崖にある看板
「あの世にGO!GO!レッツGO!」
そう書かれた看板が、とある崖には立てかけられていた。不謹慎な看板、不思議なことにその看板は撤去されずにそこにあり続ける。誰も気づかないのではなく、誰も撤去しようとしないのだ。
「あの世とこの世どっちが好きですか?」
その看板を無視して、もう少し崖に近づくと今度は別の看板が見える。これまた、不謹慎だ。
「ーー貴方が最後に見る看板ーー」
そして、崖の先。3歩足を延ばし歩こうものならあの世に行ってしまうかのような崖のギリギリの所に、最後の看板が置いてある。ここまで来て、これを見るこんな下らない看板を最後に見るのかと思ってしまう。
別にこの崖から見える景色は綺麗でも何でもないただの崖だ。こんな所で死ぬ馬鹿が何処にいるんだ。
私は元来た道を引き返す。別に自殺をしに来た分けではない。ただ、この少し気になっただけだ。
自殺者が出ない自殺の名所としてここは有名な崖だ。年間300人は飛び込みに来るらしい。しかし、死人は0。行方不明者も0。みんな生きて帰ってくるのだから不思議だ。
しかし、私が家帰る途中でその疑問は直ぐに解決される。
「あの人、あの崖に自殺しに行っていたんじゃないの?」
そう、ひそひそ話をされていることに気がついた。