木っと世界は
木、というのは上にいくほど枝が別れていき、その枝が交わることはない。
僕達の世界もそうで、今は1本の幹でも、そのうち別れる。選択するごとに枝は複雑になるけど、他の枝に飛び移る事は出来ないのだ。
「やぁ、そこの僕?」
向こうの枝から、向こうの僕が話しかける。多分あのとき僕がああしていたら、僕はあそこにいたのだろう。
「やぁ、そっちはどうだい?」
「こっちは大変だよ。そっちも大変そうだね」
「あぁ。まぁ、そうだな」
向こうの僕が羨ましいと思う反面、別に今のままでもいいやとも思う。嫉妬しようにも、僕なのだから。
そんな僕の前に、また枝分かれが現れる。生まれてこの選択を何回したのだろう。選択を間違えて、木から落ちた僕もいたし。突然、ぐんぐん成長した僕もいた。
「そこの僕?どっちに行くべきかな?」
僕は向こうの僕に聞く。向こうの僕は少し考えたあとに、「右かな」と答えた。
僕は左が良いと思う。でも、向こうの僕は右と言う。同じ僕のはずなのに、答えが変わる。多分、向こうに行っていたら、僕も右がいいと思ったのだろう。
「まぁ、好きにすれば?君は、君。同じ僕でも考えは違う」
「経験こそ、人間の思考か。そうだな、左にいくよ」
「それがいい」
僕は左に進んだ。それと同時にもう一人の僕が現れて、右に進んだ。
「君はどういう僕になるんだい?」
「さぁ?それは僕次第だ」
右に行った僕と会話をしながら、先へと進む。どちらの僕が正解なのだろうか?それは進んでみないと分からない。