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翼のない俺達に幸せの粉を!!  作者: まろ爺
3章 あなたがいる理由
18/19

17話 オレンジ

17話です





「エルシオとはどんな関係? さっきエルシオさんとか言ってたけど」


「僕が天界騎士団に入りたての頃、お世話になった先輩。と言った感じですね」


へぇ、と返事をするエフィルロは目の前の鍋に夢中のようだ。

その後、シルエトも質問をエフィルロに投げかける。


「一体何故こんな所で仕事を? と言うかそもそも、何故今更幸せ配りなんてしてるんです? 粉を持つ天使なんて、あなたぐらいしかいないでしょうに」


鍋にはあまり手をつけず、エフィルロの目を見て話すエルシオ。



「ここは安全だからよ。楓をあなたみたいのから守るには最適なの」


「だから! 僕は何もしないって言ってるじゃないですか! ま、まあ、僕以外だったら……あ、あと、もう少し聞きたいことが…」


シルエトが質問しようとした時、エフィルロは白菜を小皿にのせつつ、


「なんで楓をここに連れてきたか、あと、なんで楓は0ポイントなのか……でしょ?」


「そうそう! そういう事!」


エフィルロの方へ人差し指を向け、興奮気味にそう答えるシルエト。


「楓がここにいるのも、楓が0ポイントなのも、あの人との約束を守るため」


「あの人って言うのは?」


既に興奮状態から冷めたシルエトは、エフィルロに向けて質問を重ねていく。


「あの人とは、天界戦争。つまり、天使と悪魔との戦争の時、偶然出会ったの」


悲しみを表情に隠しきれないエフィルロは、顔を伏せてそう答えた。


「天界戦争……まだ僕が生まれていない頃の事ですね」









ーーーーーー天界戦争。それは、


『天使』と『悪魔』の戦争。




当時、天界と地獄にはそれぞれ、天使と悪魔が住んでいた。


天界では、天使達が幸せな日常を送っていた。

街で商人としてお金を稼ぐものも居れば、天界の中心コハクリアで、死者の面接をする者や、そこから人間界にゲートを開き、それぞれの天使が持つ、『幸せの粉』を使い、人間達に幸せを配っている者も居た。


一方、地獄で暮らす悪魔の仕事。それは、天界での面接の際、マイナスポイントだった人間を地獄で労働者として働かせ、十分に労働させたところで罪を償ったとみなし、天界に返すという仕事であった。

人を殺めた者だけが地獄へ送られる。それは、天界と地獄で決められたルールであり、水晶に手をかざし、マイナスポイントだった場合は、言葉を残す暇もないほど即座にゲートが開かれ、闇の中に吸い込まれていく。


悪魔の仕事はそれだけで、暇をしている悪魔も多く、治安も悪かった。

労働させるはずの人間を見せ物にしてお金を稼ぐ者や、ストレス解消のため、数人で一人の人間を囲い込む者達も居た。


そんな悪魔達の中に、不満が芽生え始める。




ーーーーーー人間が足りない……と。




どうすれば人間がもっと増えるか、悪魔達が出した考えは、酷く残酷なものだった。



天界を襲い、天界を乗っ取り、死んだ人間を支配すればいいと考えたのだ。



悪魔達は天界を襲った。天使達も抵抗を見せ、その後、武力での戦争へと持ち込まれていった。


天使の方が優勢で、終わりへと近づいたはずだった天界戦争。

しかし、その戦争は悪魔達の行動によって形勢が逆転する。

悪魔達は最終手段として、攫ってきた天使との子供を無理やり作り、ハーフを誕生させ、悪魔軍として天界を襲わせるという悍ましい1手をさしたのだ。


その結果、悪魔と天使の子は天使の姿をしているという事もあり、悪魔達は簡単に天界を内側から崩壊させる事に成功してしまった。


そして、悪魔と天使の子は、天使の姿から悪魔の姿に変化する際現れる強力な魔力を身にまとい、天使達を脅かした。


その変化を、『真天使化』と呼ぶ。


真天使化することによって得られる力は強大であり、天使達の攻防にも限界があった。


それから暫く経ち、もう既に悪魔達は天界に住処を移し、ほとんどの天使は皆殺しされた天界では、戦争で減ってしまった悪魔が絶滅の危機に晒され、数が増えていく天使の血を受け継いだ悪魔、見た目は天使の『半天使』が亡くなった人間達を天界で支配していた。


