10:邂逅、大冒険者 ②
第10章2話目です。
「わーっ!!? おっ…お前、何者だぁ!? さっ…さっきの男は!?」
アルフレッドの叫び声にも、ぱや?っと首をかしげている可愛い?人形。
…というか、そこにいたはずのガタイのいい人間が、小さな可愛い人形に入れ替わり…そして、そもそもその生命体ではないはずの人形が動いたり喋ったりしているという事実に、アルフレッドは完全にパニック状態になってしまっている。
「あー、これがそうなの」
ひっつくクララを無理矢理引っぺがしてこっちにやって来たラルシオンが、時間切れね×と言いながらそのままひょいっと人形の首をつまんで持ち上げる。
「さっきのは世を忍ぶ仮の姿で…」
「違うよラルちゃん! こっちの方が忍ぶ方だよぉ!」
ラルシオンにつままれた状態でじたばた暴れるギル。
「し…信じられん」
アルフレッドが唖然と、その可愛くもがく人形を見つめる。
あのすごい戦士が、元はこんな人形だったとは…とつぶやくことしか出来なかった。
…が、ハッと先程までのその凶悪な人間の姿を思い出す。
「だっ…だけど、さっきの見ただろ!」
アルフレッドは、びしっと人形に向かって指を差す。
「 いきなり切りつけてきて! こいつら敵なんだぞ!」
人形化したギルにあっけにとられてしまってはいたが、さっきの攻撃を思い出し、アルフレッドがその行為を責める。
「でもそれは…」
「違うわよ!!」
ラルシオンが言い訳しようと口を開いたところで、クララが遮るように反論する。
「ラル姉様が悪い事するはずないわ!! ラルシオン族の名までもらう次期族長様なのよ!!」
そのクララの言葉に「そーなの?」とギルに聞かれ、「……」と無言でちょっと照れくさそう…と言うか微妙な顔をしてしまうラルシオン。
確かに…族長の娘として生まれた上、精霊の加護を受け、過去の偉大なラルシオン族の開祖と瓜二つという事実に、生まれながらに次期族長と決められたラルシオンではある。
…が、エルフとしてはありえない『魔法を使えない』という瑕疵のある自分は果たして次期なり得るのか?…というか、格好悪くて胸張って『次期様でござい!』と言えず、微妙な表情にならざるを得ないラルシオンなのである。
そんな微妙な顔のラルシオンを置いてけぼりにして、アルフレッドとクララは言い合いを続けている。
「でもクララ! 現にこいつら、ドロシーを…」
「違うったら違う!!」
実際のバトルシーンを見ていないクララに説明しようとアルフレッドが言葉を続けるが、クララは聞く耳を全く持たない。
ブンブンと首を横に振るとアルフレッドの言葉を遮るように言葉を重ねる。
しかも…
「ラル姉様は絶対悪くない!!」
クララはわかってくれない仲間達に半泣きになりつつバッ!と両手を前に向ける。
…と、ブゥン…と光が掌に集まってくる。
急激なエナジーの高まり…これはもしかしたら…と、ギクッとするアルフレッド達。
「ク…クララ…」
「まずい×」
そう…いつものパターンだとこれは…。
「スペーススマッシャー!!!」
えーんというクララの泣き声と共に…
ドゲン!!!
…と土魔法系最強の圧縮魔法が炸裂する!
「うっひゃあぁー」
「クララが切れたぁー」
激しい破壊音の中に、皆の悲鳴や叫び声が消えてゆく。
――本来、『スペーススマッシャー』とはその場の全ての敵を空間ごと一点に押しつぶして破壊・粉砕する魔法である。
万が一その押しつぶされる重力に耐えたとしても、凝縮された空間が再び拡がる時の爆発的な衝撃波に吹き飛ばされてしまうので、余程の対抗魔法を用いなければ回避は不可能なのである。
それゆえに『土魔法系最強』と言われるのだ。
…なのに、クララが撃ち込んだ魔法は人死を出していない。
クララの魔法の威力が弱いワケではない。もちろん、魔法が下手だから効果が半減しているワケでもない。
少なくとも『土魔法系最強』の難しい魔法を、長い文言も難しい印も無しに、魔力を高める行動も無くあっさり発現させているのだから魔法使いとしての実力はかなり高いのだとわかる。
……では何故なのか?
実はクララの魔法は、人間にもかかわらず魔法研究を極めたと言われた実父に仕込まれたモノである。
父親は、己の妻子が自分と引き離された後に虐げられて、心身共に苛まれ母親が亡くなったと聞き、子供の方を引き取ったのだ――復讐のために。
そのためクララは、ハーフエルフというエルフの血を引いているにも関わらず、エルフが嫌がるような自然破壊系を含むかなり過激な攻撃力の高い魔法を多数身につけている。
しかし…元来クララは優しくて周囲が傷つく事を厭う性格だ。
戦闘で必要な時は仕方ないが、そんな時でも多少手加減してしまう程である。
たとえキレて最強魔法をうっかり炸裂させても、無意識に圧力を抑えているのだろう…おそらく。
…が…
「えーん、ラル姉様は悪くないんだってばー」
たとえ『スペーススマッシャー』の圧縮衝撃は少なく抑えられていても、空間が再び拡がる時の衝撃波を抑えることは魔法使役者にも不可能なのだ。
…なので…その衝撃波の結果、死んではいないが、ズタボロになってしまっている全員×
そこに、続け様にドンドンドンドン!! …と火の矢が降り注ぐ。
さすが攻撃力高き魔法使い! 無意識に流れるような連続攻撃が放たれる!
