表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/42

101「一蓮托生」

 たびたび運命的な偶然が起こるのだとしたら、もはや、それは宿命的な必然であろう。


  *


「おっ、テオ! 戻ってきたな」

「わぁ! ホントにテオも一緒だった」

「あら、本当。ドミニクくんだけかと思ってたのに」


 二人分の軽食を買ったテオが客車のコンパートメントに戻ると、そこにはドミニクの他に、クロエとエマの姿があった。

 三三五五に感想を述べられたテオは、目の前の光景が理解できない様子で席に着き、ひとまずドミニクに、買って来た物を渡しがてら質問する。


「どうして、エマさんたちまで居るの?」

「へへっ、驚いただろう? 二人も、これからグリーンアイランドへ行くんだとさ。このあと港に着いても、船まで一緒だよ」

「あぁ、そうなんだ」


 ドミニクが説明すると、テオは納得した様子で、軽食の包みを開ける。ドミニクも、テオと同じように包みを開ける。すると、クロエは、ドミニクの包みの中身に興味を示す。


「それ、なぁに?」

「ん? これは、粽だよ。僕のは小豆餡で、テオのは山菜餡だな」

「チマキ?」

「そうそう。ひと口、食べてみる?」

「わぁい。いただきま~す」


 ドミニクが笹の葉を半分ほど剥いて差し出すと、クロエは、その正四面体の頂点をひと口齧る。すると、クロエは口いっぱいに広がる甘みに満足して、幸せそうに頬に手を添えて喜ぶ。


「もうひと口、どうだい?」

「えっ。でも、ドミニクの分が無くなっちゃう」

「平気、平気。僕は、テオのを半分いただくから」

「それじゃあ、もうちょっとだけ」

「うわっ、汚いなぁ。なんで、僕の分で帳尻を合わせようとするんだよ」

「まぁまぁ、テオくん。私も、あとで何か買ってくるわ」


 クロエがドミニクの粽を、もうひと口食べ、ドミニクは大口を開け、テオの粽にかぶりついた。

 テオは、一気に半分以上無くなった粽を笹の葉で包み直すと、ポケットからハンカチを出して手を拭いた。

 

「そういえば、今日のエマちゃんは、どうしていつもの姿じゃないんだ?」


 残りの粽を平らげながら、ドミニクがモシャモシャと食べながら質問する。

 エマは、横でテオがドミニクの行儀悪さに顔を顰めてるのを気にしつつも、それに応じる。


「旅券に書いてる特徴と違うと、入国審査が長引くからよ。私のママが、その昔、うっかり変身を解き忘れて別室へ連れて行かれたことがあってね。本人確認が大変だったんだって」

「なるほどな。――だってさ、テオ」

「なんで、そこで僕に話を振るんだ、食いしん坊」

「てっきり、テオも不思議に思ってると思ってさ。根に持つなよ。向こうに着いたら、十個でも百個でも奢るからさ」

「えぇい、抱きつくな。窓から放り投げるぞ」

 

 ドミニクが両手でテオの左腕を抱えて頬擦りすると、テオはドミニクの横顔を右手で押して遠ざけつつ、腕を回して手を振り解いた。

 そんなこんなで、終始愉快に汽車移動は進み、やがて四人は港へと到着する。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