第007話
コンラッドとの会合を終えると、俺達は宿屋へと案内された。ギルド証を作る予定だったが、色々と準備--根回し--が必要だから明日にしてくれと言われた。そもそも、身分証が無いと宿屋泊まれないだろ?と聞いたのだが、ギルマス特権を使って俺達を泊めさせるとの事だった。
4人部屋--1番高い部屋--を借りてくれ、その日は外に出ないようにお願いされた。出入りにギルド証が必要な宿らしく、出ると入れなくなるとの事。元より、俺は疲れ切っていたから外に出る気はしなかった。
そのまま夕食をコンラッドの奢りで食べさせてもらった。フィンがめちゃくちゃ喜んでたからきっと美味しいものなんだろう。羨ましいぜ!!
食べ終わったら部屋へ戻りベッドへとダイブした。風呂にも入らず、そのまま目を閉じ寝ようとする。カチャカチャと何か音が聞こえたが、目を開ける気にもならない。そのまま俺の意識は夢の世界へと旅立っていった。
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「おはよーごさいますっ、ご主人様ー!朝ですよーっ!」
「……あと1時間…」
「マスター、起床の時間」
「朝食が出来ているみたいですよ?早く起きてください!」
ユサユサと揺さぶられている気がする。意識が混濁する中で目を開けると、そこには絶景が広がっていて完全に覚醒してしまった。
「ぶっ!!!お前ら!なんつー格好してんだ!!」
目が覚めたと同時に、ベッドの上で後ずさりする。…だって、チカ達が下着姿でいるんだもん!!
「え?寝る時いつもこの格好だよー?」
「これマスターがくれた物」
「『ネグリジェ』ですわ」
いや、寝間着だろうがなんだろうが、そんなエロくなったっけ??ゲームの中じゃ別に気にしてなかったけど、実物見ると破壊力ヤバい…。
「…ん?コスチューム自分で勝手に変えれるの?」
チカ達の言葉に疑問を抱くが、すぐに答えてくれた。
「その日の気分で変えてるよー!ご主人様にたぁーくさん服を貰ってるからね!」
……なるほど。今まで着たコスチュームはローリィ達が持っていて、自由に着替えられるってことか!…あれ?じゃあ、SSSレアもか?
「チカ達は『オリュンポスシリーズ』なんかも持ってるのか?」
「いいえ?私達が持っているのは普段着ですわ。防具や武器などはアルス様がお持ちのはずですけど…」
慌ててアイテムリストを見てみると、確かに存在していた。これから冒険者として活動する時に一々渡すのも面倒だし、今のうちに渡しておこう。
「あー、チカ達の最強装備渡しとくよ。これから冒険者として活動するし、自分の判断で変更しといてね。…あ、あとボックスに空きはある?」
「「「大丈夫です」」」
とりあえずチカ達に最強装備一式を渡す。この装備品はジョブに関係無く装備出来るもので、キャラ毎の専用最強装備なのである。……当てるまで何十人って諭吉が消えていったんだよなぁ。
チカ達に装備を渡すと早速着替えた。
チカはエルフ種なので専用武器は弓、天之麻迦古弓という日本神話の弓だ。防具は、『アルテミスシリーズ』で固められており、胸と腰、脚の部分に防具が付いている。なかなかの露出具合だ。
ナナは人間種で、専用武器はアスクレピオスの杖。これはギリシャ神話の杖。防具は、イメージする魔法使いのまんまである。ただ、帽子とかはない。なぜか、ナナだけ帽子が装備できないのだ。他の魔法使いキャラにはあるんだけど、まぁ、初期キャラだったし仕方無いのかも。
ローリィも人間種。専用武器はウコンバサラという斧。クソでかい斧を軽々しく待つ姿は本当に女性か?と思うくらいだ。そして、防具。これが問題なのだ。ローリィのスタイルは出るところは出てて、引っ込むところは引っ込んでいる。ただでさえ、目のやり場に困るコスチュームを着るのに、専用防具はビキニなのだ。まぁ、そこが気に入って当てるまで課金したんだけどね。運営も多分ローリィを気に入っていたと思う。何せ専用クエストまで出してたから。……鬼畜設定のクエストだったけどな。
そんな3人の姿を見ながら、ふと疑問に思った。着替えたって言ったけど、瞬時に変更してたよな?
「なぁ、どうやって着替えてるんだ?」
キョトンとした顔でチカ達は俺を見る。
「え…?普通に着替えてますよ?」
「いや、その普通がわからないんだけど…。……ああ、セット装備にしてるのか?」
「はい。セットって言えばそれに切り替わりますよ」
「じゃあさ、コスチュームの時はどうしてるんだ?」
「それはボックスから出して、脱いで着替えます」
「こんな風に」
ナナがいきなり服を脱ぎ始めた。ちょっ!?なんで!?