亡くなって天界に送り込まれた人間に労働させ、その人間達は3年経てば消滅していく。

死んだ人間の辿る道はそれだけで、生まれ変わる事など無かった。


戦前の地獄のような生活を天界で繰り広げていたハーフ達だったが、天界をまとめる『王』を決める選挙が行われ、その選挙で勝ち上がった一人の『王』の提案で、戦前の天界のような明るい生活を取り戻す政策が行われ始めた。


その王は、面接の仕事を再開させ、マイナスポイント以外の人間は適した生物に生まれ変わらせるよう法を定めた。

マイナスポイントの人間は、もう悪魔が住むことのない空っぽの地獄に送られた。

送られた人間達は、何故か正体不明の生き物。通称『死神』となり、天界の半天使達を襲うと言う自体が起きている。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





「そしてその後、天使の血が混ざった悪魔だけが生き残り、死神に怯えながら半天使達は天界で暮らしている。と。

天界戦争の事は、今まで公にはされず、時代が変わるにつれて天界の住人の記憶から消えていきました。

つい最近、死神が多くなってきたことから、王が天界騎士団達に戦争のことをお話になられ、悪魔が生き残っているのではないか調査をする事態になるまでは、僕だってその戦争のことは知らなかったんです。それを知っているとは、流石『純天使』と言った所ですね」


そうね。と頷くエフィルロは、デザートのブリーンを口に運ぶ。


「まあ、あなたが言うあの人のことや、何故あなたは生き残れたのかなどを追求するつもりはもうないのでご心配なく。そもそも話す気は無いでしょうから。

あ、そう言えばその壺、戦前まで天使の仕事だった幸せ配りに使う物ですよね?」


「そうよ。もう持ってるのは私ぐらいじゃないかしら?」


もう既に、その粉は天界のどこにもない。

ローズベルクと言う、エフィルロが魔法で作り出したこの部屋にしかないのだ。

粉を持つことが出来るのは、『純天使』のみ。

エフィルロはそれを持っている。つまり、それは、エフィルロが『純天使』だということを意味する。


「もう一つ質問しても?」


どうぞ、そうデザートを食べ終わりお腹を擦りながら寝転がったエフィルロは、天井を見上げながらシルエトからの質問を待つ。


「あなた、何年ここに?」


「女性に年齢が分かるような質問はNGだと思うけど?」


目が笑っていないエフィルロを見て恐る恐る目をそらすシルエトはごめんなさいと一言据える。


「エルシオさんに宜しくお伝えください。 シルエトが来たよと。 あ、あとかえちゃんにも、ありがとうと、伝えてください」


「わかったわ。 じゃあ、また会えたら」


ゲートを開いたシルエトは、エフィルロひとりを残し闇の中へ消えていった。

残されたエフィルロは食べ終わった鍋を見てゾッとする。


「全部…… 。ひとりで食べちゃった……」


膨れたお腹を触りながら、エフィルロは涙目でそう呟いた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「お前さんたちなかなかやるのお。 少しは見直したで」



