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03:死の迷宮(ダンジョン)!! 大冒険ピラミッド ①

新章スタートです。

ラルシオンパーティVerです。


…今回も、タイトルにはルビが付けられないのにルビがあるので…(^_^;)

正確には…


03:死の迷宮(ダンジョン)!! 大冒険ピラミッド


…と読んでくださいませm(_ _)m

「わああああーッ!!!」


 ガラガラガラ…と激しい破壊音に悲鳴が重なる。


 どかどかどかっ!

 …古い壁や天井や建造物がどんどん崩れて落ちてくる。

 ドドドドドッ!

 …落下物を必死で避けたら、狙ったかのようにそこに大量の水が流れてくる。

 きゃあああ…という悲鳴が、狭いダンジョンの中に響く。


「なぁにぃよおぉ! このピラミッドはーッ!!」

 破壊音より大きな叫び声の主は…緑の髪のエルフ・ラルシオンである。

「トラップだらけじゃないのぉおおおお!!!」

 …石壁や崩れそうな石の天井の狭い通路に、悲鳴交じりの叫び声がエコーを響かせる。


 ――そう、ここは大冒険ピラミッド。

 大冒険村から西にある大きな砂漠の中に建つ古い建造物だ。

 大冒険大陸にある冒険場所…ダンジョンとしてもそこそこ名前だけは知られてはいるが…危険な砂漠の真ん中にあり、しかもかなり古いモノなので、ほとんど見向きもされていない。

 何より…古すぎてめぼしいお宝がほとんどないダンジョンなんて、冒険者達からしたらただの罰ゲーム場所のようなモノだ。

 しかも…


 ざばーっ!!!


 ラルシオンの大声に反応したかのように、頭上からたらいをひっくり返したような大量の水が落ちてくる。

 ……このトラップの多さがもう完全に罰ゲーム以外の何物でもない。


「いっ…」

 大量の水トラップのおかげで、全身水浸し状態のラルシオン。ポタッポタッと水滴を垂らす姿は水もしたたるいい女…とはとても言えないくらい怒りに顔をゆがめている。

「いったいどこのどいつよ!! こんな所に『鳥笛』を隠したのわッ!!!」

 その怒りを何にぶつけたらいいのかわからず、とりあえず近くにいる人形・ギルにぶつけまくるラルシオン。

「ぼっ…ぼくぢゃないよぅ…」

 首部分?を締め上げられ器用に涙を流しながら反論する人形。

「もお…ラルちゃんったら…」

 比較的器用にトラップを避けたのか…ラルシオンやギル程被害を受けていないティムが、八つ当たりしまくってるラルシオンに声をかける。


「そんなに罠に引っかかるんなら…罠回避の魔法を使えばいーじゃない?」

 魔法剣士でしょ?…とティムが魔法使いらしく建設的な意見を言う。


 ぐわん!

 その瞬間、ラルシオンはショックで固まる。すかさず頭上から先程の水をためていたであろうたらいが落ちてきて、物理的にラルシオンの頭にもショックを与える。


「ま…まほう…ね…?」

 ほほほほ…と固まった顔を何とか笑顔風にゆがめながら、ゆっくりとラルシオンは振り返る。

 身体も固まっているからか、締め上げている腕にも力が入り、ギルはどんどん顔色を悪くしていく。…人形なのに器用である。

「で…でもね、ティム。きょ…今日は日が悪いわっ」

 エルフにとって♡

 …と、よくわからない言い訳をするラルシオン。

「そーお?」

 その言い訳を素直に受け取り、「エルフって大変なのねー」とよくわからない理由なのに納得するティム。

 …ちなみに、完全に締められたせいで、すでに意識を素直に手放しているギル。…人形に意識があるのかどうかは不明ではあるが。


(いっ…言えるもんですかっ…)


 …そんな素直なティムが眩しくて、まともに見られず、そっと視線をそらしながらラルシオンは心の中で叫ぶ。


(エルフが魔法を使えないなんてっ!!!)


 心の叫びは誰にも聞かれていないはずだが…ダンジョンの中に何故かかすかに風が吹き、砂と埃と…なぜか変な蝶がその風に揺れる。その動きにまるで連動するかのように、ラルシオンの心の中も揺れに揺れていた…。



 そう…それは五日前。


「ええええーっ!!?」


 大冒険村の長老の家から、大きな声が響く。


「そっ…それじゃあ!!!」

「『鳥笛(それ)』を使うとどんな願いでもかなうの!!?」

 長老の言葉に顔色を変えて驚くラルシオンとギル。

 ティムも多少は驚いているが、そこまで顔色を変えるほどではなく、不思議そうにその話を聞いている。


「いかにも…千年前に使った者は王になったそうじゃ」

 長老は、かつて語られていた古い言い伝えを話してくれる。

 今の冒険者はほとんど知らない話だが、伊達に長生きしていないのだろう。ほぼ聞かれなくなった伝説とか、ありえないような不思議なお伽話とかも長老は意外と知っている。


(どんな願いも…?)


