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花嫁は狐と幼馴染み

作者: 爆弾蛙

「相変わらず長いね〜、この階段」

僕の幼なじみで彼女の古山紅葉こやまもみじが、疲れながらも健気な笑顔を見せながら振り向く。

小さな体に似合い過ぎるほど長い、赤い色の髪を、夏の木漏れ日に光らせながらなびかせるその姿は、まるで小さな天使舞い降りたようだ。


・・・


いかん、軽く現実逃避をしてしまった。

今、僕らは、紅葉が言うように長い階段を昇っている。

この階段は、狐禮こらい神社へと続いており、僕らはそこに用があるのだ。


僕らが、狐禮神社に行くコトになったのには理由がある。


それは・・・最近、異常なまでに僕の運が悪いからだ。

しかも、僕の親友で、自称霊視能力者(霊が見えるだけと言っていた)の日出川源太ひじかわげんたが、

「おい、親友。どこでこんなヒドいモノ憑けて来た。こりゃ相当悪いモノだぞ」

と言いやがってくれたのだ。

そして、それを聞いた紅葉が、

「狐禮神社で祓ってもらおう。狐禮神社に行こ。」

で、今にいたると言うわけなのです。


「と〜ちゃく!あっ神主さんだ。先行ってお願いしてくるね。それと、口の目覚ましパイポは外しといてね。神主さんに失礼だよ」

先に階段を昇りきった紅葉が、めっ!と可愛く注意をして走っていく。

言葉通り神主さんの所に行ったのだろう。

僕も口の目覚ましパイポ(以下パイポ)をしまい。紅葉のあとを追った。


境内に入ると、交渉が成功したのか、紅葉が小さな体で大きくアピールしながら僕を呼んでいるがわかった。

「こっちだよぉ!神主さんやってくれるってぇ!」

紅葉はアピールだけでは飽きたらず、僕の下に駆け寄って、服を引っ張り出した。

まるでハシャぐ子供のようだが、本人はいたってマジメ、だから茶化すようなコトはしない。

でも可愛いというコトだけは認めざるえないと思う。


神主さんはとてもマジメそうでいて、体中から優しさがにじみ出ているようなイメージの人だ。

「はじめまして」

若い僕にも礼儀正しく接する神主さんは、第一印象そのままの人だと、今、確信した。

信頼できそうだ。

「では早速。どんな悪りょりょりょりょりょりょぉおお???!? き、き、君がそうななんだね!? 少し付いてきてくれないか。合わせたい方がいる」

??

突然、動揺しまくりの神主さん。

僕らは神主さんの言われるがままに付いて行き、神殿の前で待たされるコトになった。

紅葉が不安げに見つめて来るので、頭をナデてあげると、はにかみつつ神殿の方を向き直した。


しばらくすると神主さんは神殿から二人の女性を連れて現れた。

二人のうち一人は、艶やかな真っ白い髪を持ち、その出で立ちは、日本美人を彷彿させる美人で、もう一人は、輝くように綺麗な金髪で、適度に着物を着崩し、妖艶な色気が漂う美人だ。

二人の顔はそっくりで双子のようだ。

神主さんの言う合わせたい方って言うのはこの人達のことなのだろうか。


金髪美女が軽やかな足取りで僕に近付き、足の先から頭のてっぺんまでをマジマジと見てきた。

「なんかさえないわね〜。平凡を極めましたって感じね。あの娘は、なんでこんな子を選んだのかしら。葛葉くずはもそう思うでしょ」

ヒドい言われよう・・・

「そうかしら」

そこに葛葉という名前らしい白髪の美女がやって来た。

「ワタクシはあの娘らしいと思いますわ。だって可愛らしい顔してるじゃない。それに優しそうでもあるわ。玉藻たまも、アナタは少々厳しすぎるわ」

こっちの人は褒めすぎの気がする。

にしても、この人達は一体なんなんだ。

「あっあの、葛葉様、玉藻様。自己紹介も兼ねて本題に進まれたらいかがですか?」

神主さんがおずおずと二人に申し出る。

おずおずの割に何気に凄い気がする。

「それもそうね」

気にしない様子だ。

まず、金髪美女が前に出て、

「私は、初代玉藻よ。よろしく」

次に白髪美女がすっと前に出て一礼、そして、

「ワタクシが、初代葛葉ですわ。そして」

白髪美女の葛葉さんが僕の後ろを指差す。

「この娘が本題。いらっしゃい玉葛たまか

金髪美女の玉藻さんが呼び掛ける。

僕が振り返るとソコには木の葉が渦巻いていた。

そして、木の葉がはじけると、僕の腹部に衝撃。僕はそのまま倒れる。


僕の上には一人の少女がいた。

細い狐目だが、整った顔をしており美少女と言っても差し支えが無いぐらいだ。

髪は艶のある白髪だが、輝く金髪のメッシュが入っている。

耳の辺りは切りそろえられた髪で隠れているが、頭に獣の耳のように髪が立っている、いやコレが耳なのか!?

