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分割した分なので短いです。
「溯夜。家のこと話した?」
「まだだ」
特撮トークに花を咲かせた私は会長に親近感を持った。私の話を聞いてくれるなんて、会長はいい人だ!!
ちょっとスキンシップ過多なのは気になるけど、そこまで怖い人ではないということが少しだけだけどわかった。ほんの少しだけ。
「朱莉」
「はい」
よーし。今回はイントネーションが変にならなかったよ~。
「今日からここが朱莉の家だ」
「そうなんですかぁ~!」
フカフカ最高!! ここに住めるなんて幸せものだね! って、え?
「城野護さんからも、志間徳さん、志間佐智恵さんからも、あと余談かもしれないけれど、常磐夫妻からも了承を得てる。まあ常盤夫妻は城野さんがOKしてくれたから、それで許可した感じだけど」
えっ…
熱が一気に冷める。
護、おじさんが許可を出した? この人何者?
「…それは本当ですか?」
さすがに親代わりの護にお祖父ちゃんお祖母ちゃんの名前出されて、嘘なわけがない。
会長の言ってたことって…もしかして事実? 嘘じゃないの? ホントウノコト?
「あのー、自分で言うのも何だと思いますが、私変人ですよ?」
「朱莉だからいいんだ」
そんなこと言われてもなぁ…まあ、いいか。あそこから離れられるならどうでも。それに護が許可したなら。若干怪しいところはプンプンするけど…あとで護に聞けばいいし。お電話借りようかな。
「荷物は?」
「今頃、俺の部屋に運んでいるだろう」
そうか、それなら良いんだ。
えっと、会長に礼を言わないとなぁー。あの家から抜け出せたことに対して。
「会長。ありがとうございます」
「溯夜」
「へ?」
「名前で呼べ。それ以外は俺が許さん」
あ~、なるほど。一緒に住むことになったから名前を呼べと。
戦隊物でも名前で呼び合ったりするもんね!!
「じゃあ、溯夜さんで」
そう呼んだ瞬間、会長…もとい溯夜さんは誰もが魅了される満面の笑みを浮かべた。
こういう顔もできるのかと思った。学校で見る溯夜さんは笑顔なんてみせることなかったし。
最初は雲の上の人だって思って全てが恐れ多かったけど、話したらそうじゃないことがわかったし、ちゃんと私の話しを聞いてくれたのは本当に嬉しかった。
もしかしたら…さっき好きといってたのも、あながち嘘ではないかもしれない。
ーー私はこのとき知らなかった。
部屋が変わるだけで、何も変わることの無いと思っていた生活が、180度変わってしまうことを。
彼の独占欲の強さ、好意の強さを。
現実の全てを知らないふりをし続けてきた私は気づけなかったのだ。
次は溯夜視点。