第5回 パラメーター考察(3) 読了率(読者が最後まで読む確率)と評価衝動率(読了者が作品を評価する確率)
2 被評価率
2-(1) 読了率
本項目では、小説のリンクを踏んで訪問した読者が作品を最後まで読み切る確率のことを「読了率」と定義します。
2-(1)-a 文章力
文字数が短ければ、それだけ場面ごとに使える単語数が限られるため、表現力が制限されます。さらに掲載媒体(「小説家になろう」か、他の小説投稿サイトか、紙媒体か)やジャンルによって、読者層に合わせた文体が求められます。例えば、ひらがなの多い文は童話では歓迎されますが、西洋ファンタジーで「えくすかりばー」などと使われたら読者は幻滅するでしょう。
文字の種類、句読点の割合、名詞、動詞、形容詞、形容動詞の割合、特定の助詞の使用率など、考え得る分類を試してみると良いのではないかと思われます。もっとも、文章を分節に分けて解析しようという試みは既に言語学(?)の分野で行われていたはずなので、その知見・解析ソフトを利用するのも手でしょう。
2-(1)-b ストーリー
文字数によって展開できる場面の数が制限されます。さらに可能な限り場面を詰め込めば良いものでもありません。恐らく、読了率が最も高くなる「一場面当たりの最適文字数」があるはずです。恐らくはこれが「テンポよく読める」の正体であろうと思われます。
場面については、プロップの31の機能分類を参考にして各機能で区切るのが一つの方法ではないかと考えています。自動化は難しいですが。
プロップの31の機能分類は、昔話の場面が持つ機能を細分化したものです。例えば、主人公は寄与者(賢者とか)から魔法や力を授かる、とか。しかしこれは昔話に限ったものではなく、「スターウォーズ」で言えばルークがオビ=ワンからライトセーバーを貰う場面であり、「コードギアス」で言えばルルーシュがCCからギアスを授かる場面であり、「ちはやふる」で言えば千早が新から百人一首を教わる場面(多分)にあたります。他にも要素はありますが、詳しい内容はwikiその他に譲ります。
とにかくこのプロップの31の機能分類によって、場面分けできない場面がいくつか出たとしても、おおよその場面分けは可能になると思われます。ここまででも大変な作業ですが、さらに「一場面あたりの最適文字数」を数値化するためには、その各場面が要求する最適文字数を統計的に割り出す必要があります。
いくつかの作品からある特定の機能を果たす場面を抽出し、その場面当たりの文字数を計測し、それに対して該当作品の総合評価ポイントをプロットする、というのが現状で可能な方法かと思われますが、明瞭な関係性が得られるかは不透明です。
実験的に数値化するなら、同じストーリー、つまり同じ場面展開の短編を、ある場面だけ文字数を変えて投稿する方法も考えられます。「桃太郎」を例にすれば、鬼を退治する場面だけ文字数を変えて、他の場面は同じ文字数の作品を用意する、ということです。しかし十分に信頼できるデータになるのか分かりませんし、露骨に実験的な投稿をしてしまうと読者に対する道義的な問題も生まれます(個々の作品が十分に作品として成立していればいいのですが)。
2-(2) 評価衝動率
本項目では、作品を読了した人が作品に評価を入れる確率を「評価衝動率」と定義します。
2-(2)-a 小説種別
未検証ではありますが、短編か、連載か、完結済みかによって、評価のされやすさに違いがある可能性があります。例えば、連載の場合は継続的に読みたい読者が多いため、ブクマによる評価の増加が多いかもしれません。また連載中の作品に評価を入れて応援する、という人もいれば、連載は完結するまでは絶対に評価しない、という人もいるでしょう。
このパラメーターは、場合分けをして分析・比較すれば、(労力はかかりますが)容易に設定できるでしょう。
2-(2)-b 読者層
評価衝動率は、読者のタイプによっても変わると予想されます。
まずブクマしている読者や頻繁に交流する相手の場合、作品に評価を入れる確率は高いと思われます。
しかし新着から流入した読者の場合、一番初めの評価者になる場合が多く、読者は評価しづらいのではないでしょうか。
これとは逆に、ランキングから流入した読者は、作品が既に評価されているので、便乗して評価しやすいと思われます。
また「なろう」の検索から流入した場合は、読みたい条件に該当する作品を探していることから考えると、評価は入りやすいかもしれません。
ちなみに、意外と外部のグーグル検索などから流入する場合もあるようです。
少し本題からずれますが、実体験を二つほど紹介します。
拙作「青いサンタクロース」は実在する青いサンタクロースから着想したのですが、投稿から数年後にネットニュースで実物の青いサンタクロースが取り上げられた際にアクセス数が増加しました。
また拙作「誰かに自慢したくなる生物学! 第1弾『コラーゲンは食べても大して意味無いって知ってた?』」は、コラーゲンの美容効果に関するエッセイなのですが、どうもコラーゲンの有効性に関するグーグル検索で割と上位に入るようで、毎日一定のアクセス数があります。
しかしこうした外部から訪問した読者が評価を残してくれるかというと、そんなことは全くありませんでした。「なろう」にログインしなければ評価できませんから、当たり前の話です。
ただし例外も考えられます。例えば「面白いWeb小説」などのキーワードでグーグルの検索結果の上位に入る場合は、その読者の中に「なろう」の登録者が多く含まれていると予想されるので、むしろランキング上位に入っているのと同等の効果があるかもしれません。
こうしたタイプの違う読者ごとの評価衝動率の数値化は、それぞれの場合ごとにアクセス数を実測してみるのが良いと思われます。ブクマや交流のある作家さんと共謀して、ある作品を投稿した直後の新着に掲載されている間は、新着から来た人だけが評価する時間帯を作り、ランキングに掲載された以後はランキングからの読者からだとすればいいと思われます。ブクマや交流のある作家さんからの評価は、アンケートをとるなどして、実際にどう評価しているか直接聞いてみてもいいかもしれません。
さて、ここまでで一通り自分勝手に考察を述べさせて頂きました。明らかな間違いなどがあれば、随時訂正していきます。次回からしばらくは訂正回になるだろうと覚悟しております。
およそ方針が固まった段階で、分析に移ろうと思います。本来なら全てのパラメーターを検討すべきところですが、筆者の解析能力・時間の限界を大きく越えております。
そこで以前述べたように、まずはいくつかの重要なパラメーターだけで簡易的な評価予測式が作れるか、試験的に検証してみようと思います。
あくまでもテストなので、およそ大きな間違いが無さそうな数値が得られれば良しとすることにします。その数値で計算してみて、総合評価ポイントの最大値の分布が実際のものに近かったら、ひとまずは成功と言っていいのではないでしょうか。
このテストで得たいパラメーターを、以下に示します。
*アクセス数
・露出数:リンクが目に触れる数
新着入りの効果
ランキング入り
・魅力度:リンクが踏まれる確率
ジャンル
読了時間
獲得済み評価・ブクマ数・感想数・レビュー数
*被評価率
・読了率
文章力
ストーリー
・評価衝動率
読者層(ブクマしている読者、頻繁に交流する相手の場合)
以上のものが仮決定できたら、次回あたりで報告させて頂きます。
それでは、また。