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1・○○祭り

はじめまして、QUODといいます。小説サイトに投稿するのは初めてなので、不慣れなところもあるかもしれませんが、以後よろしくお願いします。

ところでいきなりですが、読者の皆様に忠告しておきたいことがあります。

この小説は既に書き終えているのですが、展開なりなんなりが、某同人ゲーの「綿流し編」に酷似しております。

書いた後で、友達に見るように勧められ、愕然としました(泣)。

トリックはおそらく違うと思うので、心配はないでしょうがそれでもちょっとという人は見ないでいいです(見てほしいけど)orz

それから、多少(というか多大)ご都合主義があります。

それでもいいという方は、是非読んでください。

感想も書いてくれたらうれしいです。

キンコーンカンコーン

気だるいチャイムとともに、今まで生気を失っていた人間達が急に元気を取り戻して、鞄に荷物を入れ、階段の方へと駆けていく。

純は、机に突っ伏していた体を起こし、体をグッと伸ばす。既に、生徒の半数は教室から出ていっている。窓からは少し傾いた日差しが差し込み、外では、グラウンドで部活をしている人間の上を烏が飛んでいる。

一つ大きな欠伸をすると、大変な脱力感に襲われ、再び机に突っ伏した。


「あ~、ダルい・・・。」


純は、考えていた。どうして高校の放課後は、何処かダルいのだろう?小学校、中学校では少なくともここまでダルくは無かった。むしろ、家に帰って何をしようか、毎日のように悩んでいた。

しかし、今はどうだろう?家に帰っても、する事が無いのである。いや、正確にはする時間が無い、だろう。家に帰っても、予習、復習の毎日。それをしなければ、高校の授業はとてもではないがついていけない事を、純は高一の時に学んだ。

中学校の頃までは、自分も成績は優秀な方で、何もしなくても80、少なくとも70はどの教科も取れていた。自分の自慢でもあった。

だが、高校になった途端、その自慢はただの虚像に代わった・・・。最初のテストで、初めて半分より下の順位を取ったのだ。それを目にして、純は本当に焦った。親には目くじらを立てられ、ようやく勉強をしようと思い始めた。

しかし、普段勉強する事のない自分にとって、学校の授業以外で机に向かう事は慣れない事だった。気が付いたら、その隣のベッドで寝ている。その繰り返しだ。

高二になって、ようやく机に向かうのに慣れてきたが、いざ勉強を始めると、勉強に身が入らない。集中できないのだ。

その理由は、純にはよく分かった。

何の為に勉強をするのか・・・?

他人に言えば笑われる様な悩みだが、純にとっては深刻な問題だ。

純には“将来の夢”というものが無かった。目標が無い。何に向かえばいいのか分からない。したい事が無い。

この高校も、県立で自分の家から通える範囲、という理由で受験した。別に、こういう部活があるから、こういう学部があるから、という理由では無い。

なので、高校に入るまでの間、将来について真面目に考えた事など無かった。確かに、幼稚園、小学校、中学校の卒園、卒業式にそう言う類の希望や作文を書かされた覚えがある。しかし、それらに対しては、面倒くさかったので、全て適当な事を書いている。

サッカー選手、学者、医者・・・、

そんなこんなで、毎日、やりたい事を探す日々。しかし、全く当たりが来ない。時間という名の餌が、少しずつ食べられている。そうなればなるほど、自分の人生がどうなるのか不安になる。諦めの気持ちも出てきて、それが無気力さに直結している。

この混沌の色をした心を払拭できる楽しい事はないか、純は脳の12%を使って考える・・・。

該当件数なし・・・

純は溜息を吐いて、手を空中で遊ばせる、

その様子を、後ろから見ていた人物がいた。その人物は、頃合いを見て純に近づいた。


「何、暗い顔してんだよ。」


涼は思いっきり、純の背中を叩いた。純は驚き、背筋をのけぞらせる。その反応を見て、涼は吹き出す。


「どうしたの?海老の真似?」


純は振り返り、涼の顔を見た。涼は悪戯が予想以上に成功して、満面の笑みだった。高校生にしては小柄で、子供っぽい顔なので、よく中学生に間違われるが、この笑顔を合わせると小学校低学年にも見えてくる。おまけに、頭にかぶった黒い帽子はお気に入りで、子供っぽさを更に強調している。


「いや、ちょっと考え事をな・・・。」


「へー、純が考え事って珍しいわね。」


ショートヘアーの黒髪の女性が、手ぐしで髪を整えながら、会話に割って入る。


「前から何か悩んでるみたいだし・・・、さては恋ですかな?」


妙な含み笑いをしながら、純に問い掛けた。


「な訳ないだろ、栞?」

「だよねー。お前みたいな鈍感野郎が・・・。」


栞は、やれやれとばかりに頭を振る。三人は小学校3年生以来の付き合いで、何故か気があった。もっとも、涼と栞は家が近所で三歳ぐらいの時から遊んでいたらしい。


「早く帰ろうよ。眠くなってきた。」


涼が、純の腕を引っ張って急かす。


「ちょっと待てって。まだ、鞄に荷物詰めてないんだから!」


「早くしろ!」

涼が純の腕を物凄く揺さぶる。純の見ている光景を説明するのは、酷く難しい。強いて言えば、七色の流れ星が流れていると言えるだろうか。純の魂はそれに乗って、天国に召されかけているのを、涼と栞はようやく気付いた。