 その話を聞き、ラルシオンとギルはまるで放心したようにぽやーとした様子である。



(…魔法が…使えるようになれる!!)


 ――「ねぇ、知ってる? ラルシオン様って魔法全然使えないのよ♡」

 ――「うっそぉー!? 次期族長なのにぃ?」

 ――きゃいきゃいと若い娘が楽しそうに話しながら歩いている。

 ――(聞こえてるわよ…)…彼女達の死角にたまたまいたラルシオンには、しっかりその言葉が耳に届いている。


 そんな、かつての屈辱的かつ切ない思い出が走馬灯のように頭に浮かび…そんな過去を覆すことが出来る…と、思わず喜びの涙が頬を伝うラルシオン。



(人間に戻れる!!)


 ――「お前の様な乱暴者は…人形になれいッッ!!!」

 ――ブワッ…と魔術が発動する。

 ――「ひどいや!父さん」

 ――その、自分の口から出た全く自分らしくない言葉に、ギル自身愕然とする。


 そんな、かつての衝撃的かつおぞましい思い出が走馬灯のように頭に浮かび…そんな過去をひっくり返せる…と、思わず感動の涙を流すギル。…人形のくせに。



「で! どこにあんの!? その『鳥笛』はッ!!!」


 奇しくもラルシオンとギルの叫びは完全に重なる。

 そのあまりの剣幕に、普段はめったに狼狽えない長老も、思わずたじろぐ。


「いやっそのっ…ここから二日程西へ歩いたところにある『大冒険ピラミッド』にあると伝えられとるが…」


 その大冒険ピラミッドは、どうやら千年前王様になった人が、自身を王にしてくれた『鳥笛』を崇め奉る意味もこめて奉納するため建造したものらしい。

 だが、その話自体もすでに消えてしまった遠い伝説になっているのか…『鳥笛』を見つけたという話は全く聞かない。

 むしろ、『鳥笛』の話すら噂でも最近は出てきたことはない。

 そう教えてくれる長老の説明も、

「じゃが『鳥笛』だけでは何の役にも立ちゃせんぞ。『鳥』を呼ぶ魔力を秘めた『心臓宝石』があってこそ初めて力を発揮するのじゃ…」

 …という詳しい解説も、心が遠く鳥笛の場所に飛んでしまっているラルシオン達の耳には入ってきていない。


(とにかく鳥笛さえあれば…この憂鬱ライフからお・サ・ラ・バよっ♡)


