101「一蓮托生」
たびたび運命的な偶然が起こるのだとしたら、もはや、それは宿命的な必然であろう。
*
「おっ、テオ! 戻ってきたな」
「わぁ! ホントにテオも一緒だった」
「あら、本当。ドミニクくんだけかと思ってたのに」
二人分の軽食を買ったテオが客車のコンパートメントに戻ると、そこにはドミニクの他に、クロエとエマの姿があった。
三三五五に感想を述べられたテオは、目の前の光景が理解できない様子で席に着き、ひとまずドミニクに、買って来た物を渡しがてら質問する。
「どうして、エマさんたちまで居るの?」
「へへっ、驚いただろう? 二人も、これからグリーンアイランドへ行くんだとさ。このあと港に着いても、船まで一緒だよ」
「あぁ、そうなんだ」
ドミニクが説明すると、テオは納得した様子で、軽食の包みを開ける。ドミニクも、テオと同じように包みを開ける。すると、クロエは、ドミニクの包みの中身に興味を示す。
「それ、なぁに?」
「ん? これは、粽だよ。僕のは小豆餡で、テオのは山菜餡だな」
「チマキ?」
「そうそう。ひと口、食べてみる?」
「わぁい。いただきま~す」
ドミニクが笹の葉を半分ほど剥いて差し出すと、クロエは、その正四面体の頂点をひと口齧る。すると、クロエは口いっぱいに広がる甘みに満足して、幸せそうに頬に手を添えて喜ぶ。
「もうひと口、どうだい?」
「えっ。でも、ドミニクの分が無くなっちゃう」
「平気、平気。僕は、テオのを半分いただくから」
「それじゃあ、もうちょっとだけ」
「うわっ、汚いなぁ。なんで、僕の分で帳尻を合わせようとするんだよ」
「まぁまぁ、テオくん。私も、あとで何か買ってくるわ」
クロエがドミニクの粽を、もうひと口食べ、ドミニクは大口を開け、テオの粽にかぶりついた。
テオは、一気に半分以上無くなった粽を笹の葉で包み直すと、ポケットからハンカチを出して手を拭いた。
「そういえば、今日のエマちゃんは、どうしていつもの姿じゃないんだ?」
残りの粽を平らげながら、ドミニクがモシャモシャと食べながら質問する。
エマは、横でテオがドミニクの行儀悪さに顔を顰めてるのを気にしつつも、それに応じる。
「旅券に書いてる特徴と違うと、入国審査が長引くからよ。私のママが、その昔、うっかり変身を解き忘れて別室へ連れて行かれたことがあってね。本人確認が大変だったんだって」
「なるほどな。――だってさ、テオ」
「なんで、そこで僕に話を振るんだ、食いしん坊」
「てっきり、テオも不思議に思ってると思ってさ。根に持つなよ。向こうに着いたら、十個でも百個でも奢るからさ」
「えぇい、抱きつくな。窓から放り投げるぞ」
ドミニクが両手でテオの左腕を抱えて頬擦りすると、テオはドミニクの横顔を右手で押して遠ざけつつ、腕を回して手を振り解いた。
そんなこんなで、終始愉快に汽車移動は進み、やがて四人は港へと到着する。




