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御曹司の興味物(なろうver)  作者: 鶯花
始まりの日
5/32

4

溯夜視点。

ーー彼女を見つけたのはただの偶然。でも出会いは必然の行為だった。




欲が見え見えの行動。コネクションが増やせるということで、叔父が学長であるこの学校に転校してきた、というか父親がここに追いやったのだが…寄り添ってくる人々にイライラしていた。


叔父が学園長なので、好き勝手過ごせるところはいいことだった。学ぶことが目的ではない俺は(既に卒業資格は得ている)叔父の仕事を手伝いつつも毎日を過ごしていた。だが最近、厄介な奴がいてイライラさせていた。


そいつの名前は常盤姫香ときわひめか。毎回のごとく俺に寄り添ってくる。あからさまな媚を売ってくる奴みたいな人種は俺が一番苦手とする人種だ。

生徒会室にこもってきても、奴は生徒会の一員のため意味がない。捕まらないように昼休みになるとどこか別のところに逃れるのがここ最近の日課になっていた。その時に彼女・・に出逢った。

俺たちは互いに逃避できる場所を探していたのだ。


普通彼女のような行動を見かけると、彼女本人の言うとおり変な奴だと思うかもしれない。だが、彼女のような眩しい笑みはいつも見かけているどこか含みのある笑みとは全く違っていた。

そんな笑みに俺は惹かれた。俺はごく単純な理由で、彼女をその場所で待つようになるのが日課となった。彼女が怯えないように、見つからないように。




気になり出したら、止まらない。それが俺の性格だったようだ。

そこまで執着するものも無かった俺にとって、彼女との出逢いは新しい自分を見つけることにもなった。直ちに俺は彼女のことについて調べ始めた。


彼女は常盤朱莉。なんとあの常盤姫香の姉らしい。

にしても、学園長である叔父が朱莉の担任の先生に聞いたところ、彼女は空気のような存在なのだと。それは普段の彼女のことを観察していればよくわかる。


生徒会執行部にはいくつかの特権があり、学校の治安を守るためというのが名目で学校中にある監視カメラを見ることが出来るのだ。俺はそれを使い、彼女のことを観察していた。

俺の場合、学園長である叔父の手伝いをしていたから、そんなことは簡単に出来るのだが…




「そこまでするのか? 溯夜」


俺は彼女のことを調べ尽くした。そして、家から出たがっていることが分かると、彼女をこの家に住まわせたらいいのではないかと思いついた。もちろんその理由もわかっているし、それを学園長でもある叔父さんに話している。しかし叔父さんには抵抗があるようだった。


「和人叔父さん。これは朱莉を救うための行為だ」


理由は彼女の家庭に問題がある。彼女自身再婚した母親の連れ子であり、新しい家族と上手く行っていないのが原因だ。もう一つ原因があるが…それは別の機会でだ。


「彼女の親に許可を取ります。それで問題ないでしょう?」


「いや、そうでなくてな…」


叔父さんは何か言いたげだが、無視する。言いたいことは分かるが、俺自身限界なのだ。早く彼女に触れたくてたまらない。彼女の全てを掌握したいのだ。


「とにかく止めても無駄ですよ、叔父さん。このことは両親に伝えてもらって構いませんので」


俺の両親は海外にいることのほうが多い。彼らの仲は俺さえも入り込めないほどに良好である。

何でそこまで異性を愛せるのか疑問だった俺は、朱莉と出逢うことによって答えが分かったのだ。




「朱莉?」


腕を彼女に巻きつける。初めて彼女に触れることが出来た。


「あかり?」


彼女は現実逃避をしている。そこに付け入る隙があるのではないかと俺は考えた。


「あーかーりー?」


だから俺は堂々と来て、朱莉を捕まえに来たのだ。


朱莉がこっちを見てくる。食べたくなるような可愛らしい瞳だ。

あー。意識を失ったか。このまま俺の中に閉じ込めてしまおうか。


「さてと」


俺は可愛い朱莉の額にキスをした。周囲から悲鳴が上がったような気がするが、俺には関係ない。

彼女をお姫様抱っこをして、家に連れて帰ることにする。今日から朱莉の家にもなる場所でもあるが。


「溯夜!!」


「修斗、あいつらをどうにかしろ」


やってきた修斗にそう告げる。あいつらとは俺たちを取り巻いている邪魔な奴らのことだ。


「えー、ちょっと待ってくれよー! 溯夜ー!!」


修斗を無視して朱莉を家へ連れ帰った。




俺はあの(・・)症状を警戒したが、朱莉はスヤスヤと眠っていた。

最近寝不足だったのだろう。目の下には隈がついている。彼女自身気づいてはないかもしれないが…


叔父さんは仕事が忙しいらしい。

いつもなら俺も手伝うところだが…朱莉の看病をするということでここにいる。


朱莉は現実を見てはいない。

ずっと幻想の中…簡単にいえば頭がお花畑状態といえばいいのだろうか。

周囲に対して薄い膜を張って今を生きている。


その原因となったのは、最愛の父親の死。それを引き金のようにして、不幸なことが重なりすぎた。


特撮好きなのは、父親の影響だ。父親は特撮がとても好きだったらしい。

朱莉の父親の志間昇しまのぼるは皆に大層好かれる性格だったようだ。そして、娘である朱莉にも優しかった。


特撮に縋り付いているのは父親といた過去に帰りたいがため。それくらいに彼女の心はボロボロになったのだ。

その原因となった奴らを俺は赦しはしない。

決して。




朱莉があそこから離れることによって、今を見れるようになったらーー

それからが本番なのだ。






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