「下着が少ないのが不満」
「可愛いの履きたいよねー!あたしサイズが大きいからなかなか無いんだよねぇ」
下着!?そんなのあったっけ?……いやいや、無い無い。そんなの絶対無かった。
「ナナが着替えているように、コスチューム変更はこうしてますわ」
「お、おう…。ありがと…」
話を整理すると、『コスチューム』と『装備』は別物みたいだ。『装備』はセットしてある物を呼べば瞬時に変更される。逆に『コスチューム』となると一々脱ぐ必要があるという事だ。便利なのか分からんが、戦闘の時は大丈夫そうだ。
「一応、他の装備も渡しておくから各自セットにしておいてね」
『Destiny』というゲームではジョブ専門の装備が存在していた。分かりやすいものでいうと『調理師』だ。『調理服』と『包丁』が必要なのだが、切り替えなくても調理できる。ただ、成功時のバフなどが変わるという差がある。それを補うのがジョブ専門装備なのだ。
……今思えば、ジョブ専門装備やキャラ専門装備、コスチュームとかすげー課金要素あったな。アイテムもあるし、マジで冷静になると馬鹿げた金額使ってたなぁ…。
一通りチカ達に装備品を渡し、俺も着替える事にした。「セット」と言ってみたら瞬時に装備していた。……あれ?いつの間に脱いだんだっけ?まぁいいか。
チカ達もコスチュームに着替え始めたので、俺はそっと部屋から出る。ゆっくり着替えていいよって言ったし大丈夫だろ。……本音は見たかったけど、大きくなったら困るからな。アレが。
チカ達が普段の格好で出てくるとそのまま下に降りて朝食を食べた。味が無いのにはもう慣れてしまった。程なくして、朝食を終えた俺達はギルドへと向かう事にした。
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「おはよーございます。コンラッドさんいますか?」
受付のお姉さんに声をかけると、営業スマイルで少々お待ちください、と言われた。とりあえず、丸机に座って待っていると入り口から世紀末を感じさせる風貌の男2人組が入ってきた。
「……おいおい、ギル、見ろよアレ。すげー美人が3人もいるぜ?」
「あぁん?……おう、めちゃくちゃ上玉だな!」
「ちょっと声かけてくるわ!」
モヒカン野郎が俺達のところへ来ると、しれっとチカの肩に手を置く。
「へへっ、ねーちゃん冒険者かい?俺達と一緒に依頼受けねーか?」
「ご遠慮します」
「俺らはこのギルドの中でも上位のコンビなんだ。だからよー、パーティ組もうぜ?」
「お断りします。私はアルス様達とパーティ組んでいるので」
男の目線が俺へと移った。マジマジと見つめられるが全然嬉しくはない。
「……へぇー?こんな雑魚と組んでいるのか?やめとけって。俺らと組んだ方が絶対いいって!」
「ガルの言う通りだ。こんなナヨナヨした雑魚なんかより俺らの方が良いぜ?」
そう言ってギルと呼ばれていた男がローリィの肩に手を置く。
「……1つお聞きしたいのですがよろしいですか?」
「あ?なんだ?」
ガルと呼ばれた男が薄ら笑いを浮かべながら答える。
「雑魚って誰の事でしょうか?」
あ。チカの目がすわってる。この目は見覚えあるぞ!
「はぁ?見るからにアイツのことだろーが!強いヤツはギルみたいな見た目をしているんだぜ?」
「まぁまぁ、ガル。落ち着きな。このねーちゃん達は本物の強者を見た事がねーのさ」
ヘラヘラと笑いながら2人組はチカ達を見ている。そして、ガルが俺をしかと見ると、机に置いてあった水をかけてきた。
「へへっ、こんなのも避けれないなんて雑魚ーぶべらっ!!」
轟音と共にチカの後ろにいた男が壁にめり込んでいる。…あれ?デジャヴ?
「アルス様になんて事を!ローリィ!やってしまいなさい!」
もう1回轟音が響くと2人目が壁にめり込んでいる。ローリィはわかるけど、チカも強いのね…。
「仕上げはボク。『煉獄--
「はい!ストップ!!それ以上したらダメ!!」
…あぶねー。止めに入らなければここら一帯が焼け野原になるとこだった。
「お前らもう少し抑えて…な?」
「無理」
………そうだった。コイツらには『忠誠心』があったんだった。…良い機会だし変更しておこう。
「これからは俺が許可出すまで手出し禁止です!これは命令!」
「「「………わかりました」」」
設定をいじりながら命令しておく。…よし、これで大丈夫だろう。
気がつくと俺達の周囲に野次馬が沢山いた。外からも声が聞こえるし何事だろうかと集まってるみたいだな。
「おい!!!アルス!何しでかしたんだ!?」
大声のする方へ振り返ると、顔を赤くしたコンラッドが俺を睨んでいる。
「いや、何しでかしたんだって言われても…。コイツらが喧嘩売ってきて、チカ達が買っただけですよ?」
「はぁー……。なんで問題起こすのかなー。……とりあえず、お前ら!!俺の部屋に急いで来い!!!」
そう言うとコンラッドは自分の部屋へと戻っていった。…これは確実に怒られるパターンだな。
部屋に行く前に、2人組に回復魔法をかけておく。死んだら色々面倒な事になりそうだからな。保険として回復薬も置いて、コンラッドの部屋へと急いで向かうのであった。