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放置ゲー廃課金者、転生する!  作者: さぶいち
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第044話

♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎


イイ村へと着いた俺達は村長の家にすぐさま向かった。討伐が完了した事を伝え、飛竜の素材を3匹分譲った。村長は最初断っていたが、ゴードンがしぶとく説得し強引に素材を受け取らせた。村長は涙を流しながら感謝をゴードンに伝えていた。


村長が『どうしてもお礼がしたいので、今日はこの村に泊まって欲しい』と懇願し、ゴードンはしぶしぶそれを受け入れた。そこからは、村総出で祭りの準備となった。


祭りと言っても、本当にささやかな祭りだ。人も少なければ食べ物も少ない。しかし、その気持ちは嬉しかったので俺達は近くの魔物を狩りに出かけ食料を調達しに行った。


外に出てから、しれっと王都に転移し酒を樽で購入する。祭りには酒が付き物だからね、仕方ないよね!


ついでに食べ物も購入し、村へと転移する。村へ着くとチカ達も丁度狩り終わったらしく、入り口で合流し村の中へと入った。


そして、時刻は夕方。太陽はまだ完全に沈んで無いが、村長の言葉で祭が開催される。酒を飲みながら、俺達は調理をする。村の女性たちも手伝ってくれ、辺りには肉の焼ける良い匂いが立ち昇る。


「おーい、アルス。村長を呼んできたぞー!」


ゴードンに連れられ村長がこっちに来る。村長の手には酒のジョッキが有り、呑んでいるのが分かった。


「アルス様、祭の為に食材の調達から酒までありがとうございます。本来なら私達がしなければならないのに…」


「気にしないでください。俺が楽しみたかっただけですから」


「…ありがとうございます。それで、私に話したい事とは何でしょうか?」


「そんなに固くならないでください。…どうぞ、そちらにお座りください」


村長を近くの椅子に座らせ、対面に座る。ナナに酒を持ってきてもらうように頼み、話し始める。


「話ってのはこの村に『ガガ村』から逃げ延びて来た人は居ないか、って事なんです」


「ガガ村…ですか。……残念ながらこの村に獣人族の村人はおりませぬ」


「そうですか…。ちなみに何ですけど、ガガ村と交流はありましたか?」


「ええ。ガガ村は狩猟が上手なので、森の幸と肉を交換する為、多少の交流はありましたよ」


「…ガガ村が滅びたってのは知ってましたか?」


「…はい、丁度その頃からでしょうか。村周辺に飛竜が出現し始めたのです」


「ガガ村に捜索隊とかは出したりしてますか?」


「いえ…。こちらも村人が少ないし飛竜と戦える者もいませんので全く」


「マスター。お待たせ」


「ああ、ありがとナナ」


「ボクも横に座っても良いか?」


「ああ、…ほれ」


横に置いていた荷物を退かし、ナナを座らせる。酒を一口飲み、村長と話を続ける。


「…今俺達と一緒にいる子はガガ村の生き残りみたいなんです。それで、他に避難してきた村人が居ないかなと思ってお話を伺ったんです」


「そうですか…。しかし、残念ながらこちらに来た獣人族はおりませぬ。お役に立てず申し訳ない…」


「いえ…。話を聞けただけでも助かりました」


村長にお礼を言い、祭を楽しんでくださいと声をかけ話を終える。遠目には村人と楽しそうに話をしているレインが見えた。


「マスター。ガガ村の話を聞いていたのか?」


「ああ。けど、この村に避難した人は居なかったみたいだ」


「…そう。残念」


「…まぁ可能性は0になった訳じゃ無いからな。運が良ければ会えるだろう」


「……もしかしたら奴隷とかになっているかもしれない」


「そうかもしれないな…」


酒を一気に飲み干し、ナナと一緒に祭へと参加する。ゴードンと村人が飲み比べをしたり、チカ達とネルさんが村人達と楽しそうに談笑するのが目に入った。レインも村の子どもと楽しそうに走り回っている。


