プロローグ
『幸せ』
この世界は、一生懸命努力したものだけが『幸せ』を掴みとり、『幸せ』に生きることが出来る。
辛く険しい道を進んだ先こそが、『幸せ』に繋がるのだ。
・・・・・・なんて、そんなのは嘘っぱちだ。
努力してなくても金持ちで、努力してなくても運がいい。辛く険しい道を進まなくたって彼女がいて、一生懸命勉強してなくても頭がいい。日頃の行いが悪くても、チヤホヤされ、楽しそうに生きている。
そんな奴、そこらじゅうにいるじゃないか。
人間はそもそも不公平だ。
この理不尽な世の中に気に入られた人間だけがのし上がり、『幸せ』 を手にする。
努力したって気に入られなきゃ意味が無い。
年を重ねる度に減っていく自由は、自分自身の『幸せ』を削り、世の中の常識に飲み込まれる。
当たり前だ。
それがこの世界のルール。
頑張ったって、『幸せ』になんかなれない。
そりゃあそうだろうな・・・・・・
決まってんだから、最初から。
生まれる前からずっとだ。
『幸せ』の量なんて、死んだらすぐに決まんだよ。
次の為に・・・・・・な。
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朝が来た。
俺はいつも通り制服に着替え、玄関の扉を開けた。
「行ってきます」
そう、一声後ろに立つ女性に声をかけると、返事を待つことなく俺は足を踏み出した。
微かに聞こえる「行ってらっしゃい」の声は、俺の意識に入ることはなく、ドアの音でかき消された。
そして、いつも通りの登校が始まるのだった。
まだ暑い夏の朝。駅まで歩くその道のりが、苦痛で苦痛で仕方なかった。
リュックと背中の間には、滝のように汗が流れ、首にかけたタオルで額を拭うも、次々と零れる汗は止まろうとしない。
こんな思いをして、何故俺は学校になんて向かうのか。
行ったって、何も良いことなんかないのに。
俺の視線の先で、一人の少女が歩いている。
「あぁ・・・・・・あんな小さい頃に戻りたいな」
ただただ何も考えずひたすら遊び、
やりたい事を好きなだけ見つけ、好きなだけ実行し、
世の中のいい所だけを直視できるそんな時代が、俺にもあったんだよなぁ・・・・・・
「はぁ・・・・・・ん?」
「危ない・・・・・・!!」
ーーーーーーーーーーーー何やってんだ? 俺。
踏み込んだその足は、あの時後ろに立っていた女性の事を思い出させた。
ーーーーーーーーーーーーごめん。母さん。
『翼のない俺達に幸せの粉を!!』




