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放置ゲー廃課金者、転生する!  作者: さぶいち
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第067話

翌日。ソニアより早めに目が覚めた。ゆっくりとテントから出て火を起こす。ひんやりとした空気が暖まってきた頃にテントから大声が聞こえた。


「んにゃー!!!アルス!アルスどこいったの?!」


「外だよ外!」


大声に大声で返すとバタバタと音がしてソニアが出てくる。


「お前なぁ…毎日その起き方するのやめ---

「起きたのなら一緒に起こせと言っているでしょ!」


テントから出てきたソニアの格好に言葉を失う。装備品をいつのまに脱いだのか、布切れ一枚の姿で出てきた。


俺の中に住む紳士とゲス紳士が舌戦を繰り広げる。

『胸元と臀部を確認したらゆっくりと視線をずらせ!怒られるぞ!』

『舐め尽くすように視姦しろ。なぁに、後で殴られるだけだ』


どうやら俺の中の紳士はどちらとも駄目みたいだ。しかし、本能はソニアを注視する事を選択した。


整った顔に柔らかな肌。剣を振るっているとは思えない華奢な腕。引き締まった腰に艶めかしい太もも。だが、それらは想像の範疇に収まる。刹那でソニアを堪能し、メインディッシュへと目を注ぐ。


--そう。ソニアは貧乳だと思っていた。ミレーユはたわわな果実を装備しているのに妹は……と思っていたのだ。しかし、現実は違った。注視し続ける部分には布切れが巻かれていた。---サラシを巻いていたのだ。


サラシと認識した瞬間、俺の中に住む紳士が統合される。


『サラシか…。ソニアは活発な女性。動きに邪魔だと思ったのでしょう。剣を振ればぶるんぶるん。敵の懐に潜ればぶるんぶるん。歩く度にぶるんぶるん。---ふぅ。つまりはソニアもたわわな果実を装備していると言うことですね』


統合された紳士は僧侶に進化したようだが、もう駄目みたいですね。


女性は男性の目線が分かると言うが、それは事実なのだろう。俺の紳士的な目線がソニアを蹂躙していた事に気付いたソニアはその場にしゃがみ込む。


顔を赤くし目には薄っすらと涙を溜めながらソニアは罵倒する。


「----このド変態ッ!!!!!こっち見んな!!見るなあああああ!!!」


反射的に何か隠す物を渡そうとするが、本能が動きを止める。


『主人よ…。今更素直に渡しても遅い。……だが、ゆっくりと近づき、優しく布をかけてやれば好感度が上がるでしょう。…大丈夫。賢者の私が言うのだから間違い無いです』


統合された僧侶は賢者にランクアップしていたようだ。俺は賢者の御導きのままに、優しく微笑みながら布を広げソニアへと近付いていく。


「----ッ!!!!」


「大丈夫。俺は何も見てない」

『主人…その言葉はフラグだ』

「えっ?--グベッ」


賢者に話しかけられ動きを止める。その瞬間、顔にとてつもない衝撃を感じた。


「--何が!何も見てないだ!!!目がずっと動いてなかったわよ!!!」


ここに来て、1度も殴られて気絶したことの無い俺だったがソニアの絶叫を最後に、意識を手放すのであった。


♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎


たわわな果実が俺を取り囲んでいる。触ったり頬擦りしたりしていると、たわわな果実にサラシが巻かれていく。『それは良くない。非常に良くない』と顔の見えないたわわな果実に説教をするが、サラシが巻かれてしまう。そしてサラシを巻き終えたたわわな果実はゆっくりと俺から離れていく。必死に追いかけようとするが、余った布が俺の足を拘束する。


---行かないでくれ!!