「おーい!アルス、食べ物が無くなっちまった!悪いが作ってくれねーか?」


「はいよー!」


ナナを連れて調理場へと向かう。どんちゃん騒ぎは更に大きくなり、騒がしくも楽しい雰囲気の中、夜は更けていくのであった。



♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎


「そんじゃ、オレ達は王都に戻るぜ。またなんかあったら依頼を出してくれよな」


「ありがとうございますゴードン様。アルス様方もお元気で」


「もしガガ村の生き残りが居たら連絡下さいね」


イイ村の住民に見送られながら、その場を後にする、レインは昨日散々遊び回ったのか、ローリィに背負われながら眠っている。


「アルス、王都に戻ったらちーっとオレに付き合え」


「別に良いけど…。どこ行くんだ?」


「会わせたい人が居るんだよ。…まぁ、お前にとっても良い事だ」


「なんだかわかんねーが、わかったよ」


帰路は行きと同じで、途中野営をし王都へと帰り着いた。ゼロ達をブランさんの所へ連れて行き、ゴードン達と共にギルドへと向かった。


「おーい。今日、ジルさん居るかい?」


ギルドの受付で、依頼完了の書類を提出しながらゴードンは尋ねる。


「はい。…ただ、今お客様が来訪しておりますのですぐにはお通し出来ません」


「なら、それが終わったらジルさんに伝えといてくれや。…そうだな、15時頃にまた来るよ」


「かしこまりました」


報酬金を受け取った俺達はゴードン達と一緒に昼食を取る為、外へと出る。


「なぁゴードン。ジルさんってのは誰の事だ?」


「ジルさんってのここのギルマスさ。チカちゃん達とこれから依頼を受ける時に一々申請だすのがめんどくせーからよぉ。話を通しておこうと思ってな」


「…なるほどね。俺の事は絶対に言うなよ?」


「わかってるさ。…まぁーあの人は元B+ランクだからお前達を見るだけで分かるかもしれないなぁ…」


ゴードン夫妻オススメの店で昼食を取り、約束の時間まで街をぶらぶらと散策する。ゴードンが小声で夜のお店へ案内してくれたのだが、冷たい目をしたネルさん達がとても怖かった。


