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花火

作者: コココ
掲載日:2026/04/26

「ごめんな、チケット取れなくて」


「いいよ、花火が見えるところならどこでもいい。

でも、夏以外に花火あったんだね。」


「今年からだってさ。よかったな、引っ越す前に

見れて」


「ああ、本当によかった。知らない土地の祭りは迷子になりそうだし、ひとりで穴場に行くのも少し気が引けるからね。ああ、女性は大変だー」


「お前が男だったら行ってたか?」


「行ってない」


「なんだそりゃ」


「あ、始まった」



少し大きめの花火がなる。

次に小さな花火がなっている。沢山弾ける音がする。

毎年、彼女と花火を見てきた。

いつから俺は、花火以外を見ていたのだろう。


「ねえ、寒くない?」


珍しく、いや、初めて花火を見ている時に話しかけてきた。

小さな花火が、パラパラと音をあげている。


「そうか寒いか。じゃあ私が少し暖めてやる」


彼女は俺の腕に少し抱きついた。



大きな花火が、ふたつなった。








~彼女side~


「ごめんな、チケット取れなくて」


彼は少しだけ申し訳なさそうな顔で言った。


「いいよ、花火が見えるところならどこでもいい。

でも、夏以外に花火あったんだね。」


「今年からだってさ。よかったな、引っ越す前に

見れて」


「引っ越し」という言葉が刺さる。

自分の夢のために、ここを離れなければならない。仕方の無いことだ。

でも、本当はずっとここにいたかった。

彼さえいなければ、こんなこと思わずにすむのに。


「ああ、本当によかった。知らない土地の祭りは迷子になりそうだし、ひとりで穴場に行くのも少し気が引けるからね。ああ、女性は大変だー」


何を言っているんだ私は。こんなこと言うやつじゃないだろう私は。なんだよ女性は大変だーって。


「お前が男だったら行ってたか?」


「行ってない」


実は暗いところが苦手だ。穴場とか、彼としか行ったことがない。


「なんだそりゃ」


彼はくしゃっと笑った。

私が一番に見たい顔だ。


「あ、始まった」


花火は約30分。ここには座るような場所がない。

いや、場所はあるが汚れる。昨日は雨で、地面はまだぬかるんでいる。


少し大きめの花火が咲く。

次に小さな花火が咲く。沢山咲いて、キラキラと落ちていく。


風が吹く。3月とはいえ、まだ肌寒い。




少しだけ、甘えてもいいだろうか。




「ねえ、寒くない?」


彼はチラッと私を見た。少し驚いている?

彼の言葉を待つことを考えていなかった。


小さな花火が、パラパラと音をあげている。


「そうか寒いか。じゃあ私が少し暖めてやる」


私は彼の腕に少し抱きついた。

思いっきり抱きついたら、離したくなくなる。

こういうのはいつぶりだろう。多分小学生くらいかな。

筋肉質の腕が布越しでもわかる。

いつの間にか背も抜かれていた。

なぜだろう、少し笑った。


帰省したら、一番に彼のところに行こう。

元気が出てきた。



大きな花火が、ふたつ咲いた。

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