見えなくなる果実に手を伸ばそうとした時、水のような物が顔にかかる感覚を受けた。



「---おい、起きろ変態」


まどろむ意識の中、頭上にはソニアの姿があった。目の前には水の玉が浮かんでおり、いつでも落ちて来そうな状態だ。


「--ハッ!サラシを巻いたたわわな果実は!?」


---バシャッ。


俺の言葉に反応するように水の玉が落ちてきた。


「ゴボッ!--ゴホッ、ゴホッ!」


「……まだ目が覚めてないようね。お代わりいる?」


「ゴホッ!!--い、要らない!!もう覚めたから!!」


慌てて起き上がり、鼻に入った水を出していると修羅の表情を浮かべたソニアが前に立った。


「………………」


「フンーッ!!……あぁー、ビックリした。いきなり何するんだよ!」


「………………」


「……ソニア…さん?」


「………………見た?」


「……はい。しっかりと見ました」


経験上--ゲームの経験だが--、この選択肢を間違えるとバッドエンドな気がする。ここは正直にゲロった方が最小限の犠牲で済むと感じた。


「………はぁ。なんで素直に話すのかなぁ?普通は『見てなんかいない!』って言うところでしょ?」


「だって見たもん。見まくったもん」


「……はぁー。そんな純粋な目を向けないでよ」


「悪いとは思ってる。しかし、とても眼福でした。ご馳走--


再び殴られる。しかし、今度は気を失うまではいかなかった。


「うるさいっ!!余計な事言わなくてよろしい!!」


「いてててて…」


「ダメージなんか無いでしょ?…ほら、早く朝ご飯の準備して!」


機械的な動きで起き上がると朝食の支度に取り掛かる。ソニアの視線がキツイが、不可抗力だから仕方ないだろ。俺だってそんなイベントがあるって分かってたらカメラの準備してたわ!!……カメラなんて無いけど。


支度が終わり、黙々と朝食を食べ進める。雰囲気的に、謝罪から入らないと駄目そうだな。


「その…ソニア。舐め尽くすように見てしまったのはすまんかった」


「…………」


「けどさ、俺だって男だ。あのシチュエーションを健全な男子が健全な対処が出来るわけ無いだろう?」


「………」


「……まぁ、変な目で見たのは謝る。だから許してくれ」


「…許せるかー!!!もっと!!ちゃんとした!!謝罪の仕方があるでしょー!!!」


朝食の容器が飛んでくる。それを華麗に避け、言い訳と言う名の謝罪を続ける。


「だって見たもんは仕方ないだろ!見てないって言う方がやまし過ぎるわ!!」


「……そりゃそうだけど…」


「変な目で見た事は謝る。しかし、見た事自体は謝らないぞ!」


「むむむ……。はぁ…わかった。それでいいよ」


勝った!まぁ、変な目でって所は悪いとは思うよ?けど仕方ない事だもんな。俺は悪くない!


変な雰囲気は徐々に霧散していき、食べ終わる頃には普段通りの雰囲気に戻った。野営の片付けを済ませ、階段の前で立ち止まる。


「忘れ物は無いな?……よし、降りるぞ」


腰にしっかりと命綱を巻き、警戒しながら降りていく。ただ、降りていくに従って違和感を感じてきた。


今までの階段は、アパートで使うような折り返しの階段なのに対しこの階段は弧を描くように連なっている。螺旋階段と言えば分かりやすいだろうか。グルグルと回りながら下に降りて行く印象を受ける。そして、今までよりもかなり長い。


魔物の気配も罠の気配も無く、ひたすら降りて行く。ソニアも違和感を感じたのだろう。周囲をキョロキョロと見ながら俺との距離を縮める。


やがて、灯りが薄っすらと見えてきた。どうやら、螺旋階段はそこで終わりのようだ。魔物と鉢合わせしないように充分に警戒しながら、広間へと降り立った。



---そこは今までの場所と違った。剥き出しの岩などは無く綺麗に整地されており反対側には重厚な扉があり、周囲には燭台が数多く設置されており広間を照らしている。扉の前には2つの灯籠みたいな物があった。


