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2・S地区にて

一応(当然ですが)、読者の皆様に推理は可能になっています。


ギンギンに照りつける日差し。初夏ではあるが、この暑さは真夏並みであった。


「なんで、こんな真昼間から・・・。」


純は待ち合わせの時刻を、涼に任せたのが間違いだった・・・。昨日、待ち合わせ時刻を突き付けられた。

午後一時

栞もガクッと肩を落としていた。涼は子供の頃から知っている。こういう性格って言うのは分かっている・・・。分かっていた筈だったのに・・・。

両手に持った、ビニール袋がひどく重い。本当に重いのだ。水2リットル入りのペットボトルがビニール袋一つにつき、5、6本入っている。それを両手で合わせて2つ持っているのだから、たまったものでは無い。ちなみに涼は一つ、栞は自分の緑色のウェストポーチを腰に一つ付けているだけ・・・。


「自分の分ぐらい持て、栞!」

「力仕事は男の仕事よ。」

「なら女の仕事は?」

「男の人の仕事を黙って傍観する事。」

「偉く都合がいいな、おい・・・。」


溜息をついて、横眼で涼を睨む。この暑さだというのに、汗一つ流さず、満面の笑顔・・・。


「暑くないのか・・・?」


純が聞いた。と言っても長い仲だ。何と返すか、純と栞は分かっていた。

涼は、笑みを浮かべて答える。


「この帽子のおかげで暑くない。」


頭にかぶっている黒い帽子を、指でさして答える涼。純は溜息を一つ漏らす。


「お前・・・、帽子一つでそんなに涼しくなるものか・・・。」


純は愚痴を漏らした・・・。栞には気持ちがよく分かるが、涼は帽子をかぶっている時と、かぶっていない時では暑いと感じる温度に十度の差がある・・・。

そう言えば、子供の頃から涼は帽子をかぶっていた。それも、今かぶっているのを。頭が大きくなるにつれ、少しずつ幅を調整しているらしい。


「とうちゃーく!」


涼は、元気な声でそう叫んだ。辿り着いたのは、幽霊がでると言われているS地区。

僕達の通ってきた砂道が細く一本、それ以外は脇に大きな一本の木。その陰の中の木製の古臭い、大きめのベンチがあるのみである。

純と栞は、涼しさを求めるようにそのベンチに駆け寄る。そして、なだれこんだ。


 「あー、暑かった・・・。」

 「私も、もう駄目・・・。」


純の手から、二つのビニール袋が地面に落ちた・・・。幸い中身は外に出ず、落ちたところもまた、影である。二人とも、正直暫くの間ひなたに出たくはなかった・・・。二人は、倒れた体制をのそのそと戻し、ベンチに座りなおす。栞は、ウェストポーチをベンチにおろし、指でベンチの少し上の空気を切った。


