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02:美しき破壊者たち(デストロイヤーズ) ①

2章です。

…タイトルにはルビが入れられないらしいですorz

正確には…


02:美しき破壊者たち(デストロイヤーズ)


…て感じで読んで下さいませm(_ _;)m

「『幸せの――青い鳥笛』?」


 ザワザワと騒がしい酒とご飯の美味しい宿屋で、食後の果実水を飲む手を止めて、黒髪の少年が同席者の言葉をくり返す。


 雰囲気が決して良いとは言えない喧騒の中、少年も、共にいる少女達も、周囲からは浮いて見えるくらいには若い。

 冒険者の集まるこの店は、少々ガラの悪い者が集まるやや物騒な場所ではあるが、城下町の店としては安くて美味いものが喰える点でなかなか評判が良く、いつも混雑している。今も食事時だから、ほぼ満席の状態だ。

 そのため、少年達四人のテーブルにも相席者がいる。

 小さな子供を連れた柔和な雰囲気の中年の男なので、おそらく店の配慮で、粗野な人間が集まるテーブルではなく少年達の席に案内されたのであろう。


「――って 何ですか?それ」


 少年の問いに相席者の男は、隣に座る小さな子供にご飯を食べさせながら、にこやかに返す。


「文字通り『幸せの青い鳥』を呼ぶ笛ですよ」


 黒い髪と短い髭に黒いローブの中年男は、あきらかにここら辺の人間ではない旅人のようだ。

 相席者との世間話の流れで、少年達が聞いた事のない話を聞かせてくれる。


「?」

「…まあ、この島の伝説の一つでして…」

 地元の話なのに聞いた事がなく、不思議そうな表情をする少年達に、男は話を続ける。


「その笛を吹くとどこからともなく鳥がやってきて 幸せを与えてくれるっていうヤツでして…」

「ええっ!?」

 少年はその男の言葉に、思わずガタンッと椅子から身体を浮かせる。


「ほっ…本当ですか!?」

 少年の黒い瞳がまるで黒曜石のように輝いている。

「さ…さあ。私も人づてに聞いた程度でして……」

 意外とこの島の人って、知らないんですね…と男はつぶやく。


「――でも」


 同席している少女の一人が、彼らの会話に口をはさむ。

 青白く透き通るような長い真っ直ぐな銀髪に赤い瞳、抜けるような白い肌…色素が薄く一見繊細そうに見える若い少女だが…表情にはあからさまな不信感を浮かべている。随分とあからさますぎて、相当気の強さがうかがえる。


「どうして島の者も知らないような事、あなた如きがご存知なのかしら?…ちょっとおかしいわよね」

「アリス!! 失礼だぞ その言い方!」

 あからさまに失礼な物言いに少年が苦言を呈する…が、アリスと呼ばれた少女は全く意に介さない様子で

「あら だってそーでしょ」と、返す。


「そんなにおいしい話、皆知ってるはずなのに…吟遊詩人ですら(うた)った事ないわよ、そんなの」

 そう言って、そのおいしい話をもたらしてくれた男に失礼にもびしっ!と指をさす。

「それをどーして単なる旅人のあなたが知ってるわけ!? 変よ、絶対!…そもそもあなたってば何者なの!?」

 指をさされた男は、その強い言葉に驚いたのか目を見張り固まっている。


「アリス! ホント失礼だぞ、頭から疑って…」

「アルフレッド…」

 その失礼な態度を必死で止めようとする少年に、あきれたように溜息をつきつつアリスは彼の名を呼ぶ。

「少しは人を疑いなさいよ!! 冒険者としては失格よ!!」

「お前は僧侶のくせに人を疑いすぎなんだよ!」


 そのきっつい物言いと態度なアリスはどうやら僧侶らしい。

 確かに、室内でも外さずかぶっている紺色の帽子は、世界的に一番信者が多いと言われている「太陽の翼教団」の正式な印があるものである。

 この教団は太陽を絶対的に崇めているので、一番太陽に近い頭を無防備に晒してはいけないとされている。

 なので、寝る時以外は必ず頭に何かしら身に着けていなければならない。

 正式な僧侶は制帽と言われる印の付いたものをかぶるが、一般人にはそこまでの規制はない。緩い信者レベルだと適当に布を巻く程度でお茶をにごしている感じである。

 実際、この店にも頭に布を巻いている人間は多い。目の前の親子も、男の方は布で、娘の方は飾り細工されたちょっと高価そうなサークレットが頭にあるので、一応信者ではないかと思われる。


「旨い話にゃ裏があるって言葉知らないの!?」

「それが僧侶の言う事か!?」

 その僧侶様の言葉は、確かに僧侶らしくない。


「あ…あの」


 言い争いになりそうな二人の会話を止めようと、男は割って入る。

「お嬢さんの言う事ももっともですよ」

 だから落ち着いて…と、二人をなだめる。


「私の名はエドマンド 娘のドロシーと商用で各地を旅してます」

 男は空気を換えるためか、改めて自己紹介から始める。

 ドロシーと呼ばれた娘は、黒いやや長めの緩やかに波打つ髪と、珍しい濃い金色の瞳をしている。大人しく父親の横で座っている様子は人形の様に整った可愛らしさがある。

「人は私をバロンと呼んで下さいますが…」

男爵(バロン)って…貴族!?」

 アルフレッドは思わず声を上げる。

 げーっ!?

