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放置ゲー廃課金者、転生する!  作者: さぶいち
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第055話

♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎


「敵襲--!!敵襲---ッ!!」


王都の城壁から敵襲を知らせる鐘の音が鳴り響く。王都には2種類の鐘が存在し、今鳴り響いているのは『魔物襲来』の鐘である。


鐘の音が聞こえ、ジルは門番へ連絡を繋ぐ。


《敵の数は?》


《数は大多数!サガン方面より進行中!》


《直ぐに冒険者を送る》


受付にすぐさま降り、フロアにいる冒険者へ出撃を命じる。運良くこの場に居たのが、高ランク冒険者であり、何人かは防衛時のリストに登録していた。


ジルの声に冒険者はすぐさま行動を取る。各々、装備とアイテムを確認しながら門へ向かっていった。しかし、運が悪いと言うべきか。冒険者が出払った後に、門兵より最悪の連絡が入る。


《--ッ!!!敵の数およそ数千!!上空にはド、ドラゴンが!!!!》


《なんじゃと!?!?》


《至急応援を!!---ヤバイヤバイヤバイ!!全員衝撃に備え---


《どうした!何があった!!?--おい!返事するのじゃ!!!》


一方的に通信が途絶え、建物が大きく揺れる。不安を覚え、ジルは外に出て門の方を見る。すると、そこには広範囲に渡って煙が昇っていた。


「ドラゴンじゃと……?それに数千の魔物じゃと!?……一体どうなっておるんじゃ?」


ジルの問い掛けに答える者はいない。しかし、ジルも元冒険者。そしてギルドマスターとして、何が最善なのか思案を巡らせる。


「--残っている者で連絡が取れる者…。ゴードン達とアルス達がおった!……いや、しかしサガン方面から軍勢が押し寄せたと門兵は言っておった…。もしやサガンは滅びたのであろうか…?」


すぐさまジルはコンラッドへ通信を繋げる。返答はすぐには無かったのだが、少し時間をおいて返ってきた。


《急用か!?》


《コンラッド、サガンは今どうなっておる?》


《あぁ!?防戦中だよ!!忙しいから切るぞ!》


《待て。アルスはそこにいるか?》


《いねーよ!!ここにいるのはチカとナナだけだ!!》


《アルスは今どこに?》


《逃げ遅れた住民の避難をしているらしい!場所は知らん!!ローリィもついていったみたいだ!!》


《そうか……》


《んだよ?なんかあったのか?》


《サガン方面から魔物の襲来があったのじゃ。ドラゴンも確認されておる。…アルス達をこちらへ向かわせてくれんか?》


《はぁ!?こっちもヤベー状況なんだよ!!…とりあえず、アルスに聞いたらどうだ?--っと!スマン!切るぞ!!》


「……………」


コンラッドと連絡が取れた事、そして住民の避難という言葉でジルはサガンがどの様な状態にあるかを悟った。--あくまでも想像ではあるが。


何にせよ、ドラゴン相手に冒険者と兵士達は生き残れないであろう。正直言えば、アルス達の力が欲しい。だが、サガンが滅びてしまう可能性もある。


ジルは悩む。王都とサガン、どちらが護らなければならないかと言われれば、全員が王都を選ぶだろう。しかし、サガンは魔物の侵攻を防ぐ防波堤なのだ。滅ぼされてしまえば、瞬く間に魔物の侵攻が始まるであろう。


