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放置ゲー廃課金者、転生する!  作者: さぶいち
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第048話

声高らかに宣言するコンラッドの表情とは違い、俺の表情は曇っていた。


「……なんだ?嬉しく無いのか?」


俺の表情が意外だったのか尋ねてくる。


「嬉しくは無いな…。いや?依頼の幅が増えるって意味では喜ぶべきなのかな?…ただ、ランクが上がると責任も色々増えてくだろ?それが面倒に思えてさ…」


「ああ、そんな事を考えていたのか。安心しろ、お前達は本当に特例で昇格しただけだ。王都の防衛をする以上は最低でもBは無いと出来ないからな。貴族なんかから言われないよう配慮してだ。…そうそう、B+になったのはゴードン夫妻と腹黒の推薦でだ。ゴードンはAランクでも良いと言っていたが、そうなると王族や貴族に面会しなければならないからなぁ…。そういうのは嫌いだろう?」


「嫌いだな。だってめんどくせーじゃんか」


「マトモな貴族なら大丈夫だが、全てがマトモでは無いからな。そういえば、トーケル様に目をつけられたんだって?」


「目をつけられたって言うか…ただ、喋っただけだよ?」


「気をつけろよ?アイツは性格が捻くれまくってるからな。チカ達を自分のものにしようと横槍を入れてくるかも知れん。貴族と問題になると、お前は圧倒的に不利だからな。そこだけは絶対に気をつけておけ」


「ああ、ポーロさんにも同じ事を言われたよ。まー、そんなことにならないように気をつけておくよ」


「そうしてくれ。…話は以上だが、なにか質問などはあるか?」


チカ達の顔を見るが全員何も無さそうな顔をしている。無いと言おうと思った時、レインの姿が目に入った。


「あ…質問っていうかお願いがあるんだけど」


「お願いだと?腹黒に汚染でもされたか?」


「ちげーよ、強制なお願いでは無いよ。…俺達がレイン…この子を保護したってのは聞いてるか?」


「ああ、ドーン達からも腹黒からも聞いているよ。孤児院に預ける予定だったかな?」


「そうだ。…ただ、レインはこの街の生まれでも無いし身分証とかも無いだろう。よければ、レインの身分証を作ってくれないか?」


「……その件に関しては辺境伯様にお伺いしている。まぁ、近日中に書類は届くだろうよ。………あ、そうだ。思い出した」


「何を思い出したんだ?」


「その子…レインだったか?その子を孤児院に預けるというのには了承を得ている。今日からでも預ける事はできるぞ。……ただ、辺境伯様からチカ達に取引があってだな」


俺ではなくチカ達にという事に驚きを感じた。チカ達も予想外だったのか、目を白黒させている。


「…取引とは一体なんでしょう?」


「そんな難しい事ではない。孤児院は辺境伯様が運営しているというのは知っているか?」


「ああ、聞いたことがあるよ」


「辺境伯様も忙しい身分だからな。今は住民に管理を依頼しているのだが、チカ達にお願いしたいという事だ」


「はぁ?何で俺達が管理する事になるんだ?」


「それは分からん。…だが、辺境伯様はお前達を高評価しておってな。それに、お前達は自宅を持ってないだろう?管理をしてくれるのであれば、孤児院に住んでも構わないと辺境伯様が仰ってな。どうだろうか?」


…どうだろうかって言われてもねぇ?少し考える時間をくれと口を開こうとしたが、それよりも早くチカが口火を切る。


「その取引、乗りますわ!!」


「お、おいチカ!そんな簡単に決めて良いのか?話し合って決めた方が良くないか??」


「アルス様、この取引はかなりメリットが大きいと思われますわ。まず、住居が手に入るという事。それに、私達が管理するという事は職員として住民を雇っても良い筈ですし、何よりレインとずっと暮らせるという事がメリットとしてあります。デメリットは、管理するのであれば、孤児院の掃除や預かる子供達の対応などでしょうけど、それは私達がすれば良いと思われます」