 お貴族様が何でこんな店にっ!?

 …何となくこのテーブルの会話を聞いていた周囲の人間の大きなつぶやきも聞こえる。


「いえいえ。男爵(バロン)と言っても過去の話でして…」

 もうとっくに爵位なんか売ってます…と、エドマンドは苦笑する。

「今はしがない旅の宝石商をやっとります」

「えっ!?宝石商さん?」

 すっごーい♡…と、目をハートにするアリス。

 先程のきつい態度はどこかに飛んで行ってしまっている。


「…ええ」

 その態度の豹変も気にせず、エドマンドは話を続ける。

「ですから、仕事柄『どこそこにある何々の宝石の伝説』――っていうのに少々人より詳しいわけでして。『鳥笛』の話もその筋から仕入れたネタなんですよ」

 その穏やかな口調で語られる話に、ただの喧噪でしかなかった周囲のざわつきが変わりつつある。


「ねぇおじさん…それってどこにあるのぉ?」

 今まで黙って話を聞いていた同席者の一人…若草色の癖のある髪に目立つ赤いリボンをつけた少女が、舌足らずな口調で問いかける。

 やや幼げな雰囲気に、ちょっとつり気味の碧い瞳と、エルフほどではないが少しとがった耳も特徴的だ。

「さあ そこまでは――大冒険村の長老さんがご存知だそうですが…」

 エドマンドは、その少女にも丁寧に応える。


「――行こう」

 その言葉に、ガタン!!…と椅子を蹴るとアルフレッドは立ち上がった。

「すぐ行こう!その村に!! …そして鳥笛を手に入れて幸せになる!!」

 ぐっと握った手にはものすごく力が入っている。

 はっきり言って俺は幸福に憧れている!…そうつぶやく言葉にも力が入っていて、彼はその『幸福』というモノに並々ならぬ関心を持っているコトがわかる。

「――ちょっと待ってよアルフ」

 アルフレッドのその勢いを止めるように、アリスが彼に声をかける。

「伝説の物がそう簡単に見つかるわけないでしょ。のんびり探してる暇なんてないのよ。…次の仕事もあるし」

 アリスが正論を吐く。

 …もっとも、『次の仕事』は現在選り好み中で、確定しているワケではないのだが。

「そーだよぉ アリスちんの言う通りだよ。やめようよ~」

 緑の髪の少女もアリスの言葉に同意する。

「クララに何がわかるってんだ」

 アルフレッドはやや不愉快そうな表情で、緑の髪の少女…クララにそう文句を言う。

「えー わかるよぉ」

 クララと呼ばれた少女は、そんな不愉快そうな態度にも全然気にせず言葉を続ける。

「なかなか見つかんないって事は手に入れるのにものすごーく時間がかかるって事でしょ。――って事はそれまでずーっと4人きりじゃない」

「――? …うん」

 クララの言葉に、何言いたいんだ?コイツ?…という表情のアルフレッドとアリス。

「――ってことはぁ」

 そんな二人を置いてけぼりにして、クララはにっこりと可愛らしく微笑む。


「その間、美人のお姉さんと知り合えないんだよ。あたしそんなのやだもん」


 ドンガラガッシャン☆


 …クララのそのあまりにも気の抜けた意見に、話を聞いていた全員が思わず椅子からずっこける。


「……あれぇ?」

 周囲の死屍累々といった状況に気が付き、不思議そうにクララは首をかしげる。

「どーしたの? みんなぁ?」

 ひっくりかえるのおもしろい?…というクララの間の抜けた問いに…

「どーしたのじゃない!!」

 …と、間髪入れずにツッコむアリス。

「あんたの変な趣味なんか聞いてないわよ」

「えー あたし変じゃないもん」

「変でしょーが!! レズのハーフエルフなんて世界中探したってあんたぐらいなもんよ!!」

「違うもん あたし美人のお姉さんが好きなだけだもん」

「そーいうのを立派な変態って言うのよ!!」

「えーん ひどーい」

 いじわるぅ~…と、ぐずるクララと畳みかけるように言い募るアリス。

 アリスとクララの言い争いに、また始まった…という疲れた顔を上げるアルフレッド。

「お…落ち着けよ お前ら…」

 控えめに止めようとするアルフレッドの言葉は、完全に無視されている。

「あたしよりアリスちんの方が絶対変だよぉ。美人のお姉さんよりお金が大好きなんて」

 ぐすん…と鼻を鳴らしながらつぶやくクララの言葉に、

「あたしゃ純粋に現金が好きなだけよ!!」

 と、きっぱり言い切るアリスの言葉。

 完全に無視されてるアルフレッドは、後ろで小さい声で、おーいもしもーし…落ち着けってばー聞いてるー?…と声をかけているが、二人には全然届いていない。

