一学期~漆原烈斗~
まずい!あれはくらったら確実に死ぬ!と本能的に悟った。避けなければいけない。そう思っているのに、体の自由が利かない。いや、体は動くがまるで…。そう思ったときは、もう遅かった。
(!?くっ…苦し…い。息が…できない。意識が…飛ぶ…。)
ー『ピリオド』ー
俺の飛びかけていた意識が元に戻ってきた。
(何だ、急に呼吸ができるようになったぞ。どういうことだ?)
「大丈夫かい、蓮華。」ふと聞き覚えのある声が聞こえた。
「誰だ?」
「僕だ。漆原だ。」
ん?漆原?は?
「おい。何でお前がいるんだ。」
「君を助けに来たからかな。それじゃ、とりあえず蓮華はそこで休んでてくれ。」
「いや、でもな。」
「休んでろ。今の君は足手まといにしかならない」
(えっ、何だ人が変わった?)
「おやおや。漆原君ですか。なにをしに来たのですか。まさか先生とやりあって勝てるなど思ってないですよね。」
「そのまさかだよ。ババア。」
怖っ!誰だよコイツ。
「誰がババアだ!この糞ガキが!」
「じゃあ、勝負でけりをつけねぇか。」
「良いでしょう。その勝負受けましょう。」
ー『加速』ーそう言った瞬間、漆原は既に先生の背後にいた。
(汚なっ!不意打ちとか!)しかし先生がそれを読んでいないわけもなく、あっさり避けられる。
ー『幻術』ー(漆原は幻術の有効範囲に…入っている!くそ!何が足手まといとかほざきやがって!)
ー『第三種構築術・独自世界:オリジナルワールド』ー
「なにっ!なぜあなたがその技を!」
「封魔弾!」
パシュッ!漆原のベレッタ92Fから発砲された封魔弾は先生に直撃した。その瞬間勝負は決した。
「ふぅー。疲れたー。」
「お前何物だよ。」
「僕かい。僕は僕さ。」
「それに、さっきの『封魔弾』だっけか、あれはなんだ。それに『第三種構築術』ってなんだよ。」
「『封魔弾』は、文字通り魔力を封じ込める弾丸だよ。まあ、撃った本人がちょっと魔力をそれに伝えると一定時間使えるようにはなるんだけどな。『第三種構築術』は構築術の一つで、構築術には三種類あるんだ。『第一種構築術』は物体を構築。『第二種構築術』は建造物などを構築。『第三種構築術』は世界を構築する。それでさっきの『独自世界:オリジナルワールド』は僕の思いしか起こり得ない世界って訳さ。まぁ、それより強い魔力が来たら消されちゃったり、上書きされちゃったりするんだけどね。」
「お前ホントに何物だよ。」
「いやいや、あの技ができたのは君がここにいたからなんだよ。」
「俺は何にもしてないぞ。」
「君は何にもしてなくても、僕が君にした。僕は他人の魔力を少しだけもらうことができるんだ。」
「どう言うことだ、一から全て話してくれ。」
「そうだね。まず君は黒井一族の末裔である。そして、黒井一族がなぜ滅ぼされたのかもう知ってるよね。」
「あぁ、何か先生曰く強すぎるからとか言ってたな。」
「そう、その理由は世界で君の一族だけが使える属性のせいだ。」
「属性?」
「そう、魔力にはいくつか属性がある。そして君の属性は闇なんだよ。」
「でも、普通って各属性に弱点があるだろ。それはないのか?」
「ある。光属性だよ。しかし、その属性でも完璧に弱点ではない。」
「どう言うことだ。」
「光属性でも、昼間しか優位には戦えない。しかも優位といえど、圧倒的にではない。逆に夜になれば闇属性に勝るものは一つとして無い。どういうことかというのはそうだな…また今度話そう。それで僕が君のおかげと言ったのはだね、僕には、魔力がほとんど無いんだ。」
「は?じゃあ、どうやってさっきの魔法を使ったんだ。」
「僕は魔力がほとんど無い。その代わり、僕は周囲30メートル以内にいる相手から魔力を吸収できるという特異体質なんだよ。」
「んじゃ、さっきの魔法は俺から取っていたのか。」
「そうだね。すまないが、詳しくはそのうち話すよ。僕は少し疲れて眠いんだ。悪いが運んでくれないか?」
バタッ。
は?コイツは何を考えている。私に運べと。なるほど。悪いが俺には運んでやる優しさは無いので、先に家に帰るとしよう。