 五日前の会話を思い出し、ほふーっ♡…と幸せそうに溜息を尽きつつ、ピラミッドの崩れかけの石壁をすりすりするラルシオン。

 その表情はまるで恋する乙女のようである。


 …が、

「ラルちゃん…イッてる…」

 彼女の本性を知るティムにはその表情も正確にとらえられていて、不安そうに見守っている。


 そのイッちゃってる乙女の様なラルシオンは、相変わらず恥じらう乙女のように、すすすーっと、壁を撫でまくっている…が…


 カチリ…


 …と、何やら変な抵抗感のある出っ張りを撫でた瞬間、微かな起動音がして…そして…


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…


 …と、遠くからだんだんと響くような音が近づいてきて…


「わーっ岩だっ岩だようッ!!!」

「ラルちゃんのばかぁーっ」

「とにかく逃げるのよぉーっ!!」


 ……もう数えるのも面倒になる何度目かのトラップに、三人は必死で逃走する。


 ゴゴゴゴゴ…という転がってくる通路いっぱいの大岩…

 ティムを抱えて必死のスピードで駆けるラルシオン。

 そして、しっかり大岩につぶされているギル。


「…………」


 ブーゥン…という何かしらの起動音と共に、何もない空間に小さく映っている必死な三人の姿がある。

 画像はかなり荒く、時々飛び飛びになるが、一応状況はわかる程度には映っている。


「ぬぅ…いかん。いかんぞ…!」


 …その画像に手をかざし、連続で映写するよう魔力をこめている者がいる。あの魔法使い・デラデューンである。


「奴等も探索をはじめおったぞ!!!」

 デラデューンの顔は相変わらず憎々し気にゆがんでいる。

「《調査蝶(センサーパピヨン)》まで使って奴等を出し抜いたというのに…四日も探しまくって何も出てこんとはどーいう事だッ!!?」

 横にいる若い男にデラデューンは怒りをぶつける。

 …どうやらダンジョン内に飛んでいた違和感ある蝶は、魔法で発現したモノだったらしい。

 長老から聞き出すことが出来なかったこのピラミッドの情報を入手し、ここに先に来ることが出来たのも、この調査蝶(センサーパピヨン)のお陰なのだろう。

 通常の冒険者にもあまり知られていない高度な魔術であろう調査蝶(センサーパピヨン)を簡単に駆使するデラデューンは、やはり凄腕の魔法使いなのであろう。…たとえ小娘に一蹴りでぶっ飛ばされるような存在だとしても。


「私に言われましても…」

 イライラと文句をまくし立てるデラデューンに、困惑した表情で若い男性が応える。

 涼し気なさらさらの薄い金色の髪に、少し困ったように下げた翠色の瞳の青年は…見た目爽やかイケメンである。

 鎧はデラデューンに仕えていた騎士と同じ物なので、彼はイブナートと呼ばれていた鎧騎士なのであろう。

 いかつい兜の下に、こんなイケメンな顔を隠しているなんて、もったいないことである。


「ええいっ 口答えは許さんッ!!!」


 …だが、デラデューンはそのイケメン面に一切配慮せず、げしっげしげしっ…と理不尽に折檻を加える。

「ああっ!お許しをを~っ」

 イブナートは情けない声で許しを請う。

「しかし…このピラミッドには所狭しと罠が仕掛けられていまして…その…思うようには…」

「ええいっ!泣き言なぞ聞きとうないわっ!!!」

 ごっごっごっごっご!

 デラデューンの百裂拳がイブナートに的確に入る。老齢の魔法使いのハズなのだが…拳の切れは非常に良い。

「ああっ!お許しを…お許しをを~っ」

 イブナートは反撃も出来ず、理不尽な百裂折檻を受けている。


 …と…


 ピキーン!

「ううッ!?」


 デラデューンの腹に突然の激痛が走る。

「デラデューン様?」

 イブナートは、年配の主が今の激しい運動で腰でもヤッてしまったのか…と心配そうな表情をデラデューンに向ける。

「ぬう…は…腹の調子がっ…」

 …が、どうやら腰の方ではなく、下る方の激痛らしい。

「イブナート!! わしがキバっとる間に何としても鳥笛を見つけておくのじゃぞ!!! よいな!!」

「は…はぁ…」

 デラデューンの理不尽な命令に、イブナートはとりあえず力ない返事をする。

 その返事を聞きながら、目の前のトイレにそそくさと入っていくデラデューン。

 …でもなんでピラミッドにトイレがあるんだろう…というイブナートのつぶやきは腹に爆弾を抱える主には聞こえていない。

 

溜息をつきながら、主の命を多少なりとも遂行すべく、とぼとぼとイブナートはダンジョンの奥へと進んでいく。

挿絵(By みてみん)


3章1話目、更新です。


今回も文章長くなっちゃったので、また途中で切ることになってしまいましたorz

今度こそバランスよく分けるように努力します。

よろしければ次回もぜひご覧くださいm(_ _)m


前も書きましたが、8月には夏コミに参加することになっております。

漫画の方の原稿作業も〆切第一弾が目の前になってきてかなりヤバいですorz

慌ててるとうっかり途中で更新し損ねちゃったりすることもあるかもしれません。その時はどうかご容赦くださいませm(_ _;)m


夏コミでは、ウマ娘ジャンルで参加してますが、大冒険の同人誌も持参してます!

もしかしたら新刊も出せるかもw

…なので、参加される方いらっしゃいましたらぜひ見に来てやってくださいませ♪


夏コミ106

8/16(土・1日目)「茶々組」「初心の会」西2ホール・き16ab

8/17(日・2日目)「DAMe project」東7ホール・L32a


…で参加します。こちらもよろしくお願いしますm(_ _)m

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原作マンガ、電子等で読めますw
「熱血!大冒険大陸」
DMM版kindle版、他、お好きなプラットホームでぜひ♪
とりあえず、どんなのか見るだけでも…という方は、 帰ってきたマンガ図書館Zで見れますw
あと、続編的なというかスピンオフ的なというかそんな同人誌も出してます。
同人イベントか、電子で良かったら見てやってくださいませm(_ _)m
…詳細情報はHPよりもTwitter(X)の方が早いのでw、ぜひそちらものぞきに来てくださいませ♪
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