表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
  作者: 水無適
2
23/38

エピソード23

手術台に横たわる澪に、静かに麻酔が注射された。

淡々とした手順で準備が進められ、麻酔の効果を確認した研究員たちは、すぐさま作業に取りかかった。

鋭いメスが皮膚を裂くと、青く透き通るような血液が静かに流れ出す。

そのまま臓器にメスが届くと、慎重に、しかし躊躇なく内部を破壊し始めた。

「......うっ」

突然、澪のまぶたが震え、意識が戻る。

激しい痛みが麻酔を突き破り、彼女を現実に引き戻してしまったのだ。

研究員のひとりが無言で猿轡を口にねじ込み、動揺もなく手術を続行する。

「ーーーーーー!」

声にならない悲鳴が、喉の奥でかすかに震える。

しかし、作業の手は止まらない。冷静かつ手際よく、澪の体の奥へと刃が進んでいく。

「記録は?」

「0.7秒です」

「……随分と早くなったな」

「はい、以前の倍以上の速度です」

「このへんで終わりにしよう。このまま放っておけ」

澪の体は、拘束具に繋がれたまま、力を失って沈黙した。



「内臓の治癒速度、0.7秒まで上がってます。しかも、塗布した治癒抑制剤の効果が弱まってきてますね。明らかに再生力が上昇しています」

「心臓や首を試してないよね? いっそやってみる?」

「さすがにそれは……死んだ場合のリスクが高すぎます」

「ふふ、まあそうだよね」

「このまま、細胞単位での解析を続けます」

「うんうん、澪を知るってことは、地球を取り戻すヒントにもなるからね」

「そうですよね!」

「でも、最近気づいたんだ」

「何をですか?」

「地球、まだエネルギー残ってるよ」

「……どういう意味ですか?」

「澪ってさ、地球の全エネルギーじゃなくて、ほんの一部と記憶の結晶だったんだよね〜」

「……! じゃあ、地球は――」

「うん。戻せる可能性も、ゼロじゃないってこと」

「それなら! 再生プロジェクトは――」

「……でも、まあ、もういいかなって上の人たちが判断したんだよね」

「え? どうしてですか?!」

「だってさ。枯れかけた地球の力が、形を得ただけで、今や無限のエネルギーを生んでる。澪がいれば、わざわざ元に戻す必要なんてないじゃん?って話だってさ!まあ僕もそっちの方が助かるけどっ!」

「……でも僕たちは、“地球を取り戻す”って信じて、ここまで――」

「うるさいなあ」

博士は静かに手を上げる。

その瞬間、周囲にいた研究員たちの体が跳ね、音もなく床に崩れ落ちた。次に彼らが目を開いたとき――その瞳には、歪に歪んだ過去と使命が映っていた。

「博士、次はどうすればいいですか?」

「とりあえず僕の言うことだけ聞いてればいいよ。部屋に戻って休んでてて」

「わかりました」

研究員たちは機械的に部屋を出ていった。

ーー

博士は澪のいる手術台が見えるガラスに近づく。

博士はガラス越しに横たわる澪の身体を見下ろし、口元を歪めた博士はガラスに指を這わせながら、まるで子どものように嬉しそうに笑った。

「0番、早く目が覚めないかな〜!君の中に隠された秘密、全部知りたいんだ!ゾクゾクするよ!」


声は弾んでいて、どこか楽しげ。狂気の中に無邪気さが混ざっている。

「キミの中にはいくつもの謎が詰まってる、全部暴いてみせるよ!待っててね!」


頬を赤らめ、くるくる体を揺らしながら言う。

「君を見てるだけで、心臓がドキドキするんだ!こんな感覚、初めてだよ!」


だが、壁の向こうには冷たい視線があった。

「上のやつらは単純で良かったなあ〜、おかけで僕はまた知識と解明を行える!」


闇の中で、博士はその好奇心に夢中だった。

「澪、すぐに君の全てを明らかにするから!」


そう囁きながら、彼は明るい笑みを浮かべて部屋を去った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