23:side修斗
長いので分割しています。だいぶ改稿しています。
「おっはよ~う!!我が愛しき妹よ!!」
「おはようございます、お兄様。朝からお元気ですね」
学園へ行く前に毎日やること。それは、妹である真矢に会うこと。
「早朝のトレーニングを終えて、シャワーを浴びたから、目がさっぱりしているんだ!!」
「それはいつものことでしょう?」
俺たちは6歳年下で御年12歳になるこの天使を溺愛している。経緯は…まあそうだな。この暁家において、真矢のような人間は珍しいからってことになるかな。
俺たち暁家は皇城家の身近に存在する盾だ。目に見えない悪意を退けるのが葛ノ葉家だとしたら、暁家は目に見える悪意を退けることが使命だな。
例としたら、小さいときは身代金要求の誘拐とかだ。よくある話なんだよこれが。そんなときは俺たち暁家が身を張って、撃退することになる。ときには命だって張ることも…ある。
だから、俺たちは鍛えなきゃいけない。あらゆる状況に対応するために、対応策を小さいころから叩き込まれた。そんなんだから、必然的に暁家には身体が強いやつが多い。
真矢はその逆で身体が弱いから、珍しいという意味合いもあって重宝されて、溺愛されるのかな?
「そうだな…溯夜に会えるから、こんなに元気なのかもしれないな!!」
俺たちの家族はこの天使が振りまくマイナスイオンに感化されている。ひたすらに、この言葉に限る。
とにかく可愛いのだ。
それにこの天使は、相手の心が読める。いや、心の奥に抱えているものを浄化する、といったほうがいいのかな?
カウンセラー…みたいなものだろうか?いや、何か違うな。自身の癒しの雰囲気をもってして、相手の心を楽にさせる。そして最短の解決策を啓示して皆を救う、小さい天使だ。
多分その能力を得るために、身体の丈夫さを犠牲にしているのだろうな。
「そうですか…私もお兄様みたいに身体が丈夫であれば……」
これは真矢の口癖だ。生まれたときから、身体が弱い妹は外出もまともに出来ない。治る見込みも…無いだろうと言われている。
「そう悲観するな。今度溯夜を連れてこよう」
「本当ですか!?」
曇っていた表情が溯夜の言葉を出した途端に華やいだ。天使は溯夜に対応して、こんな表情を取ったわけでは…断じてない。
好奇心が旺盛で、外部から来る人間に対しては、誰でも興味を持つ。溯夜でなくてもな。
ああ、そういえば…溯夜の話題が出たから今のうちに天使の意見を聞いたほうが…良いのかな?
俺は悩み事があったら、できる限りこの天使に相談する。これは両親も同様だ。
中には、天使には聞かせられないような悩み事もある。その場合は相談することは無いけど…今回の場合はまあ良いだろう。
「真矢、常盤朱莉ちゃんの話はしたよな?」
「ええ、溯夜さんが一目惚れした御相手でしたよね? すごく魅力的な人でしょうね。いつか御会いしたいです」
「いつか会わせてあげる。で、その常盤朱莉ちゃんの妹が常盤姫香なんだよ」
「…そうなんですか」
常盤姫香のことは前々から話していた。溯夜ファンクラブの筆頭格で、溯夜を付け回していたからな。
溯夜から嫌われているし、俺は何とも思っていないが、あの付け回しようは俺から見ても…不快に思う節がある、という話を真矢にはしていた。因みにいっとくが、これは俺の本心な。
「私が聞いた限りだと…御二方の性格は似ていないようですね」
まあ、そうだな。姉妹というものはあんなに似ていないものなのか?と疑いたくなる。
一方は生徒会の一員で、執行部の俺らとまではいかないが、人気を博し溯夜のファンクラブの頂点に立っている少女。
もう片方はガキンチョのおもちゃをこよなく愛し、ボーッとしていて、溯夜の家に住むまでは空気のように扱われていた少女。
「ああ、そういえば性格だけじゃなくて、容姿も違うんだよ。妹のほうは朧よりも派手めで、巷でいうところの…可愛い? 美少女で髪がストレートヘア、姉のほうは…うーん」
「お兄様?」
「いや………印象に残ってないや」
本当に印象に残らない。それが普通なのか、整っているのかも…
「…端正な目鼻立ちだったら記憶に残るよな」
「お兄様」
「何だい? 我が愛しき妹よ」
「お兄様の基準が高すぎると思います。朧さんは私から見ても絶世の美女です。そんな彼女と一緒になる機会が多いとなると、“美女” も “普通” になってしまいます」
「そうなのか?」
そこらへんは…よくわからないな。俺は首を捻る。
「お兄様、それでもって本題は何ですか? 朱莉さんと姫香さんが姉妹で、性格や顔立ちも似ていない、としか聞かされていませんが…」
「あ、そうそう。それだよ。えっとな、あれは6月前半のある日、つまり一ヶ月とチョイ前の話なんだが…」
俺は、今までとは一転させ、真面目な顔をして、話し始めた。話す…というよりも、この天使に告白する、といえば良いだろうか?
神の前で罪を告白し、赦しを乞うような感じがした。