「ここは…出口なのかな?」


扉の存在を確認したソニアが尋ねる。声は微かに抑揚していた。


「…多分。今までと全然違うしな…」


ゆっくりと罠に警戒しながら扉へと近付く。扉前に立ち、押したり引戸みたいに試してみるが開く事は無かった。


「……アルス」


「あー…安定のギミック系か…」


「ギミック系???なにそれ??」


「……ほら、この扉の端っこ下部分にご丁寧に色の違う場所があるだろ?」


ソニアの目線が床へと移る。


「あっ……ホントだ。赤くなってるね」


扉を挟むように2箇所赤くなっている部分がある。恐らくだが、灯籠みたいな奴を動かして解錠するギミックだろう。


「…よし、あの灯籠をこの赤い所に動かすぞ。多分、それで扉が開くと思う」


「……すごいな。扉の開け方がもう分かったの!?」


「あー、多分だけどね。経験上、このパターンはあり得るからね」


ソニアと灯籠前に移動し動かす。だが、ソニアには重かったらしく前もって渡していた能力向上薬を飲ませると、何とか動かすことが出来た。


「一気に乗せるなよ。2人同時に赤色の所に乗せるんだ!」


「はい!!」


あと一息で乗せれる状態にしてから、せーの!と声を掛ける。灯籠が綺麗に赤色の部分に乗るとガチャリと解錠した音が聞こえた。


「………開いたの?」


「ああ。どうやら正解だったみたいだな」


「……これで帰れるの??」


「多分な。……いやー、長かったな」


「やったぁー!!!やっと帰れるんだぁー!!!」


扉を前にしソニアはピョンピョンと歓喜の表情で飛び跳ねる。その様子でどれだけ喜んでいるのかが分かる。


「さて、一緒に開けようか」


「うん!!」


ソニアが扉に手を当てたのを確認し、せーの!と声を掛けたその時。懐かしくも聞いただけで分かる失敗の音が聞こえた。


「…………………は?」


ガコンッ、という不吉な音が足元から聞こえソニアと顔を見合わせる。


足が地に着いていない不思議な感覚が体中に走り回る。


「----キャアアアアアアアアアアッ!!!!」


ソニアの絶叫と共に俺達はその場から落下していく。


「---ウオオオオオオオ!!!」


「た、助けてえええええ!!!!」


ソニアの声で我に帰る。必死に命綱を引っ張りソニアを抱き抱える。


「ソニア!!しっかり掴まってろ!!」


泣きじゃくりながらソニアは俺をギュッと抱きしめる。


「『身体強化』!『ダメージ軽減』!『地神の加護』!『耐震強化』!」


防御力向上のスキルと魔法を使い衝撃に備える。この落とし穴がどれほど深いのか確認出来ず、いつ訪れるか分からない衝突に怯えながら自分自身とソニアへと魔法をかけ続けるのであった。


♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎


---どれほど落ちていったのか。それを認識する暇はなく落とし穴の終わりは不意に訪れた。徐々に明るくなるなどの親切な兆候は無く、唐突に岩盤へとぶつかった。


スキルと魔法のお陰で俺自身にダメージは無い。だが、小隕石が落ちたように岩盤は俺のサイズに合わせるように削れて行き、やがて侵食を止める。


「だ、大丈夫かソニア?」


ソニアから返事は無かったが力強く握り返すのが分かった。


「怪我とかしていないか?」


胸元でフルフルと首を動かす感覚がする。喋れはしないが、応答出来るという事は大丈夫なのだろう。


「……すげー落ちたんだろうなぁ」


感覚的に真っ直ぐ落ちたのだろう。上に向かって『火球』を放つと照らしながら上昇していく。


やがて、火球は小さくなっていき見えなくなる。かなり地中深くまで落ちていったと理解した。


「……どうすっかなぁ」


登るしか手立ては考え付かないのだが、ソニアと共にと考えると難しいと結論付ける。


「………いくら考えても登る以外は見つからないな」


立ち上がろうと上体を起こした時、嫌な音が下から聞こえる。


「……嘘だろ?」


ピシピシピシと亀裂音が加速していく。再びソニアをキツく抱き締めると重力に従って下へと落ちていった。


「---グハッ!」


中途半端な高さだと叩き付けられるという実感が湧く。例えるなら、プールに背中からダイブした感覚だと言えば分かりやすいだろうか。ダメージは無いと言えど、体が麻痺したような感覚を受ける。