「うん、チカの考えはボクと一緒。それに付け加えるなら、『管理』はボク達がするけど『給与』などは辺境伯に任せれば良い。何故ならこの取引には、『孤児院を譲る』と言われてない」


「…確かにそうだな。別に俺達が全部するわけでは無いって事か。そうなれば、レインの先生も雇う事は出来るな」


「結局は維持管理する為にあたし達が居れば良いって事でしょ?孤児院って言っても、託児所みたいなものだって言ってたもんね!」


「……そう考えるとチカの言う通りメリットが大きいな。金払って家を買わなくて済むしな」


「どうでしょう?この取引は乗った方が良いと思いますが。…後々の事は辺境伯と相談すれば良いかと」


「……皆はこの取引に賛成なのか?」


「ええ、勿論」

「異議なし」

「さんせー!!」


チカからこういった意見が出るという事に驚いたが、3人とも賛成のようだし、この取引に応じるとするか。


「…コンラッドさん、辺境伯様に取引に応じると伝えてくれ。課題が出た時には応相談って事でよろしく」


「分かった。そう伝えておこう……と言いたいところだが必要は無いな」


「は?何言ってんだ?伝えなきゃ意味無いだろ?」


「コンラッド殿の言う通りじゃ。君達の会話は全て聞いておったよ」


どこからか老人の声が聞こえる。部屋を見渡すが、コンラッドと俺達以外には居ない。


「あれ?どこから聞こえて来るんだこの声?」


「…何をしてるんだ?水晶からに決まっているだろう?」


コンラッドの言葉を聞いて水晶を覗き込む。だが、水晶には自分の顔しか映ってない。


「はぁ?俺の顔しか---

「おおう、いきなり覗き込むでない。アルス君の顔がいきなり出てきて焦ったぞ?」

「うおおお!?この水晶から声が聞こえるぞ!?」


慌てて水晶から距離を取る。その姿が滑稽だったのかコンラッドが笑い出した。


「ブハハハッ!何をそんなに驚いている?お前も持っているだろう?この連絡用の水晶を」


「使った事ないから、こんなになるって分かんねーんだよ!…それに俺がイメージしていた水晶と違うんだよ」


「お前がイメージしてたのはどんな水晶なんだ?」


「こう…なんて言うかな。水晶に相手の顔が写ってそれで話せるもんだと思っててな…」


「ああ、そういう水晶の事か。辺境伯様が使っているのは正にソレだな。だが、俺の使っている物やお前に渡したのは声だけで会話する物だ。『被写水晶』というアイテムだが、持っているのは貴族か爵位持ちぐらいだろうな」


よくアニメとかであるヤツだと思ってたけど、現実はそこまで甘くは無かったか。まぁ、魔法という未知なるモノが存在する時点である程度の期待はしてたけど現実的には金がかかるものなんだなぁ。


