俺なりのショートショート5
圭三の母親、真里菜は椅子に座って雑誌を読んでいた。目の前に置かれたラジオの音量は最大になっている。外からでも、ラジオの音は十分大きく聞こえる。おかしな人間でも中にいるのだろうと不審そうな顔つきで、家の前を通りすぎる。騒々しいどころか、頭が痛くなりそうな音量だというのに、真里菜は何も感じてはいない様子。大音量のラジオショッピングが始まると思い出したように、雑誌から顔を上げる。時計は圭三を幼稚園に迎えに行く時間をさしてた。慌てて家を出る。
大音量のラジオが鳴り響く家に入る、母と子。息子の圭三は家に入ると同時に、耳を押さえる。ごめんね、真里菜は言う。最近頭の中が、うるさくって。テレビばっか見るな本を読め、ラジオはいいぞって…。
何を言っているのか分からなかったが、圭三は頷いた。そうだ、ちょっと待ってて。真里菜は圭三を椅子に座らせると、何かを取りに行った。
金づちと、フォークを手に戻ってきた。圭三の前にひざまずくと、真里菜は言った。これで、頭を開けてくれる?何かおかしなことを言っていることは幼い圭三でも分かったが、母親が言っているのだからいうことを聞かないわけにはいかない。フォークの先端を頭のてっぺんにつけると、金づちでたたき始めた。
コツコツコツ、金属音がするとパチツと小さなはじけるような音がしてこぶしほどの大きさに頭皮が直角に持ち上がった。
あっ、圭三は息をのんだ。中から人差し指ほどの薄毛の中年男性が飛び出してきた。真里菜の方の飛び降りた男性は開口一番、何やっているんだ君は!金属質の耳障りな声で、圭三に向かって声を上げた。
あっけにとられている圭三に向けて、男性は言いました。お母さんに言われても、二度とこんなことをしてはいけない。我々は人間界に存在していないことになっているのだから。いいかい、分かったね。
よくわかないけど圭三は、頭を縦に振りました。よろしい…、男性は真里菜の頭の中にぴょいっと飛び込むと、中から頭皮を引っ張って閉じた。
圭三は真里菜が特におかしくなったわけではないと思い、笑顔になった。