「あぁ、そいつはどうも。 それより、俺の手に付いてた黒いもやもやについての話を聞きたいんだけども」



楓によって知能の高い死神を倒し、エルシオとじっちゃんは全ての雑魚を倒し終え、その後、疲れただろうとじっちゃんの家に上がらせてもらっていた楓とエルシオ。

四方が高い棚に囲まれており、その棚の中には、難しそうな本が大量に並んでいた。

オレンジ色の照明に照らされたその部屋は、どこか暖かく、落ち着いていた。



「あれは魔力や」



星域のじっちゃんは、魔力の事を楓に話した。

楓には魔力がないこと。そのお陰で、この世界では攻撃が強くなることなどを聞いた楓は、あまり驚いた様子もなく、出されたお茶のようなものを飲んでいた。


「この世界に来てから、驚くようなことがおおくてさ。 もうちょっとの事じゃ驚かなく……ブフォ!! え? 俺まさかこの世界で最強的な!?」


後半、急に興奮しだした楓は、飲んでいたお茶を吹き出しじっちゃんに問う。


「最強とまではいかんじゃろ。 わしには勝てんだろうからなぁ」


「まぁ、そうだよなあ……いきなり天界最強とか言われても、なんか気が重いし」


「いえ! 楓くんは知能の高い死神を一撃で撃破したんですよ? あ、いえ、立ち上がった死神にとどめを刺したのは私ですが」


「何が一撃で撃破だよ! 結局いい所持ってったのはお前じゃねーか!」


まあまあ、と鼻を高くして言いのけるエルシオを蹴っ飛ばしたい気持ちにはなった楓だが、それは抑えて、じっちゃんに聞きたかった本題を思い出す。



「なんでも知ってるって聞いたけどさ、記憶を消すことが出来る魔法って知ってるか?」


突然の路線の外れた質問に、驚く様に口を開けた後、少しにやけながら視線をこちらに向けてくる。


「なんとなく、そんな事だろうと思っとったわい」


「な! 何か知ってんのか!? 知ってるなら、教えてくれ!」


「そもそも、この世界に人間がいる事がおかしいってのは、お前さんでも分かるな?」



「あぁ。もちろんだ。俺はここに来た時、前代未聞の0ポイントをたたき出し、ここに残ることになったからな」



「その0ポイントじゃが、そんなポイントを持つ人間は存在するはずがないんや。人間を殺した人間だけが地獄に行き、人間を殺したことのない人間は皆、1ポイント以上のポイントは持っておる。それは確実で、古くから決められたルールのようなもんや。人間を殺す以外の、どんな悪い事をしたとしてマイナスポイントを稼いだとしても、最終的にはプラスになるんや。

じゃから、0ポイントなんて人間はあっちにもこっちにも存在しないんや」


「じゃ、じゃあ俺は! 俺はなんで0ポイントなんだよ!?」


状況が把握出来ず、椅子から立ち上がり、少し怒鳴り気味に言葉を放った楓だが、じっちゃんの落ち着いた表情を見て、静かに椅子に座る。


「簡単な話じゃ。お前さんはポイントを書き換えられた。そして、記憶も消された。違うかあ?」


的に当たりすぎているその回答を聞き、楓は机に手を置き立ち上がると前のめりになり


「そんな! そんな魔法誰が使えるんだ!? そいつのところに行けば、父さんの記憶も取り戻せるのか!?」





「もう、そんな魔法使える天使はこの世におらん」






前のめりになり興奮気味だった楓だが、じっちゃんの言葉を聞くなり肩の力が抜け、ストンと椅子に腰掛けた。


「そんな……じゃあ、記憶を消した天使はもう天界にはいない。という事なのですか??」


目から光を失い、俯き黙る楓を見て、エルシオが代わりに質問をぶつける。


「あぁ。そんな魔法使える天使は、今から数百年前に絶滅した『純天使』だけじゃ」


聞いたこともないフレーズに、エルシオは固まる。



「その『純天使』って奴は、もう本当に生き残ってないのか? もし生き残りがいるなら、相当数が絞れるはずだ!」


「わしが知っとるのは1人だけじゃな」


「誰だ……、そいつは誰なんだ」


少し間を開け、そっと口を開いたじっちゃん。

オレンジ色の照明に照らされながら、じっちゃんはゆっくりと答えた。


「今の天界の王、『アルガイヤ』だけじゃ」


ほのかに揺れた照明が、楓達をオレンジ色に照らしつけた。



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