後ろ髪は長く一つにまとめられているが、その髪は狐の尻尾のような形をしている。

少女と目が合う。

少女はニコっと満面の笑顔を見せると口を開いた。

「ワラワは玉葛。お前が安森晴信やすもりはるのぶだな? さっ結婚するぞ」

何ですとぉ〜!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三年後


あのバカみたいな出会いから三年、僕は19歳になった。

アレから色々な事件に巻き込まれた。

主に紅葉と玉葛の喧嘩の仲裁だった気がするけど。

それに、これからがもっと大変なのだろう。なんせ僕ら三人まとめて結婚なのだから。


今、僕の横には、それぞれ純白のドレスで着飾った紅葉と玉葛が座っている。

僕らはいわゆる重婚ってのをする事にした。

紅葉と玉葛が押し切る形で、だが。


ツンツンと左側の袖が引っ張られる。

ソコには結婚を機に初代玉葛になった玉葛が座っている。

玉葛は申し訳なさそうな顔で話しだした。

「晴信、まだ謝って無いと思ったから謝るな。すまぬ。いくら狐禮神社に呼ぶためとはいえ、晴信に悪霊を憑けるだなんて・・・すまぬ」

まだ気にしていたのか。

僕は気にしてないと言わんばかりに微笑んでやった。

玉葛の表情も、一気にいつものように明るく元気なモノへと変わった。

そこに反対側に座る紅葉が割り込んだ。

「やっぱりあんたが犯人だったのね。この玉クズ! ハル、やっぱり、ふ・た・りで幸せになりましょ」

右腕にくっ付く紅葉。

「あっ紅葉。今のクズってゴミクズって意味で使ったな。ふん、晴信は、ワラワと二人で幸せになるものなぁ」

玉葛も負けじとくっ付く。

正直暑苦しい。


言い争っている二人をほっといて会場の方へと目線を変えてみると、まず、最初に目が付くのが、僕ら三人の父親達。

酒を仲良く酌み交わしている。

次に気になるのは、やはり僕ら三人の母親達。

孫が楽しみねぇなどと姦しくしている。


「「姉御〜ぉめでとぉざいまぁ〜す」」

「アナタ達、静かに食べてなさい」

「うす」

紅葉を姉御と呼び、騒ぐこの一団、コイツ等は、紅葉が仕切っていた不良武闘派集団“愚恋無輪グレムリン”の代表幹部達だ。

皆、社会のつまみ者達だが、慣れれば良い奴らでもある。


「たぁまぁかぁちゃぁ〜ん。おめでとぉぉ」

「うむ。ありがと。でも、静かにしてろよ」

「はぁぁい」

玉葛にデレデレのこの一団、コイツ等は過激派ファンクラブの“玉葛大好きクラブ(略して“TLC”)”の代表幹部達だ。

何度となく僕の命を狙い、何度となく愚恋無輪と衝突してきた妖怪集団だが、このたび、和解に成功し、招いたのだ。

・・・和解したよね・・・なんだろ、この殺気・・・


僕がそれとなく感じる殺気に脅えていると一人の青年がやって来た。

よく見ると、もう一人少女が付いてきている。えぇっと、天狐と空狐だ。

最近、襲名したとかで名前が変わったとかで、ややこしいったらありゃしないよ。

二人とは玉葛を通して知り合った仲だ。

「ふん。一応、おめでとうの言葉は贈ってやる」

「天狐さん、ダメですよ。ちゃんと心から言わないと。晴さん、おめでとうございます。」

「最後の皮肉だよ、空狐。ちゃんと心から祝ってはいるよ」

天狐は初め、苦々しい表情だったが、空狐に注意をされると、ばつの悪そうな表情をし、慌てて訂正した。

そんな彼らに言葉をかけようと、口を開こうとすると天狐が手を突き出し、

「何も言うな。言わんとしてるコトは分かってる。襲名してから会ってないからな」

「そうですね。基本的に事後報告ですし、襲名披露宴なんてありませんからね。」

あははと笑う二人。

「改めて報告するよ。このたび、第49代目“天狐”を襲名いたしました。よろしくお願いいたします」

「アタシも。このたび、第49代目“空狐”を襲名いたしました。よろしくお願いいたします。晴さん」

頭を下げる相手に、僕も頭を下げようとしたとき、机の上に乗った玉葛に邪魔された。

何してんだよ。行儀悪い。

「えぇっと、天狐と空狐でよかったよな」

やっぱり、玉葛もややこしいよな。