「--いかんいかん。冷静に思考するのじゃ」


悩み抜いた末、1つの結論に辿り着く。--アルス達を全員呼ばなくても良い。最低でも2人ほど寄越してもらおうと。


アルスが交戦中ではない事を祈りながら、ジルは通信を繋げる。


《アルス、至急王都-------


♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎


「たまげたなぁ…。まさか王都でこんな軍勢を見るとは思いもよらんかったぜ」


「…そうネ。けど、たまたま依頼からの帰りで良かった。加勢に行くわヨ」


王都から見て左側、大きな岩の上にゴードン夫妻が立っていた。


「……ちょい待ち。…アレ見えるか?あの飛んでるやつ」


「どれ……?--ッ!!ドラゴンじゃない!!何で王都に!??」


「だよなぁ…。アレどう見てもドラゴンだよなぁ…」


「ゴードン、急ぐわヨ!!手遅れになる前に!!」


「ああ。……ったく何が一体起きてんだか……」


「ほら!早く!!」


ゴードン達は急いで戦場へと向かう。門周辺からは煙と爆音が鳴り響いている。


「ネル!!前方のトカゲを狙え!!」


ネルはゴードンの指示が来る前に矢を放っていた。矢の先には、大蠍に襲われそうになっている兵士がいた。


「ヒュー!!流石ネルちゃん!!」


「茶化すな!!ほら!!アンタもさっさと特攻---ウワァ!!!」


ゴードン達の前にいきなり人が現れた。


「ん?ゴードン達じゃねーか」


いきなり現れたのは、アルスとナナ。アルスはやや表情が暗いが、ナナはいつも通りだ。


「……アルスか。丁度良かった!王都が襲撃されてる!援護に行くぞ!!」


「呼び出されたんだがな…。まぁいいや、俺はあのドラゴン相手にするからお前らは他の奴らを頼む」


「はぁ!?相手はドラゴン--って、お前にはそんな心配要らないか…」


「さぁな?ま、ヤバかったら援護頼む。…ナナ、軍勢の後方にぶっ放せ」


「了解。その後はどうすればいい?」


「兵士達の回復を。ある程度終わったら攻撃に転じろ。今回は全力出していい」


「了解。---『獄焔』」


♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎


ナナの魔法をぶっ放した後、俺はすぐさまドラゴンへと向かった。後方はナナが居るから大丈夫だろう。


ジルから連絡を受けた後、俺はすぐさまチカ達を連れて王都に出向こうとした。しかし、チカ達を連れて行こうとしたらコンラッドから『2人は残して欲しい。他に残党がいた場合、太刀打ちが出来ない』と、懇願され仕方なくチカとローリィを残してきた。


