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間章一

 過去には人間五〇年と言われた人生だが、今では七〇、八〇と生きることが当たり前となった。それだけ長い一生であれば、誰しも他者に憎悪したことがあるだろう。

 小うるさい両親、後に生まれたというだけで優遇される弟や妹、相性の悪い学校の教師や会社の上司など。とかく人間関係とはストレスと隣り合わせである。

 しかしながら――他者に不快感や怒りを覚えたことはあっても、“殺意”を感じる場面というのは少ないのではないだろうか。それも、真剣に対象を殺害せねばと思い悩むようなレベルのものとなると、普通に生きる人間であれば滅多にあるものではない。

 そんな尋常ならぬ殺意に、※※は悩んでいた。

 それを抱いた理由は、※※のように“選ばれた人間”にしか理解できないものである。

 なんにしても、※※は奴を始末せねばならない。そうしなければ、気がすまないのだ。

 然れども、そのようなことをしては警察に捕まってしまう。大昔ならばまだしも、今のご時世、完全犯罪などほぼ不可能である。己の権力を使い罪をもみ消そうにも、ドラマや映画の世界とは違い、現実においてそれは叶わぬこと。日本の警察はそういった力に屈することがない。

 だから、きっと自分はいつまで経っても奴を殺せないのだろう。そうして、沈んでいくのだ。奴が登り詰める様を、まざまざと見せつけられながら。

 諦念を噛み締めながら過ごす日々。その苦々しさを隠しながらの毎日。奴を始末したいと思い始めてから五年。五年、それが続いた。

 そう、過去形である。

 あの日、奴を始末する少し前、※※は、アレに出会った。それにより、※※は力を得た。

 己が欲する力を。

 これで、もはや遠慮することはない。耐え忍ぶ日々は終わりだ。これからは、好きに動く。好きに殺す。

 

 そうすれば、きっと自分の願いは果たされるのだから。

 

 

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