 アルフレッドとしては、変態談義などどうでもいい、鳥笛を手に入れる為に早く動きたいところなのである。


「なーんで変態に変態扱いされなきゃならないのよー!!!」

「あたし変態さんじゃないもん」

 えーん…と、とうとう涙を流し始めたクララを見て、アルフレッドは慌てる。

「バーバラ!! お前が落ち着いてないで止めろよ!」

 …と、深紅の短い髪を黄色い布でまとめているもう一人の同席者…バーバラに声をかける。

「そーだ!! バーバラならわかるよね!!」

 今まで黙って空気になってたバーバラがいたことに気が付いたクララが、味方を得ようと矛先を変える。


「あたし変態じゃないよね? ね?」

「だーっ!!! 違うだろ そんな話じゃ…」クララの言葉にアルフレッドがツッコむ。

「そーよ 何言ってんのよ!! あんたは立派な変態よ!!」アリスは変態談義から離れる様子はない。

「そーじゃなくて『鳥笛』の話だろーが!!」

 アルフレッドの言葉に、バーバラは切れ長の葡萄色の瞳をこちら向けると…


「――あー…何の話って?」


 …バーバラの言葉に、アルフレッド達は全員脱力する。

「バ……バーバラ~」声にも力が入ってない。

「?」仲間のその様子にも意味が分からない様子で首をかしげるバーバラ。

 …その姿だけ見れば、すこぶる美人なのではあるのだが。

「こんだけ大騒ぎしてんのにお前何聞いていたんだよ」

 アルフレッドは思わず大声が出る。…が、

「…バーバラに聞くのが間違ってるのよ 戦闘以外役に立たないの知ってるでしょ」

 アリスはそのバーバラの姿は織り込み済みだとばかり、力なくつぶやく。


「だいたいねー 鳥笛にしたって『幸せを呼ぶ』なんて…そんな抽象的な言葉だけじゃどんなメリットがあるんだか…」

 そして、会話は問題点に戻る。


「あ…あの」

「あら バロンさん」

 聞いてらしたの?…と同席していたエドマンドに、今やっと気がついたようにアリスが振り向く。

 そりゃ聞こえてるよ…というアルフレッドの言葉はスルーである。


「いえね 『幸せ』って本人にとっての『幸せ』でしょう?――てことは」

 エドマンドはそんな状況でも落ち着いて彼らに言葉をかける。


「望みが叶う――ってことなんじゃないですか?」


「――……え?」


 …エドマンドの言葉に、アルフレッド達が固まる。

挿絵(By みてみん)


遅くなりました。2章更新です。

…何か文章長くなっちゃったので、また途中で切ることになってしまいましたorz

今度はバランスよく分けるように努力します。

よろしければ次回もぜひご覧くださいm(_ _)m


なるべく続けて更新できるようにしたいと思っています…が、8月には夏コミに参加することになっておりまして…(^_^;)

そろそろ漫画の方の原稿作業に入りますので、もしかすると〆切前とかとかぶったりして、途中で更新止まっちゃったりすることもあると思います。…どうかご容赦くださいませm(_ _)m


夏コミでは、ウマ娘ジャンルで参加してますが、大冒険の同人誌も持参してます!

もしかしたら新刊も出せるかもw

…なので、参加される方いらっしゃいましたらぜひ見に来てやってくださいませ♪


夏コミ106

8/16(土・1日目)「茶々組」「初心の会」西2ホール・き16ab

8/17(日・2日目)「DAMe project」東7ホール・L32a


…で参加します。こちらもよろしくお願いしますm(_ _)m

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原作マンガ、電子等で読めますw
「熱血!大冒険大陸」
DMM版kindle版、他、お好きなプラットホームでぜひ♪
とりあえず、どんなのか見るだけでも…という方は、 帰ってきたマンガ図書館Zで見れますw
あと、続編的なというかスピンオフ的なというかそんな同人誌も出してます。
同人イベントか、電子で良かったら見てやってくださいませm(_ _)m
…詳細情報はHPよりもTwitter(X)の方が早いのでw、ぜひそちらものぞきに来てくださいませ♪
― 新着の感想 ―
地元では失伝した物語が他の地域で伝説になるのは割とありがちよね。
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