「……これの使い方ってさ、ドーンから一応聞いているんだけど、やっぱり一方通行なのか?」


「互いが登録しておけばいつでも会話は可能だぞ?お前の持っている水晶を出してみろ」


水晶を言われるがまま取り出すと、コンラッドが水晶に魔力を流す。


「こんな風にすれば良い。一応、俺の水晶にもお前の魔力を流しておけ。そうすれば互いで連絡し合える」


「…この水晶はどこで売ってるの?チカ達にも持たせたいんだけど」


「…残念ながら市場には出回ってないな。ギルド経由でなら購入は可能だが全員分買っておくか?」


「そうだな。レインの分も含めてあと4つ頼むわ。金は後でで良いか?」


「分かった。今から発注したとして早くて4日だな。……普通の声だけのヤツにするか?被写水晶でも構わんが…」


「無駄金になりそうだし声だけのヤツで良いよ。届いたら連絡をくれ」


「分かった。…ああ、一応使い方を説明しとくぞ?常にポケットに入れておけ。お前は確かボックスが使えたな?そこでもいいから入れておけば、直接脳内に声が届く」


「直接脳内に…?ちょっと意味わかんねーな」


「表現が難しいんだ。それに、戦場で一々水晶を取り出して会話するのも手間だろう?試しに一回やってみようか。それをポケットに入れておけよ?」


コンラッドは机に置いておいた水晶をポケットにしまうと俺から少し離れた。


《どうだ?聞こえるか?》


「うおっ!?」


コンラッドの言葉は嘘では無かった。確かに直接脳内にコンラッドの声が届いた。


「聞こえただろう?なら、今度はお前から喋ってみるといい。話す相手を想像しながら語りかけろ」


なんかちょっと哲学っぽいというかややこしい説明だな…。とりあえず、イメージとしては携帯電話で電話する感じで良いのかな?


《あーあー、聞こえるか?》


《ああ、聞こえるぞ。使い方はこんな感じだが、いきなり戦闘中に話しかけられる場合があるが、その時は断るようにしろよ?》


《今は無理!みたいな感じでか?》


《そんな感じだ。例え王族だろうが、戦闘中はそう断って良い》


水晶越しの会話を終え、思ったことは『携帯』に近いものだと感じた。魔力で出来るという事は電波などが必要でないので、圏外などという概念は無いだろう。そう考えると『携帯』よりも使い勝手が良いと思える。ボックスに入れておけば邪魔にならないしね。


「水晶が届いたらまた連絡する。それまでは、疲れを癒すと良い。話は以上---


話を締め括ろうとしたコンラッドだったが、動きがいきなり止まる。その事に疑問を思ったがコンラッドが止まった理由を話してくれた。


「…すまん。辺境伯様の事をすっかり忘れておった。孤児院の管理について話があるそうだ」


ポケットから水晶を机に置くと、水晶から辺境伯の声が聞こえる。


「長話が終わろうとしたのにすまんな。簡単に孤児院の管理について話す事があるのでもう暫く付き合ってくれ」


「大丈夫ですよ。それで、話とは?」


「簡潔に言うかの。先程、そちらのエルフのお嬢さんが言った通り雇用についての給与はこちらで持とう。ただ、全額となるとサガンの財政が厳しくなるでな、半分くらいはアルス君達に持ってもらいたいのじゃが」


「依頼などで受けた報酬で支払う感じですかね?」


「それでも良いし、王都に出稼ぎに行っても良いぞ?ただ、雇用する人数が増えれば増えるほどアルス君達の負担が大きくなるのでそこは気をつけるのじゃ。あとは、雇用に関しては一々儂に聞かなくても良いぞ。アルス君達の審査に任せておく。ゆくゆくはあの孤児院は学校として使用するのが夢じゃから、その事は頭の片隅にでも置いといてくれ」


「学校…ですか?そうなると改築とかもするんですか?」


「いずれはのぅ。まぁ、早急にと言うわけでも無いしまずは地盤を固めて欲しい。そうじゃなぁ…まずは子供達を預かるのだから、医者や調理師などがおった方がいいのぉ。孤児院の近くに空き家があるから、住み込みで募集をかけると良い。一先ずはそのくらいじゃな。何か他に質問はあるかの?」


「俺は特に無いですけど…チカ達は何かあるか?」


「あのぉ…募集定員はまずどのくらいが良いのでしょうか?10人だと多すぎますし、5人だと回らない気がするんですが…」


「ほっほっほ、まずは自分達を勘定に入れる事じゃな。お嬢さん方が使い勝手を知らなければ、雇用しても分からんじゃろうて。まぁ、今の状態ではそこの獣人のお嬢ちゃんの先生と調理が出来る人、2人ぐらいが必要じゃろうな。依頼も高ランクのモノは少ないだろうし、手探り状態で始めなさい」