「わーっ!! 落ち着けクララ―!!」
「泣きながら炎の矢降らすのやめなさーい!」
「えーん」
…アルフレッドやアリスの止める言葉は、泣きながら魔法を連発しているクララには全く聞こえていない。
……もちろん、その炎の矢も逃げ惑う皆に直撃はしていない。
そんなところもクララの無意識の優しさが表れているのであろう。
………が…
フレイムアローが直撃していなくても…周囲が激しく燃え上がれば、逃げ惑う人間も高熱の炎にあぶられるコトになってしまうのは必至である。
「も…もうやめなさい、クララ」
フレイムアローで焦げた周囲とその焦げ臭い煙の中から、黒焦げになったラルシオンが出てきてそっとクララの肩に手を置く。
「ラル姉様…」
その最愛の人の声で、クララの攻撃と涙はやっと止まる。
「ありがとう。あたしをかばってくれて…でも」
極力優しい声と笑顔でクララを説得するラルシオン。
「…むやみに魔法をぶっぱなすのはやめなさいね」
「ラル姉様…」
その優しい声音の言葉と胡散臭いまでに優しげな微笑みに、クララはウルウルと瞳を輝かせる。
「やっぱりステキ♡ 優しいラル姉様♡♡」
…と、目までハートに変えて愛するラルシオンを熱く見つめている。
「…なる程…こーやって女をくどくわけね」
実際、目の前で繰り広げられたラルシオンの女を口説く手練手管を見て、うんうんと納得しかないティム。
「あたしも気をつけなきゃ…」
と、真剣に大人な意見を述べている。
「あ゛ーっもおっ! だーかーらぁー、違うって言ってるでしょ!!」
ラルシオンはティムのその言葉に、必死で言い訳している。
…しかし、その後ろでブンブンブンと手を振り回すギルはまだ止まらない。
「でも…でもラルちゃん!」
ビシッと丸い人形の手でアルフレッド達を器用に指さす。…いや、本当に器用に動く人形である。
「こいつら宝石盗んで神殿壊した極悪人だよ!!」
「あっ…あの時はドロシーが誘拐されて…」
ギルの言葉にアルフレッドは慌てて釈明する。
極悪人等という不名誉な言いがかりは即座に払拭しなければ、一応暫定とはいえ、勇者パーティとしては余りにも不味過ぎる。
それに…そもそも宝石は人から盗んだわけではない。たまたま見つけたモノだし、神殿が壊れたのもその宝石を手に取ったら勝手に崩れただけだ。わざと壊したワケではないので、『極悪人』とまで言われるいわれはないハズだ…と心の中で言い訳している。
…そして、
「お前らこそ、何でドロシーを追ってきたんだ!?」
と、こっちからも相手の怪しい行動に対してしっかりツッコむのを忘れない。
「だってこいつが鳥笛取ってったから!!」
その言葉に、ドロシーがした事を思い出したギルが、怒りを込めたどアップでドロシーに迫る。
…まぁ…どんなに凄んでも所詮は人形。
ドロシーもどアップに臆してはいたが、恐怖に固まるワケでもなく素直に、
「え…? だって…これ、可愛いんだもん」
…と答える。
ドロシーのその小さい声に、唖然とするギル達。
「こっ…これは、おもちゃじゃないんだぞぉ!」
慌てて、ドロシーの持つ鳥笛をたくり上げる。
あ…と悲しそうにつぶやくドロシーは無視だ。
…まぁ、たとえ小さな子供とはいえ、重要な鳥笛をおもちゃとして扱わせるワケにはいかない。
「じゃあ、大冒険村で誘拐事件を起こしたのは? お前らじゃないのか!?」
アルフレッドが長老から聞いた事件の話をギルに振る。
その話を聞いたからこそ、ドロシーの誘拐事件と同じやり口に、犯人は同一人物か!? …とアルフレッド達も確信したのだが。
「それ、デラデューンよ」
アルフレッドとギルのやり取りに、後ろからラルシオンが言葉を差し込む。
「デ…ラデューン?」
初めて聞く名前に、誰?それ?とアルフレッドはラルシオンを振り返りながら問う。
「バカの魔法使いよ」
その問いに、ラルシオンは端的に一言で返す。
ラルシオンの脳裏には、あの、うーっしっしっしっ♡ という馬鹿笑いをしているジジィの顔が浮かんでいる。
「鳥笛の秘密が知りたくて、長老の孫のティムと間違えて別の子誘拐したのよ」
ね、バカでしょ…と、解説を聞いただけでもその魔法使いの馬鹿らしさが伺える。
…そして、そのバカの解説の中に、目の前にいるティムが実はあの長老の孫娘だという情報がある事に気付き、ますますアルフレッド達は自分達の認識が間違っていたとわかる。
…そして、
「誘拐って…じゃあもしかしてドロシーもそいつが?」
「――てことは」
ラルシオンの『誘拐』という言葉にも、アルフレッドとアリスが驚く。
実際に村で起こした誘拐事件と同一犯ならば…と目を見張る。
「そいつが全ての元凶か!?」
アルフレッド達の大きな声に
「そーなるわね」と疲れた声でラルシオンが応える。
…全ての事件が、一つに繋がった瞬間である。
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よかったらぜひ、のぞいてみてくださいませm(_ _)m
第10章2話目に更新しました。
お互いの認識のずれの修正と芽生えた友情…?という感じの話でしたw
次回は第10章3話目になります。よろしくお願いしますm(_ _)m
後半部分が結構半端に長くなってしまったため、2回に分けるコトにしました。
次回分、ちょっと短めになるやもしれませんが…orz
来週更新予定です。またご覧くださいませm(_ _)m
……できれば一気に毎日更新とかできるようになるといいなぁ…と夢想しているのですが、なかなか…orz
ではでは。
次回も無事更新できましたらまたお会いしましょう。
よろしくお願いしますm(_ _)m
あと…最後にお願いがw
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