「お、おい!大丈夫・・・?」

「こ、殺す気か・・・。」


「ごめん、ごめん。」

涼が謝るが、純はその顔が満面の笑みだったので苦々しげに呟いた。


「もし、吐くような事になれば、お前の帽子の中に吐くからな!」

そう言って、純は涼の帽子をはぎとろうとする。涼は慌てて帽子を押さえる。

「それだけは、ご勘弁を!」


二人の馬鹿な掛け合いの中、すっかり忘れ去られていた栞が二人の顔面に鉄拳制裁を下す。


「グハッ!」

「痛~!」


純は年相応、涼は子供っぽい叫び声をあげ、倒れて地面に尻をつける。


「早く帰らないと、日が暮れるよ!」

「き、効いたぜ・・・。今のは・・・。」

「もう、痛いよ・・・。」


純と涼は頬をさすりながら、机の間で仁王立ちして、腕を組んでいる栞を軽く睨みつける。栞は気にも留めずに、純に早く帰る用意をするようにせかした。

先程までの悩みなど忘れ、純は涼達と一緒に歩いていた。しかし、話題が定期テストの話題にはいると、純の口数は必然的に少なくなっていった。


「今回の定期テスト、いつもより範囲が広いからなー。まあ、どうせ勉強しないけど。」

「勉強しなきゃ駄目だよ、栞。この前だって、赤点ギリギリだったじゃない。」

「全部平均点と、プラスマイナス一点の涼に言われたくないよ。純に言われたなら仕方ないけどね。」


その瞬間、純の中で悲しい音色が響き渡った。


「そうだよね。純って、なんだかんだいって、中学の時学年トップだったし。」

「そうそう、いっつも朝礼台に上がってたしね。高校じゃ、流石に一位は無理でも、五位くらいはとってるんでしょ?」

「別に・・・、良くなかったよ・・・。」

「嘘ついて~。中学の時に良くなかったとか言ってた時だって、やっぱり一位とってたくせに。」


その一件があったから、この二人は、僕の成績がどんどん落ち込んでいる事を知らない。事実を話しても、嘘だと思って受け流されるので、だんだんと、本当の事が話せなくなっていった。

純にも、ささやかながらプライドがある。そのプライドは、今まで、純を支えてきたものだった・・・。しかし、井の中の蛙、という事を、高校になって初めて思い知らされた・・・。


「おい、どうしたの?また、ひどく暗い顔して・・・。」


栞は、純の顔を覗き込んだ。さっきから何度も話し掛けているのに、全く反応が無い。ひどく考え込み、ひどく悲しそうな顔をしていた。

純は、我に返り、すぐに栞に返事をした。


「あ、なんでもないよ!なんでも!」


純は必死に明るく取り繕うとした。したのだが・・・、付き合い始めて長い涼と栞を誤魔化せる筈もなかった。眉間にしわを寄せ、あからさまに疑う栞。その後ろで、困った顔をしている涼。

純は、慌てて他の話題を探した。目線をあちこちに泳がせているうちに、あるポスターに視線が固定する。


“○○祭り”


黒く陰気臭いポスターには、そうデカデカと書かれていた。


「そういや、もうすぐこの祭りだな。」


純がそう言うと、栞と涼は視線を純から外し、純の目線の先のポスターに照準を合わせた。


「あー、五日後だっけ?この祭り。」


栞は、ポスターに歩み寄り、その内容を目で追っていく。


「うん、五日後だよ。」


欠伸をしながら答える涼。本当に眠く目を擦る。その瞬間、涼は純の顔を見た。見ると、純は何か安堵したような様子だった。しかし、それも一瞬で明るい顔に戻り、栞のもとに歩み寄っていく。

涼も、二人の元に駆け寄るが、その間に何故あんな顔を純がしたのかを考えたが、何も思い当たる節が無かった・・・。


「でも変わってるよねー。死者を弔う祭りなんて・・・。」


涼が二人のもとにつくと、栞が両手を後頭部に回して答えた。

○○祭り。百年以上前から続く、伝統のお祭り。午後2時をもって開催し、午前2時をもって終了する。祭りの内容はとても奇異で、この一年で死んでいった者の魂を、再供養するために由緒正しき神社の神主が、祭りの真ん中で午後7時から、午前2時まで長いお経を唱えるというもの。それ以外は普通のお祭りと何ら変わりが無い。

この祭りには、ある掟がある。

この町の人間は、お経が始まる午後7時までに祭りに到着する事。

この掟を破ると、霊が成仏しきれず現生に残るのだとか。

祭りが丑みつ時、つまり午前二時に終わるのもこの所為。

しかし、この時、純は閃いた。そして、今まで錆びついていた頭が急回転し始めた。


「なあ、」


純は、ある事を企んだ。子供らしい考えで、馬鹿げているかもしれない。

しかし、純には今、これ以上に楽しい事は思いつかなかった。

涼と栞は、呼びかけに振り向いた。そして、気がつく。

(やばい。あの顔は何か企んでいる。)


「さ、さあ、早く行こう。」

「そ、そうね。早く帰らないと本当に日が暮れて・・・。」


純の脇をすり抜けようと、涼と栞は体をもともとの進行方向に向けて歩き出す。

しかし、純はそれに先回りして、二人の肩に手を置く。


「待てって。」

「いや、あのですね。今日は塾があって・・・。」

「ぼ、僕は、買い物に行かないといけなくて・・・。」


二人は気がついていた。純の考えている事に・・・。

純は、会心の笑みを浮かべ、口元を少し開けた。

二人は、ゆっくりと開く、法廷台への扉を凝視した。


「幽霊、見たくはねーか?」


レイアウトなど見難い点があったら言ってください。

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