「わかりましたわ…。私からは以上です」


「ナナ達はあるか?」


ナナ達は首を振り返事をしたので、無いと言う事だろう。


「他は無いようです。とりあえず、孤児院に住むところから始めます」


「そうかそうか。なら、何か必要な物があればコンラッドに伝えてくれ。儂からの話は以上じゃ。長話してすまんかったのぉ」


「いえいえ、ありがとうございました」


お礼を伝えると水晶から『じゃあの』と聞こえ、それ以降辺境伯の声は聞こえなかった。


「…それじゃ、今から孤児院に行くわ。また何かあったら連絡するよ」


「こちらも水晶が届いたら連絡するからな。…そうそう、ドーン達が会いたがっていたぞ?今日は非番の筈だから、荷物運びにでも使えばどうだ?」


「はは、そりゃあ良い考えだ。偶然にでも出会ったらそうするよ」


コンラッドに別れを告げ、そのまま部屋から出る。長い間話をしていたので、ギルドの酒場には依頼終わりの冒険者の姿がちらほら見受けられた。


「もう夕方かよ…。どーする?飯食ってから孤児院に行くか?」


「んー、まずは孤児院から行った方が良くないかな?早めに居る人に会っていた方がいいと思うなぁー」


「そうね。説明に時間がかかるかも知れないし、早めに済ませておきましょう」


「よーし、それじゃ孤児院に向かうか」


ギルドから出て、孤児院へと向かう。夕方とあって庭で遊んでいる子供は少なかったが、それでも数人はいた。孤児院に入ると、ふくよかな体型の女性が椅子に座っていたので話しかける。


最初は訝しげに話を聞いていたのだが、水晶を使ってコンラッドに説明してもらうと理解してくれた。どうやらここの当番は持ち回りらしく、その女性が他の人達にも伝えてくれるみたいで、後の事はよろしくと言わんばかりに孤児院から出て行った。


とりあえず、孤児院の中を調べどの部屋に誰が寝るとか、ここを教室にするとかを話し合った。意外にも中は広く、俺達には余る程の部屋があった。チカ達にも1人部屋を用意しても大丈夫だとは思ったが、ゆくゆくは学校にするとか言っていたので、大きめの部屋に全員で寝泊まりする事にした。……まぁ、チカ達が一緒がいいって頑なだったんだけどね。


レインを庭に連れて行き、遊んでいた子供達に会わせた。俺の事を覚えている子もいて、レインと遊んでくれないかとお願いすると快く受け入れてくれた。そのままレインの手を握りみんな仲良く遊び始めた。人見知りな性格のレインだったが、1人グイグイくる子がいて、その子に誘われるがまま遊んでいるといつの間にか楽しそうにはしゃいでいた。


…うんうん、これでとりあえずは大丈夫そうだな。にしても、子供ってすぐ仲良くなるよなぁ。凄いよね!


孤児院へと戻り、チカ達とどんな風に改造するかを話し合った。皆の意見を聞くと、ナナの要望が調理場をしっかりして欲しいという事。チカは勉強する為に、図書館みたいな場所が欲しいとの事。ローリィは遊び道具が少ないので、作るか購入したいという事であった。


俺がレインを見ている間、場所なんかも決めてたみたいで明日から改造する事になった。雇用の募集もかけないといけないし、こりゃ明日から大忙しだな!


時刻は午後5時。お迎えに来た親達に一通り説明をしていく。先ほどの女性が連絡したのかは分からないが、皆理解しているようであった。最後の1人を見送った後、俺達は街に飯を食べに行く。露店通りで買い漁っても良かったが、無性にドーンのオススメの店に行きたくなった。


うろ覚えだったが、無事に店に着き食事を取る。堅苦しくなく、次々と家庭料理が出てくる様に安心感を覚えた。レインも味に満足したようでお代わりまでしていた。明日から忙しくなると思うし、俺達はここで充分に英気を養うのであった。

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