ナナを連れて来たのには理由があり、ナナは純粋な攻撃魔法を得意としている。ジョブを変えればいい話だが、元々のキャラ設定で『範囲攻撃魔法のスペシャリスト』なのだ。


適性のジョブで攻撃魔法を放つと、ダメージが38%も上昇する。ジルから敵の数を聞いていたので、最も適している人物を連れて来たのだった。


後方に放たれた魔法は未だ燃えている。その焔は周囲の魔物を飲み込み、次々と数を減らして行っている。


「…これがドラゴンか。強そうだな」


ゲームやアニメに出てくるディテールをしたドラゴンへと接近する中、俺に気付いたドラゴンは火球を次々と放ってきた。その火球を容易に避けながら、足元まで辿り着いた。


「…鳩みたいにウンコ落とされたらどうしよう…」


上空を見上げながら、アホな事を考える。どんなファンタジーでもドラゴンがウンコするなんて見た事はない。……ドラゴンの糞とかいうアイテムは見たことあるけど。


「…しっかし遠いな。撃ち落とすか」


アホな事を考えてる間も、ドラゴンの攻撃は続いていた。避けたり弾き返したりしているが、このままではジリ貧だ。


「--『重力波』」


ドラゴンに向け魔法を放つ。その名の通り、対象に重力を掛ける魔法だ。宙に浮かんでるのは地面に落ち、地面にいるのはそのまま潰される魔法である。


「……ん?落ちてこないな」


確かに魔法が当たったと思ったのだが、ドラゴンは平然と飛んでいる。威力が弱かったのか、耐性があったのかは定かではない。


「なら今度は斬撃でも放つか。………ん?」


剣を握り締めスキルを使おうと思った時、ドラゴンは俺からやや離れた場所へと降りてきた。


「…効いていたのか?」


先程まで攻撃してきていたが、着陸するまで一切こちらに攻撃してこなかった。その事に疑問を覚えながらも、ドラゴンへと近づく。


「……貴様何者だ?」


ほんの少し近づくと、ドラゴンが話しかけてきた。


「…ドラゴンって喋れるのか?……いや、漫画でも喋る奴はいるか」


「質問に答えよ」


「俺はアルス。冒険者だ」


「冒険者だと?……お前の名は聞いた事が無いのだがな」


「新人なもんで。……んで?お前はなんて名前のドラゴンなんだ?」


「は?ドラゴン…?………ああ、コイツは名もなきただの魔物だ」


「コイツ?お前が喋ってるんじゃ無いのか?」


「ドラゴンが?…ははっ!懐かしい質問だ。……俄然貴様に興味が湧いたぞ」


高らかに笑い声が聞こえたかと思うと、ドラゴンの腹から漆黒のローブを羽織った人型が出てきた。


「……誰だお前」


「私か?私の名はガノン。魔王様に仕える忠臣の1人」


コイツが名を名乗った瞬間、俺は一気に距離を詰め一撃を放つ。しかし、不思議な事に俺の一撃は防がれてしまった。カウンターが来そうだったので、急いで後方へ下がる。そして、疑問に思った事を問いかける。


「………お前何者だ?そして、その剣はどこで見つけた?」


「ガノンと言ったはずだがな…。これは魔王様より頂いた物。……自慢の攻撃が防がれて驚いたのか?」


「魔王から頂いた…?いや、あり得ない!」


「何があり得ないのだ?……貴様の剣も何処かで見た事があるな…。ふむ…、先の言葉といいその武器といい…非常に気になるな」


「まぁいい、この事は後で詳しく聞かせてもらおう。…ところで、リッチっていう雑魚にサガンを攻めさせるように命じたのはお前か?」


「如何にも。私の計画でサガンを攻めさせたのだよ」


「……そうか。ならお前が原因って事だな」


「?何を言っているのか分からんが、その口振りからしてリッチとあったようだな。…連絡が無いようだが、サガンから逃げてきたのかな?」


「教えねーよ」


「……ふーむ。増援が無い事といい、リッチの事を知っている者がいる事といい…もしや、貴様はリッチを倒したのか?」


「…さぁね。ま、雑魚は雑魚でしか無かったわ」


「……クククッ、クハハハハハハッ!面白い!!面白いぞ貴様!!よもや、リッチを雑魚と呼ぶ者が存在するとは思いもよらなんだ!」


ガノンは満面の笑みで高笑いする。その様子に少しイラッとしたが、有益な情報を話すまでは我慢しようと思った。


「---ふぅ。これは計画を変更しなければならぬな」


「--ッ!!待てっ!!」


我慢したのがいけなかった。ガノンはその場から一瞬で消えてしまった。


「クソがッ!!!クソがクソがクソが!!!」


ガノンが居た場所に呪詛のように言葉を放つ。ガノンに対して、そして自分に対して。


「…チッ。何故攻撃しなかったんだ…」


完全に俺の失態だ。手足の一本でも削って捕まえるべきだった。


向けようのない怒りに打ちひしがれていると、何かが横から迫ってきていた。


---衝撃。まるで車に体当たりされたかのような感じを受け吹っ飛ばされる。しかし、ダメージは無い。


「……ドラゴンか」


俺がいた場所に尻尾が残っていた。つまりは、俺がボーッとしている時に尻尾攻撃を喰らったのだらう。


「……チッ。邪魔だなお前」


首を狙い斬撃を放つ。先程とは違い、ドラゴンの首を容易に切断した。首を斬られたドラゴンは、たたらを踏み大きな音を立て地面に倒れた。


「……さっき魔法が効かなかったのはアイツが体内にいたからか。……ガノン。名前は覚えておくぞ」


吐き捨てるように魔王国に向け言葉を発する。俺の中にあった火種は鎮火する事は無かった。



ドラゴンを倒し終えた俺は、後方から魔物を攻撃していった。自分への怒りをスキルに乗せ、殲滅していった。


--2時間後。最後の魔物に兵士がトドメを刺し、襲撃は幕を閉じた。魔物の返り血を浴びまくった俺に、ゴードンを含めた何十人もの兵士と冒険者が走り寄ってきた。


『英雄だ!』、『王都の救世主だ!』などと皆が俺を褒め称えるが、そんな気分にはなれなかった。その様子にゴードン夫妻だけは気付いたようだが、周りは気付いていない。


そして、その中にナナがゆっくりと割り込んできて俺の前に立ち、手を頭に乗せ、こう言うのであった。


「マスター。お疲れ様」

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