約束の20分前となり、ギルドへと戻る。中に入るとタイミングが良かったのか、受付嬢がそのまま部屋へと案内してくれた。


「入りなさい」


ドアをノックすると、中からしゃがれた声が聞こえた。部屋に入ると、長い白髭を生やしたスキンヘッドの老人が席に座っていた。


「失礼します。急に約束を取り付けてすまんな」


「構わんて。ヌシはいつも急だからのぅ、慣れておるよ。……後ろにいるのは奴隷商人かね?」


「はっ。ジルさん、オレが奴隷商人をどれほど嫌ってるか知ってるだろ?」


「そうじゃったな。まぁ、ワシのおちゃめな冗談じゃ。…ヌシがアルスじゃろ?こっちに座りんさい」


俺の名前が出てきた事に少し驚いてしまった。その様子が分かったのかジルさんは笑いながら話しかけてきた。


「カッカッカッ。ヌシの事はコンラッドから聞いておるよ」


「ああ、そういうことですか」


「それとヌシが異常な程強いともな。…まぁ、その言葉は嘘では無かったようじゃがな」


「…分かるんですか?」


「カッカッカッ。わからん方がおかしいと思うがのぅ。…お嬢さん方も座りなさい。紅茶でよろしいかな?」


ソファに座るとジルさんが直々に紅茶を淹れてくれた。バラの匂いがするので、ローズティーだと思う。


「お菓子はいかがかな?最近、クッキーにハマっててのぅ…」


「あー、ジルさん。お菓子はどうでも良いんだよ。それより話があってな」


「まぁ待てゴードンよ。ワシも連続で客と会ってるからの、少しぐらい休憩しても良かろう?」


…なんだか掴めない性格の人だな。マイペースというかなんというか…。でも目はとても鋭く、見抜かれているような気がする。


「おや?お嬢さん方はこの紅茶はお嫌いじゃったかの?れでぃがおるから、肌に良いと評判の紅茶を用意したんじゃがのぅ」


「「「いただきます!!!」」」


チカ達が元気な返事をした時、何かに服を引っ張られる感覚がした。


「アルスお兄ちゃん、『れでぃ』って何??」


「ん?…ああ、レディーってのはな、こう…なんというか綺麗な女性の事じゃなかったかな?」


「…これ飲んだら『れでぃ』になれるの?」


「どうだろ…。まぁー美人な女性ってこういうの飲んでるイメージはあるね」


「……僕も飲む!!」


慌てて紅茶を飲むレイン。しかし、苦かったのか渋い表情を浮かべる。


「カッカッカッ。幼子にはまだ早かったかのぅ?」


「そんな事はどーでも良いからよ、早く本題に入らせてくんねーか?」


「せっかちじゃのう。…まぁ、想像は出来るが一応聞いておこうかの」


カチャリとカップを置くとジルさんはゴードンに目を向ける。


「話ってーのは、そこにいる嬢ちゃん達と一緒にBランクの依頼を受けさせてくれって話だ。まだCランクだが、オレよりも遥かに強い。ただ、パーティ戦に難ありみたいだから、経験を積ませたいと思ってな」


「ふむ……。ヌシがそこまで言うとなると事実なんじゃろうなぁ」


「はっ、もう分かってんだろ?……んで?返事は?」


ジルさんは紅茶を一口飲むと今度は俺を見据える。


「…答える前に少し質問をしようかのぅ」


「何でしょうか?」


ジルさんがカップを置くと部屋の雰囲気がガラリと変わった。


「…小僧。お前は一体何者だ?」


「……………」


ジルさんの言葉に俺は手で反応する。ただし、ジルさんに対してでは無く、チカ達に対してだ。


「それほどの実力がありながら、無名なのが信じられん。聞けば貴様等は『魔の森』から来たそうではないか」


「…………」


「沈黙が答えか?ワシにはコンラッドが信用した事が信じられん。……伝説の魔法が使え、見たことの無い武器を所有し、小僧だけで無くお供の女どもも尋常ならざる強さを持つ。…はっ、話だけを聞けば勇者の再来ではないか」


「…おい、ジルさんどうしたんだ?」


「黙っとれゴードン。……なぁ、小僧。ワシはな、常に最悪を想定して行動しておるのじゃ。サガンの危機を救ったのは認めてやろう。……だがな、実際はどうじゃろうか?」


「……俺達を『魔族』だと疑ってるんですか?」


「聡いのぅ。残念ながら、コンラッドやゴードンが信用したとしてもワシには信じられる要素が無い。『魔の森』から来たと聞いただけで普通なら疑うものじゃがのぅ」


ジルさんの意見は正しい。今思えばフィンを助け、オアシスの魔物を殲滅、急襲してきた魔物からドーンや兵士団を救ったってのは本当に幸運であった。


「…俺達は魔族では無いと言えます。しかし、それを証明する証拠はありません」


「そうじゃな。ギルド証も身分証も無い、小僧を『人間』と証明するモノも無い。……さすれば疑問しか残らないものよのぅ」


部屋はゴードンとレインが呼吸する音しか聞こえない。チカ達はまだ我慢しているようだが、決壊寸前である。


「ちょ、ちょっと待ってくれ!ジルさん、アンタは勘違いしてる!!アルスは絶対に魔族じゃねぇし、嬢ちゃん達もだ!!………ほら、これ見てみろよ!」


ゴードンは背中に背負っていたバトルアックスをジルさんに見せる。


「オレはアルスからこの武器を借りた!この武器は今まで見たことの無い武器だ!もし、アルスが魔族だったら自分達に不利になるような武器を普通貸し出すか!?」


「……ゴードン、ヌシはまだまだ未熟じゃの。ヌシはあまりにも直情型過ぎる。もうちーっと思考をする事を覚えた方が良い」


「はぁ!?どういうことだ!?」


「…はぁ。ネルも大変じゃのぅ。……良いか?ヌシは『もし』という過程を考えた事があるかの?『もし』この武器に『魅了』、もしくは『洗脳』の魔法がかかっているかを借りた時に考えなかったのかね?」


「ア、アルスがそんな事する筈が無いだろ!!」


「そうかね?ワシじゃったら、まずは疑うがの?ヌシだったら、ダンジョン最下層で手に入れた武器を易々と他人に貸してあげるかね?」


「そ、それは……」


「貸す筈は無いじゃろうな。普通ならそうするじゃろうて。……さて、ヌシの働かない脳みそでもそろそろ理解できたかの?」

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