう…‥‥」


「…‥‥真正面から全力でぶつかっていて、持っていた武器で自爆するってどういうことなんだろう」


 人間体へ戻り、周囲を見渡せば死屍累々。


 いや、実際には命は奪ってないが、激突時に持っていた武器が吹っ飛び、それぞれに落ちて惨状が産まれたわけだが…‥‥まぁ、相手の自業自得だろう。


 そう思いつつ、私はまだ辛うじて喋れそうなやつの胸ぐらをつかんだ。


「で、色々と襲撃してきたようだけど、そもそも何で襲って来たんだ?」

「お、お前人じゃないのか…‥よ」

「まぁ、私は人でもないが、兵器でもないからなぁ‥‥‥喋らないなら、今度は全重量でのしかかるけど、どうする?」

「喋ります喋りますぅ!!」


 私のちょっとした脅しに対して、掴まれたそいつは速攻で降参したのであった。






「‥‥‥なるほど。昔、あの国に戦争を仕掛けられた国々の者か」

「え、ええ。全員恨みがありつつ、異国のものとはいえ恨みは一緒で…‥‥ここでどうにか兵器を奪えないかと画策していたのです」


 予想通りというか、この襲撃者たちは、あの国に兵器の使用感を確かめるために戦争を仕掛けられた国々の者たちらしい。


 あの国のような者は開発できないので、なんとか奪って利用したかったそうなのだが、いかんせんあの国は守りも硬く、そうそう奪取することはできなかったそうな。


 唯一の入手方法として、あの国での祭りで出る兵器を持ちだせば‥‥‥と思っていたそうなのだが、どうも戦争を仕掛けた相手国民を全員どういう方法でか選別して這いれないようにされており、中に入って取れるのは、あの国に戦争を仕掛けられていない国の旅人ぐらいだったそうだ。


 で、大抵その旅人は通過時に祭りに遭遇し、何かしらの因果のせいか武器を持っており、それを奪う事でどうにか相手の技術を盗んできたそうである。


 そして今回、私があの国へ立ち寄り、楽しんでいたところを遠距離から確認して、兵器を持っていそうだと目を付け、ここで襲撃することに決めていたそうなのだ。


「で、この景品のボールもその兵器だと?」

「ああ、間違いないはずだ!!殺傷能力はなくしているが、これは恐るべき兵器の一つ、ボゥルゥだ!!」


…‥‥何と言うか、ネーミングセンス無いなぁと私は思う。


 あの国、兵器を作って使用することに関しては一流だが、ネーミングセンスが酷い所もあり、そんな名称の兵器にやられた恨みとかもあるらしい。


「頼む!!どうにかこれを譲ってくれ!!金はいくらでも払う!!」

「でも、そんなことができるのになんで襲撃したんだ?」

「あ、いや、その‥‥‥‥」

 

 私の質問に対して、目の前の相手はたじろいだが…‥‥まぁ、大体の察しはつく。


 金ならあるのだろうけれども、兵器開発の方へ資金を回すので、あまり使いたくなく、手っ取り早いのが集団で襲う事だったのだろうと。


「まぁ、別に良いよ。そんな物とは思わないし、景品と言っても兵器なら持っておきたくないからね。ああ、そこいらで寝転がっているやつらに関しては、これの代償ってことで良いか?」

「それでお願いいたします!!」


 その言葉に、目の前の相手は深く土下座をして返答した。



 まぁ、ああいう戦争を仕掛ける国の場合、恨みを持ったやつらがすぐ隣にいてもおかしくない予想はしていたが‥‥‥的中したらしたで、ある意味可哀想だったかもしれん。



「‥‥‥そう言えば、一つ聞きたいんだけどいいかな?」

「は、はい!!」


 ボールを手渡し、この場を去ろうとしていたところで、ふと私は思ったことがあったので尋ねることにした。


「あの国は、兵器開発をして、試すために周辺諸国へ戦争を仕掛けまくっているんだろう?まだ負けてない国というか、仕掛けられていない国は何か国程度あるんだ?」

「確か後、3か国ほどしか‥‥‥」


 専横をガンガンしかけ、周辺諸国を取り込んでいき、どうやらもうじき全国統一を成し遂げるようである。


 いや、ある意味世界征服なのだろうが…‥‥兵器開発をしている国である以上、絶対にこの先にやらかす末路が見える。


「仕掛ける国が亡くなった場合、アレはどこへ今度は仕掛けようとするかな?」

「え?ええっと、他の国々はないですし…‥‥兵器開発をそれでもやめないでしょうが‥‥‥‥」

「ああ、無理に答えなくてもいいよ。ちょっと思ったことを口にしただけだからね」


 そう告げ、私は機関車ボディに変えてさっさと発車する。


 汽笛を鳴らし、宙へ駆け抜け、空へ走っていく。



『…‥‥夜空があったけど、まぁ、この世界のこの国も、一つの星なんだろうな』


 そうつぶやき、宇宙空間へ出た頃合いに振り返ってみれば、先ほどまでいた場所は小さくなっており、一つの星がそこにあった。


 全部の国々が統一され、その星全体をその国はまとめ上げるだろう。


 だが、兵器開発を止めず、まだまだ利用するという事は、今度は別の国ではなく‥‥‥‥



『星々の戦争へ、発展させる気なのかなぁ』


 考えられるのは、星間戦争を起こす可能性。


 国が無くなれば、今度は夜空に浮かぶ星々へ戦争を仕掛ける可能性が非常に高い。


 けれども、おごるなかれ。その世界のその星の上では最強の兵器開発国かもしれないが、井の中の蛙大海を知らずというように、この星々にはそれすら凌駕するような国を持つ星もあるだろう。


 いつか必ず見える破滅だが、私は特にすることもなく、今回は世界を渡らずにワープを行い、別の星での国々を巡ることにした。




…‥‥それから数カ月後、そろそろ別の世界へ向かおうと考え、とある星で整備を行っていたところで、噂が聞こえてきた。


 なんでも、宇宙のとある星が戦争を仕掛けてきたが、盛大に撃退されたようだ。


 そして、その星が開発できる限界をさらに超えた兵器によって、自爆してしまったという噂話ではあったが‥‥‥もともと私には関係ない事だ。


 そう思いつつ、私は整備を終えた後に、動輪を回し、汽笛を鳴らして発車するのであった‥‥‥‥



終わりなき開発とされるが、いつかは終わりがある。

祭りごとだとしても、何かはその裏にある。

何処かで留めなければ、いつかはこういう末路もあるのだ…‥‥

次回に続く!!



…‥‥綺麗事のようでも、その裏は悲惨。それらを忘れて止めないからこそ、こういうことになったのかなぁ。

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