07:決戦!大冒険平原!!! ②
第7章2話目です。
ラルシオンパーティのお話の続きです。
――二人のその追走劇を背景に、ギルとイブナートの剣戟は激しさを増していた。
ギイィン!
ガキィ!
ガキィィン!
…という剣のぶつかり合う音の中に、
「オラオラどーしたぁ!? 全然歯応えがねェぞ! 騎士のあんちゃん!!」
…というギルの挑発するような声が混じる。
会話…というか一方的なセリフなのだが、話しながら疲れた様子もなく連続攻撃しているところを見ると、ギルからしたらまだ余裕のある相手なのだろう。
逆にイブナートの方は必死の形相でギルの繰り出す攻撃を受ける一方である。
だが、それも…
バキィ!!!
…という激しい剣の一閃で、イブナートはふっ飛ばされる。
「ぐあ!」
思わずといった悲鳴がイブナートの口から洩れる。
だが、そんな様子も頓着せず、ギルの攻撃は止まらない。
もちろん口撃も…
「それともその騎士の鎧は伊達なのかい!? ええッ!!?」
その言葉に、イブナートのこめかみがピクッと反応する。
騎士の姿を蔑む言葉…これは騎士の矜持を持つ者からしたら、決して許してはならない言葉。
主の為に身も心も捧げ、命すら投げ出す覚悟を持つ者が騎士である。
騎士の鎧姿は、それを体現したモノ。
それを馬鹿にされることは、自身の志を馬鹿にすることだけではない、己を受け入れてくれた敬愛する主をも馬鹿にする所業である。
「言った…な…?」
ゆら…と立ち上がるイブナートの後ろには静かな怒りのオーラが立ち上がる。
「なら見せてやる!!」
そのオーラが精神力が魔力となり、握る槍に充填される。
「必殺槍」
ブオオオッ…と、槍に込められた魔力が跳ね上がる。槍先が魔力を帯びて光り輝く。
「フレイムドラグーン!!」
突き出した槍の先から、ゴオオオオ!!という爆音と共に魔力の塊がギルに向かって駆け抜けてくる。
その魔力の塊はまるでドラゴンの顎を思わせるように発光している。まさしく、ドラゴンが相手を喰い殺そうとするかの如く。
「!?」
今まで余裕で対応してきたギルの顔に、初めて焦りの表情が浮かぶ。
必殺槍…それは、剣で繰り出す『必殺剣』や格闘家が拳によって発動する『必殺拳』のように、槍で攻撃する必殺技のことである。
『必殺』と名がつくように、通常攻撃が効かない時等、自身の精神力を武器にまとわせ相手にさらなるダメージを与えるための、文字通り『必ず殺す』つもりで発動する技である。
その『必殺技』の内容にもよるが、精神力を直接使う方法もあれば、魔力に変えて得物にまとわせて使う場合もある。それは技の使用者の技術や魔力、精神力の違いなど様々に理由があり、方法がある。
元々直接攻撃系の職業を選択する者は、自身の魔力と呼ばれる力が乏しい者が多い。なので、精神力を直接使用する場合が多いが、それでも余程修行を積んだ者か、あるいは元から魔力がそれなりにあり、精神力をそれに使えることが出来る者ぐらいしか使用できないモノである。…そして、たとえ使用できたとしても、もちろん乱発など出来る技ではないのだ。もし乱発するのならそれは、己の精神力を削りまくることになるのだから。
その『必殺槍』を、目の前の若い男が繰り出したコトで、ギルの中で、思った以上にやる奴だ…とイブナートの評価がやや上方修正される。
…が、そんな風に暢気に評価している場合ではない。直撃すれば最悪死ぬのだから。
技の発動と同時に高速で直線的にやってくる魔力の攻撃を寸前でかわすギル。
だが…
ゾン!!
…と魔力の塊が首筋近くの鎧をかすめ、砕いていく。……鎧の肩部分と共に鳥笛をぶら下げていた紐も切られて。
「ちっ! 鳥笛が…っ!?」
一瞬、ギルの意識が飛んで行く鳥笛の方に向く。
その瞬間…
「スキあり!!」
だっ!
…と、物凄い速さで突進してくるイブナート。その手に持つ槍は、真っ直ぐギルの喉元を狙っている。
必殺槍が躱されたとしても、そのすぐ後の第二弾の攻撃で止めを刺す…それがイブナートの狙いだったのだろう。
だが…
ビュン!
