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12・見せかけの真相

もう、今日はラストまで上げます


 「えっ・・・?」


 その場の全員が、涼の一言に間抜けな声を上げた。涼は、もう一度言った。


 「もう一度言うよ。エマさんは今回の事件の犯人じゃないよ。今の推理、矛盾してるから。」


 涼は悪戯っぽい笑みを浮かべる。その言葉に岡本が過剰に反応する。


 「馬鹿な!きっとお前はおかしい!何処にも矛盾点なんて無いじゃないか!」

 「いやー、僕もこれが真相だと思っていたんですよ。駐在さんが襲われるまでは・・・・・ね。」

 涼は、右手を後頭部に持っていって笑う。

 「どういう意味だ?」

 「僕、さっきも言いましたよね。この推理が正しいとすると、エマさんは盗聴器をポーチに仕掛けているんですよ。」

 「それがどうした!それは警察の動向を窺うために・・・、」

 「自分を死んだと思わせた人間が、ですか?」


 岡本は、その言葉を聞いて固まった。瞳は涼に向いているが、今の彼には涼が見えていない。そして、数秒して、また視線が涼を捕らえる。


 「確かに・・・、おかしい・・・。」


 岡本の呟きに、涼は嬉しげに頷く。置いてきぼりの純が痺れを切らして、涼に尋ねた。


 「お、おい・・・。どういう意味だ?」

 「純、もし君が盗聴器を警察に仕掛けたとしたら、何処でそれを聞くの?」

 「何処って・・・?」

 「だから、その警察の近くか、遠くかどちらにいる?」

 「そりゃー、近く・・・かな。」

 「何で?」

 「そりゃー、その方が何かやばい物が見つかっても、近ければ何とか対処できるかもしれないからだけど・・・。それにそんなに離れてたら、会話の内容を盗聴できないだろうし。」


 純は、涼の質問の意図がよく分からないものの、自分の意見をきっちり言っていく。


 「栞?」

 「え、あっ、はい!」


 涼が急に栞を呼んだため、栞は敬語になってしまう。


 「さっきも言ったけど、自分を死体に見せかけた場合、何処にいる?」

 「そ、そりゃー、見つかったら・・・、水の泡だから・・・、自分を知る人がいない何処か遠くへ・・・、」


 この発言で、栞と純、鳥辺は同時に固まった。そして、岡本と同じく数秒後に同じ考えに行き着く。


 「あああああああああああ!」

 「やっと・・、気付いた・・・?」


 涼は耳元で栞に大声を出されたため、指で耳を塞ぎながら尋ねた。


 「本当だ・・・。矛盾してる・・・。」


 涼は笑顔で頷く。


 「うん。自分を死体に見せかけるのなら、遠くに逃げなきゃいけないのに、盗聴器を仕掛けて、警察の動向を窺うのは明らかに矛盾するんだよ。事実、すぐに駐在さんを襲い、ハンカチを奪っている。これは犯人が警察署の近くにいた証拠だ。彼女が犯人なら、その時までこの辺りにいるのはおかしい。」


 涼は続ける。


 「そもそも、石灰の時点で少しおかしかった。エマさんが犯人なら、祭りの当日より、前日の方が都合が良かったはずだ。それなら、死体を置いてから、すぐに時限発火装置を仕掛けて、飛行機で逃げられるしね。

 それに、駐在さんの事件だけど、あの時ハンカチだけを奪ったよね、犯人。目的の物だけを盗むのは、心理的にみると男性の方が多いと思うんだ。女性は、どちらかと言うと大雑把だしね。

 まあ、男の共犯者がいたとすれば、話は変わってくる。駐在さんを襲ったのが共犯者の方なら、盗聴器の矛盾は意味をなさないし、男っぽい行動も説明できる。石灰については、・・・苦しいけど・・・、間違えたと考えれば筋が通る。

 だから、僕もそう思ったんだけど、駐在さんの証言でそれが間違いだと分かったんだ。

 駐在さんは、こう証言した。あのハンカチには何もついていなかった。これはおかしいんです。」

 「何がだ・・・?」


 今まで黙っていた岡本が口をはさんだ。


 「純、栞。」

 「な、何?」


 二人の声が重なる。


 「覚えてる?エマさん、ハンカチで口元拭いてたよね?」

 「うん、確かに覚えてる。」

「そう言えばそうね。」


 二人は頭の中に、その時の光景を思い浮かべる。栞が、鳥辺とエマの仲をからかった時に口に含んだ水を吹き出して、それを拭う時にハンカチを使っていた。


 「その後、エマさん、口紅使ってたよね?」

 「あ、ああ・・・。」

 「口紅を塗りなおしたって事は、ハンカチで拭った時に口紅がとれたんだと思う。実際、ハンカチで拭けば口紅なんて簡単にとれる。なら、なんで発見されたエマさんのハンカチには“何も”付いていたかったのだろう?

 つまり、ハンカチは二つあったんです。エマさんの使っていたハンカチと、成瀬さんの拾ったハンカチは別の物。さて、彼女と男の共犯者が犯人だとすると、ハンカチを犯人から奪い去ったのだから、それは間違いなくエマさんのハンカチだ。ハンカチに名前が縫われていた事からも分かる。

 では、両方ともエマさんの物と言う事になるけど、何故二つも?考えられるのは、一つが無くなったから、つまり落としたから買いなおした、もしくは借りた、もしくは予備。

 しかし、これのどれだとしても、彼女は自分の使っていたハンカチが、無くなっていた事に気づいていたはずだ!それが見つかれば、このトリックがばれてしまう。実際ばれかけましたしね。

 必死にエマさんは探す筈です!しかし、駐在さんは言ってました。事件の会った日、訪ねてきた人はいないと!ハンカチを落としたのに、真っ先に交番に行かない馬鹿が何処にいるのでしょう?

 この矛盾は、どう考えてもぬぐえません。彼女が犯人ではないと、考える以外には・・・。」


 皆は、涼の推理を唖然とした様子で聞いていた。しばらく沈黙が続いたが、それを岡本が破った。


 「待て!それなら、犯人は誰なんだ!白川君、最初に言ったよな。可能性は二つだって!そのどちらも否定されたぞ!一体どういう事なんだ!」

 「警部、僕はある事を仮定してから、そう言った筈です。あの死体がエマさんじゃないと考えると、とね。」

 「何だと?」

 「今、そう仮定したうえでの全ての可能性が否定されました。つまり・・・、あの死体こそがエマさんなんです!」


 涼の一言で、その部屋に戦慄が走る。岡本が言った、今までよりも数段上の怒気を込めて。


 「馬鹿な!きちんと話を聞いていたのか!あの死体がエマ氏でない事は指紋鑑定や、あまつさえDNA鑑定さえして発覚済みなんだぞ!ふざけてるのか!それとも、DNA鑑定や指紋鑑定に間違いがあるとでも?」


 その威圧にも怯える事もなく、涼は机の周りを歩き始めた。


 「・・・指紋鑑定や、DNA鑑定は間違っていません。つまり、あの死体と僕達があったエマさんは別人です。しかし・・・、あの死体こそがエマさんである事も、また事実。」


 涼は、僕達とテーブルをはさんで対称な位置に来て、足を止めた。そして、両手をテーブルの上に置き、ゆっくりと言った。


 「つまり・・・、僕達の会ったエマさんと、“本物”のエマさんは別人なのです。そうでしょう、鳥辺さん!」


ここのハンカチの理論、苦しいな・・・

まあ、エマさんが犯人でないことは結構明確に書けたと思います。

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