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御曹司の興味物(なろうver)  作者: 鶯花
いじめ・釘を刺される
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10

馨 → 朧 視点。

溯夜は他人に関して酷く無関心だ。

それゆえに、無関心な人々の対応を怠った。このことが今回のことを引き起こしたのだろう。


だからといって、一番悪いのは防ぎきれなかった溯夜ではない。常盤さんを傷つけた加害者だ。


映像を観て気になったのは、率先していじめを行っていた常盤姫香のことだ。彼女のことは、溯夜を非常に好いていて、追い回したりもしていたために、以前少し調べたりした。


常盤姫香は典型的なお嬢様タイプで、気に入ったものには優しく、気に入らないものには冷淡な態度を取る。あの反応や言動を見る限り、姉の常盤朱莉さんは好かれていないということが良く分かった。


そして、すぐに姉に対して暴力を振るったあの行動。色々と複雑な事情があるに違いないな…と僕は思った。




「はあ〜、貴方達やったことの重大さがわかっているのですか?いじめは重大な犯罪ですよ」


僕はこれでも怒っていた。主犯である、常盤姫香の通り調べだ。


「だって葛ノ葉様、ご説明した通り、異父姉ねえさんが…」


「いやどう見ても君たちが悪いから。暴力はダメだって親から習わなかったの? 反省、懲罰行き、は今やってるか。場合によっては両親呼び出すから」


「ま、待ってください! そ、それだけは…」


ことの次第を理解したのだろうか。今まで動かなかった常盤姫香が親のことになるとすぐに動き出した。

今までとは違う、余裕のない表情で。


「何、それだけはって。君はそれほどひどいことをしたんだ。今後は二度とやらないっていう保証はどこにもないんだからね」


そういうと黙った。何か言いたげだったけれどもそれをぶつぶつと内に押し込めた感じかな。


「指導教諭の先生も修斗と一緒にいらっしゃるから、そこのところはちゃんと理解してよね。 “家の事情を外に持ち込まないこと” 」


というと、常盤姫香はわかりやすい顔をした。


これ、常盤朱莉さん、常時虐待されてた可能性あるよね…親も加担してた可能性もあるかも。

闇が深い家も多いしね(僕も言えたものじゃないけど)。この学園に通っている人たちって。それでも頑張って学園へ通ってるんだから、学内の風紀を乱すようなことはやってほしくないなあ。ほんと。






+++






「全く…このことは貴方の周囲への無関心さが引き起こしたものよ」


「ああ…その通りだ。反省している」


「まあっ! あの皇城溯夜が反省ですって!? 貴方を良く知る私としては大変驚愕ですこと!!」


今、私と溯夜は保健室にいた。朱莉ちゃんはベッドの中にいる。


「当分のダンスレッスンは中止ですわね。朱莉ちゃんはしばらく安静にしておかないと。今週末のダンスパーティー、貴方と踊るのは到底無理だわ」


「そうだな。俺は少し焦っていたんだ」


「私もそう思います。貴方は女性に関することが分かっていないのでは無くて? 今まで無関心だった女性達の心情なんて…考えたこともないでしょうね。朱莉ちゃんを自分の手元に引き入れることだけに必死だったのでしょう? でも、それだけでは朱莉ちゃんを手に入れるなんて…不可能よ」


私は本当のことを言ってあげた。目の前にいるのは何をやっても人並み以上に出来る完全無欠の御方。

そのことは傍にいる私でも認めるけれども、このことについてはそうは思わない。人間味、思いやりがないのだ。


「そうだな…」


「とにかく、生徒会室へと戻りましょう。ここにいても邪魔なだけだし、朱莉ちゃんは到底目覚めそうにありませんからね」


私達は生徒会室に戻った。


「朧」


「何?」


「聞いて欲しいことがある…朱莉のことだ」




そこで溯夜から聞いた話は私の想像を絶する出来事だった。絶句する。言葉が出ない。


「この話を聞いて、どう思う?」


「そうですわね…常盤宗治さんも、麗華さんも…そして姫香さんも…最低ですわね。これなら、逃げ出したくもなるでしょうよ」


義理の父親には無理矢理行為を強要され、母親や異父妹には冷淡に扱われ…朱莉ちゃんにとっては逃げたくなる環境が整い過ぎていたと言うしかない。


「そんな背景があるなら尚更のこと、溯夜は朱莉ちゃんの心情を考えることが重要。あと、気長に待つことね。簡単に心傷が治るとか思っているかもしれないけど…それは間違いよ」


「分かった」


「うーん、これは貴方が思っている以上にデリケートな問題ね」


私はしばし考える。彼女にしてあげられることが少ないとは思いつつ。


「馨にはこのことを話しても良いかしら? 朱莉ちゃんと関わる身になる以上、信頼のおける人が必要だと思うの。修斗はこういうことには口が軽いし…あまり信頼が置けないのよね」


馨はこの問題のことをわかってくれる。私はそのことを確信していた。


「分かった。だがこのことは俺たち以外、他言無用だ」


「もちろん」


そうして昼頃になり、修斗と馨は帰って来た。






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