…と、宙を舞ったのは、ギルの首ではなくイブナートの槍の方だった。イブナートの攻撃よりも一瞬早くギルの剣が動き、目の前まで来た槍をはじきかえしたのだ。
その槍は空中をくるくると回りながら飛び、そのままガッ!…と地面に突き刺さる。
「バーカ。戦いってのは逆上した方が負けなんだよ」
立場は逆転し、今度はイブナートの首にギルが剣先を向ける。
…余裕そうににやりと笑ってはいるが、こっそりと「あー…アブなかった」と冷や汗が背中を伝っているのは内緒である。
「降参するか?」
ぐっと剣先をイブナートの首に近付ける。
…だが、彼の目はまだあきらめてはいなかった。
「ふっ…ふざけるなぁッ!!!」
イブナートは、くわ!っと目を見開き、喉元を狙う剣先を自身の手甲でずらしながらドンッと一歩前に踏み込む。同時に鋭い指先の動きでギルの喉元を襲う。
まさに一瞬の行動! その動きにギルも反射的に微かに身体を横にずらす。刹那、頬にスッと赤い線が引かれ、そこからジワリと血が流れてくる。
「…驚いた…無刀格闘術まで使えるとはな…」
ギルがイブナートのその攻撃に目を見張る。
『無刀格闘術』は、武器を扱う職業の人間が、その得物を失ってしまった時に使う格闘術である。
もちろん、格闘家とは違うので、本格的にその技で長時間戦ったり目の前の敵を倒すためのようなモノではない。
武器を失い絶体絶命の大ピンチの時に、一瞬でも相手をひるませ、起死回生のチャンスを得るための技である。
…当然、そこら辺をうろつく適当な自称冒険者等が身に着けているような簡単な技術ではない。正しく技術を習った者…師や学校等、教えを受けることが出来た立場の人間が、自分の命を守るために努力して手に入れるコトができる技なのだ。
つまり…イブナートは、その若さの割に、相当研鑽を積んでいると言える。
「だが…」
にやり…とギルは口元を歪ませると、顔のすぐ横にあるイブナートの腕をぐっと握ると…つかんだ腕の真ん中を容赦なく柄頭でぶつ。
ボキィ!!!
骨の折れる鈍い音が響く。
「うっ…ぎゃあああああ」
激痛に叫び声をあげるイブナートの姿を眺めながら、ギルは剣を握り直す。
「オレ様の相手にゃ二十億年早かったな!!」
にやり…と酷薄な笑みを浮かべると、相手に思いっきり剣を突きつける!
「止めだ!!!」
残酷なギルの剣先がイブナートに向かう。
…が、その瞬間…
「きゃああああああ!!!」
絹を裂くようなラルシオンの悲鳴に、タイミングをそらされ、思わずズッコケるギルとイブナート。
…見ると、ムクロマンドに追いかけられながら逃げまわるラルシオンの姿が…。
スピードで何とかかわしているが、一方的にムクロマンドに攻撃され続けている。
「…あのバカ! まだ決着つけてねーのか!?」
逃げ惑うラルシオンと追いかけるムクロマンド…その二人の追走劇を見ながら、チッ…と小さく舌打ちをするギル。
正に命のやり取りで緊張感あふれていたこの戦場で、すっかりその雰囲気は霧散していた。
ギルと命懸けの真剣勝負をしていたハズのイブナートでさえ、ポカンと目を見張りながら走り回る二人を見ている。
二人の戦いは…とりあえず、情けない追いかけっこのせいで、なし崩し的に終了してしまったわけで…。
※下の方 ↓ に、原作マンガや同人誌が読めるサイトや、Twitter(X)のリンク先が貼られています。
よかったらぜひ、のぞいてみてくださいませm(_ _)m
第7章2話目、更新です!
ラルシオンパーティのお話です♪
…長くなったので、3回分に分けました。…今回のはちょっと短めになってしまいましたが(^_^;)
次回も来週更新予定です♪ぜひご覧くださいませm(_ _)m
漫画の方の原稿もやってますので、そちらの〆切に近くなると今後更新が滞るかもしれません。
申し訳ありませんが、ご了承いただければ幸いです。
同人誌イベントにも参加してます。
今後参加する予定のイベントは…
11/9(日)ぷにケット52・プリステ44R「茶々組&初心の会」で申込済
12/30・31(火・水)冬コミ107「茶々組」「初心の会」「DAMe project」で申込済
…です。当選したら…ですがw
参加される方は良かったらぜひ、のぞきに来てくださいませm(_ _)m
ウマ娘の新刊だけでなく、大冒険の新刊とか直筆色紙とかもいろいろ持っていく予定ですので♪
ではでは。
次回無事更新できましたらまたお会いしましょう。
よろしくお願いしますm(_ _)m