「ここからここ、私のスペースね。」

「っておい!半分じゃねーかよ!僕達は二人だぞ!」

「うっさい!乙女のテリトリーは常にデリケートなの。」

「何だ、それ・・・。」


純が溜息を吐くと、ゆっくり歩いていた涼がようやくベンチに辿り着く。純はすぐに、涼に栞に対する不満を漏らした。


「おい、こっからここまで入ってくるなって言ってるぞ。お前も何か反論しろ。」


純は境界線を身振りでしめす。しかし、涼は「仕方ないよ。」とだけ言って苦笑いした。

頼みの綱が無くなり、純と涼は隣同士で座る。まあ、二人分のスペースにしては広いが、横で悠々と寝転がっている栞を見ると、やたらと狭く感じられる。

しかし、影にいるとはいえ、蒸し暑く、蝉の鳴き声も聞こえてくる。

純は額の汗をぬぐって、涼に疑問をぶつけた。


「何もこんな早くから、待たなくても・・・。」

「そうだよ・・・、もう・・・。」


栞がそれに続く。


「何もしてない人は黙っとけ!」

「何?レディーに対して何たる口の利き方してんのよ!女の子は、もっと優しく扱うものよ。」

「お前のどこが女の子なんだ・・・?」


純は思わずそう漏らしていた。気付いた時には遅かった・・・。純は一瞬、生命の危険を感じた・・・。

栞の顔は、笑っていた・・・。しかし、両手には・・・、道端に落ちていた漬物石サイズの大きな白色の石が掲げられていた・・・。


「ねえ、何て言った?今。」

「いや、あの・・・、それ・・・、熱くない?」


炎天下の中に落ちていた石だ。熱くない筈はない。栞は、顔をしかめている。やはり厚かったのだ。今にも手と石の触れている部分が、ジューッと聞こえてきそうだ。


「えー、熱いわよ。だから、早く答えてくれないと、問答無用で投げるわよ?」

「あ、あの・・・、すいません。許してください!」


純は、誠心誠意をもって謝る。ひたすら謝る。栞はそれを見ると、石を地面に落とす。栞の手も限界だったので丁度良かった。


「もう、二度言わない事!いいわね!」

「はい!承知しました!」


純は敬礼をする。その様子を笑いながら見ている涼に、純は多少腹が立って、帽子ごしに頭を叩いた。

途端に涼は頭を抱え込んで


「痛いな・・・。もう・・・。って、どうしたの?」

「帽子・・・、忘れてた・・・。」


ある程度ひなたにいたせいで、黒い帽子はひどく熱くなっていた。その上から小突いたせいで、純の手にもダメージが来る。


「って、そんな事より、質問に答えろ!」


先程の質問を思い出した純は、涼に答えをせかした。涼は、さも当然と言った風に答えた。


「だって、祭りが始まるの二時だよ。」


純と栞は呆れ果て、涼は何故そんな事を聞くのか、さえも分からなかった。


「幽霊がこんな真昼間から出るか・・・!」


純は力なく突っ込んだ。涼はその言葉に大変驚いた。


「え、何で?昼に幽霊が出ないなんて誰が決めたの?」

「そりゃー、常識としてだなー・・・。」

「誰が決めたんだよ、そんな事!」


涼はその話題に異様なまでにくいかかる。涼はいつもこうである。普段はのほほんとしているくせに、自分の考えは曲げようとしない頑固さを持っている。

長い間一緒にいた純には、その事は分かっていた。それでも一応、純は反論した。


「だってさー、テレビとかでも幽霊の体験談って夜しかないじゃないか。」

「あれは、夜の物音を人間が過剰にとっているだけで、それとかそれに便乗した悪戯とかだよ。」

まるで純の質問を待っていたかのように、涼の返答は突っかかりすらなく素早かった。純は、その返答に返す言葉がすぐに見つからず、黙りこみ視線を泳がせたが、栞はそれに対してさらに反論を重ねた。

「でも、それじゃ、ここに来る意味も無いんじゃない?ここの噂もそう言う出まかせかもしれないわ

よ?」


栞自身、ここの幽霊の噂は信じちゃいないし、言いだしっぺの純も同じだった。だからカメラも持ってきていない(涼の家にはカメラは無いので、涼も持ってきていない)。

幽霊なんて架空の存在、虚像・・・

二人ともそう思っていた。純が今日、ここに来ようと言ったのも、単に面白そうだったから・・・。それと、幽霊に怖気づかずにそこに行ったという勇気を皆に自慢する為でもある。

しかし、涼はそうは思っていなかった・・・。


「確かに、そうかもしれないけど、ここがそうだとは確定してないよ。だから、今日、ここに確かめに来たんだ。」


そう言って、涼は満面の笑みを浮かべた。栞と純は呆れて、ペットボトルの水を飲みほした。


そう言って、難易度は高くないと思いますし、読みやすいようにいろいろ考えましたが、それでも読みにくければ指摘してください。

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