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冒険者デビュー、失敗

《1章》

 ――異世界転生しても、コンビニで働いてるのだが。

 おじさんの名は、遠藤匠。

 コンビニバイトの帰り道、トラックにはねられて死亡。かと思えば、謎空間で女神の面接を受け、異世界行きの流れになった。


 つまりまあ、異世界転生の導入部だ。いつものやつゆえ、割愛しよう。

 ここは日本に酷似した異世界、ムサシの国。

 レベルやスキルの概念がある、RPG系ファンタジー。和風テイスト多めで、カルチャーショックを受けずに済んだ。


 テンプレに従って、おじさんは冒険者になろうと思った。

 正直、この手の類の小説は好きである。暇潰しに結構読んでおり、あれこれ妄想もした。

 酒場兼ギルドへ赴き、暗黙の儀式を行うシーンだ。


「では、確認いたしますね……っ、こ、これは!」


 受付嬢が登録を済ませ、その秘められしステータスやスキルに驚愕する場面だろう。

 おじさんが期待を膨らませて、内心そわそわしていると。


「<栽培>スキルに<薬草強化>スキルッ! はては、<家庭菜園>スキルまで!? ……あ、あのぉ~言いずらいのですが、ステータスも平凡です。農家に転職をオススメしますが?」


 SE、パリーンッ!

 ガラスの心が砕けていく。


「あはははははははっ!」

「ぎゃははははははっ!」

「がはははははははっ!」


 昼間から酒をひっかけた荒くれどもが大笑い。


「おいおい、にーちゃんよお! とんだ一発芸みせてくれたなあ! やるじゃねえーかっ」

「農協は、三軒隣の建物だぞぉ~」

「ギルドに草生やすなっての! 草ぁああああアアアーーっっ」


 おじさんは居たたまれなくなったが、愛想笑いで誤魔化した。


「あはは、どうも~。就職前の記念登録です」


 何が記念登録だ。ちょっとでも期待していた自分が愚かしい。

 異世界転生した程度では、人は変われない。

 厳然たる事実を突き付けられた、おじさん。


「す、すごいっ! <聖剣>スキルに<神聖術>!? <古代魔法>に<未来観測>スキルまで!? あ、あなたたちは一体何者なんですかぁ~っ!」


 偶然たまたま、異世界転生の面接会場が一緒だった男子大学生と女子校生。先ほどまで、協力して異世界生活を乗り越えようと誓ったばかりの同期組。


「私たち、ごくごく普通な一般人ですよ?」

「俺たち、何かやっちゃいました?」


 2人は顔を合わせて、きょとんと首を傾げた。


「うぉぉおおおい、超新星のルーキー誕生だぜッ!」

「これでムサシの国は安泰だぁぁあああ! ヒューヒュー、飲め、飲めい!」

「冒険者ギルド職員一行は、あなたさま方を歓迎したします! 今後ますますの発展とご活躍を期待すべく――」


 当然、おじさんはあなたさま方に含まれていなかった。

 これ以上聞くに堪えず、逃げるようにギルドを後にするのであった。


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