「すまぬな。うちのバカな両親が急に隠居するとか言い出して・・・」

「あはは、いいってコレぐらい。」「そうですよ。この名前のおかげで、それなりに権力が手に入りましたから」

顔が赤いぞ、天狐。

こら! 何、なにげに笑顔で腹黒発言してるんだ、空狐。隠すって約束はどうした。


その後二人は仲良く寄り添って自分達の席に戻っていった。

上手くいっているようだ、あの二人も。


その後、ただの宴会と成り下がった会場を僕は抜け出し、僕は屋上から月を見ていた。

月は丸く、キレイに輝きながら空に浮いていた。僕は月が好きだ。

その常に形が変わり、いつ見ても飽きさせない。それでいて、決まった形があり、安心感がある。

僕はそんな月が好きなんだ。


「ヤッパリここでパイポ吸ってるよ」

悪いか?

振り向くとソコには幼馴染みの紅葉がいた。

「結婚・・・ついにしちゃったね」

嫌なのか?

「夢に見てたことが実現化しちゃっよ」

僕の隣に立ち、同じく月を眺める紅葉。

「あっ、でも、余計なのがいるけど」

それは玉葛のコトか?

と聞こうとしたとき、後ろで、小さく空気のはじける音が聞こえ、背中に激痛がはしり、

「晴信ぅ、ワラワを置いてくなんて・・・ワラワ、寂しいぞ」

僕の背中に、のの字を書きながら甘える玉葛の頭の中には、メロドラマ並みに甘い展開が用意されてるだろうが、ふざけるな!

背中の激痛で、呼吸するのがやっとの僕には、そんな余裕はない。

「こら!玉クズ、何してるのよ」

「むっ、紅葉こそ抜け駆けはズルいぞ」

「残念、私はハルのお嫁さんだもん。そばにいて当たり前よ」

「そうさな、妻は夫のそばにいるモノだからな。よし、ワラワも一緒にいなくてわいかんな」

また、ケンカか・・・

あきない奴らだよ。

「そうね」

「あぁ、そうだとも」

「「第一、妾の一人ぐらい許してあげられなくて、本妻がつとまりますかってね」」

息の合う二人。

息のあったコトを喜ぶ二人。

そして、

「何を〜妖怪のクセに、アンタが妖怪だから結婚を許してあげたのよ。ありがたく思いなさい」

「うぬぬ、人間のクセに、オマエが人間だから結婚を許してあげてるのだ。ありがたく思えよ。」

「何を・・・」

「うぬぬ・・・」

二人して同じようなコトを言い、またケンカを始める。

ホントにもうこりないヤツらで、どうしようも無いヤツらだ。

でも僕は、彼女ら二人をどうしようもないぐらい好きな、どうしようもないヤツなんだと思う。

だって、二人のケンカを見ているのキライじゃないし、むしろ楽しいぐらいだ。

それに、二人を見ているとギュッと抱きしめたくなる。

「ハルどうしたの? ニヤニヤして。もしかして私にホレ直した?」

「晴信どうした? だらしない顔をして。もしかしてワラワにホレ直したか?」

二人同時に同じコトを聞いてくる。

だから、僕は二人に向けて、

「あぁ」

と短く返事を返した。

そして二人は、

「ちょ、ちょ、ハルぅ」

「晴信、それ反則だぞ」

顔を真っ赤にして、かなり慌てていた。

ホント、二人は可愛い。

「ハル」

「晴信」

ん?

「「だぁぁいすき」」

僕もだよ。


HAPPY END


だよな、コレ。


また短編書いてみました。


どうも爆弾蛙です。

読んでくださりありがとございます。


この物語は友人との会話の中で見つけたネタです。


玉葛は、妖狐玉藻、妖狐葛の葉を足したようなイメージ。


紅葉は、とりあえずのちっさい元気っ娘。


晴信は・・・いつの間にかあんな感じに・・・


ホント読んでいただきありがとございます

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― 新着の感想 ―
[一言] これは短編ぢゃないとおもしろそうだなぁ3年間のあいだとかを描いてほしい
[一言] 読み終わったあとに強烈な物足りなさを感じました。短編ではなく長編での設定のようなので、大きなスケールの話に育ててください。期待しています。
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