「…アハハ。アハハハハハッ!」


無事だったという感情と、死んでもおかしくなかった状況から笑いが込み上げてくる。いきなり笑い出した事に胸元に居るソニアがビクッと肩を動かす。


「ハハハハハッ……はぁー、すげーな俺…」


その時、心配そうに覗き込むソニアと目があった。目は充血し、鼻水は垂れ、涎も少し出ていたようだ。


「ソニア……無事か?」


「……うん…、うん…」


嗚咽のような声で頷く。そのままの状態で俺は回復魔法を唱えると、治癒されているような感覚を受ける。


「ぶえぇぇぇぇえ!ごわがっだよぉ……!」


「俺も怖かった。……マジで死ぬかと思ったよ…」


ソニアの頭を優しく撫でながら、2人とも無事で生きているという事に安堵する。


「アダジ…もうダメがどおぼっだ……」


「もう大丈夫だ。……よしよし」


ソニアが泣き止むまで暫く時間が掛かった。鎧の下に着ている下着がじんわりと濡れて来る頃、ソニアがゆっくりと起き上がった。


「…えっぐ…ヒッグ…」


「……落ち着いたか?」


コクコクと頷き、俺から離れる。ソニアが離れた事を確認してからゆっくりと立ち上がる。


「んーーーーーーーーっ。……ふぅ、何処も折れてないみたいだな」


骨を鳴らしながら状態を確認していく。無事に生きていたのは魔法とスキルのお陰だ。この時ばかりはゲームを真面目にしてて良かったと思える瞬間だった。


「……なんで、そんなに、平気、なの?」


少ししゃくりつつもソニアが話かける。


「んー…死んではいないからかな?死にそうだったとは思えるけど、ほら、2人とも生きてるし、大丈夫だなーと思って」


「…ヒック、良く分かんないよ…」


「まぁアレだ。『無事で何より』ってヤツだよ。うん!」


俺のよく分からない言葉にソニアは少しだけ笑う。そして、目をこすり鼻を思いっきりすすると、その場でゆっくりと深呼吸をした。


「---ふぅー。……ところで、ココどこ?」


若干赤い目をしたソニアが尋ねる。そこで初めて周囲を見回すと、若干落ちてきた部屋よりも薄暗い場所にいるようだ。


「……わかんねぇ。ただ、かなり落ちてきたってのは分かる」


壁側に目をやると燃えていない燭台を見つけた。そこへ向かい、松明へ火を灯すと壁伝いに火が走り出した。


「……………すっげぇ…」


火は次々に燃え移っていく。じわじわと視界が明るくなっていく中、落ちてきた部屋の広さが見えてきた。


「……めっちゃ広くね?」


「…それにかなり高さもあるね…」


目の前にはアリーナのような広さと高さを備えた空間が広がっていた。そして、目を凝らしてみると丁度反対側の方に大きな扉が見えた。


「あ!!アルス!扉があるよ!」


「あれが出口なのか?…また落とし穴とかは辞めてくれよ?」


落とし穴の存在に怯えつつも、扉へと近づいていく。そして、扉から少し離れた壁沿いに登り階段があるのに気付いた。


「…アルス、あれって階段だよね?」


「ホントだ…。チラッと見えたけど、登り専用かな…?……どーする?」


「でも階段を登るとしたら、凄く時間がかかるんじゃない?…1度扉を開けて、出口じゃなかったら登ろうよ」


「そうだな…。……っと、着いたな」


落とし穴に引っかかる事なく無事に扉へと辿り着いた。前の扉とは違い、ご丁寧に取っ手が付いていた。


「うー………。落とし穴だけは勘弁してくれよ…」


ソニアを手繰り寄せ、ゆっくりと取っ手に手をかけ下ろす。---ガチャン、という音が響き扉が解錠された事が分かった。


そのままゆっくりと取っ手を引くと、扉の向こうは真っ暗な空間が存在していた。

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