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暴力表現ありです。
モヤっとあかりん → 馨 → 溯夜 視点。
ー朱莉…貴方は私と"同じ"血が流れているのよ?いずれ貴方も私と同じように男を誑かすでしょうね?ー
誰かの声が聞こえた…ような気がした。
気がついたら、学園内に私はいた。隣には溯夜さんがいた。
「おはよう御座います! 溯夜さん!」
「ああ、おはよう…」
溯夜さんはじーっと私を見たまま、動かない。うーん、どうしたのかなぁ~?
生徒会室へと連れて行かれた。ここに入るのは、始めて。
悪の本拠地に潜入したみたいにワクワクするなぁ!!
「溯夜、おはよう!!」
そう呼びかけてきたのは、暁様。葛ノ葉様や瑞貴様もいらっしゃる。
「溯夜、どうしたの?何だか眠そうよ?」
「ああ…」
うーん、溯夜さん確かに眠そうにしてるなぁ~。
あっ!! そうか!!
夜遅くまで私にはわからないような難しいことやっていたんだろうね!! ふむふむ…なるほどね…
「寝る。しばらく起こすな…」
そういって、溯夜さんはソファーへと沈みこみました。
「じゃあ、私も教室へ行きますね!!」
私も教室へ向かうことにする。
今日はどんな妄想をしながら過ごそうかなぁ~?
教室に入る。
私が入ってきてもいつもは何も変わらない風景なんだけど…なんか違うような?
まあ、どうでも良いや。と思いつつ、席に着いたその時だった。
「異父姉さん! どういうこと!?」
「あー、姫香ちゃん!!どうしたの?」
私の異父妹の常盤姫香ちゃんが教室に来ていた。姫香ちゃんは私の一歳年下だ。
異父姉妹だといっても、私は常盤家に行くまで彼女の存在を知らなかったんだよねぇー。
姫香ちゃんは皆のアイドル的存在だと私は聞いている。
つまりクラスの中心的存在。クルクルと表情を変えて、皆に愛嬌を振りまく美人さんだ。
誰に似たんだろうねぇー。
とにかく、そんな姫香ちゃんと空気のような存在である私とが姉妹であることを知っている人はあまりいないんだ。
というか、私の存在を知っている人がほとんどいないし…
姫香ちゃんは私の性格が嫌いだから、私もそれに合わせてあまり話さないんだけど…どうしたのかな?
「どうしたもこうしたも!! 異父姉さんが溯夜様のところに住むことになったのは本当!?」
「うん、本当だよ………あれ?どうしたの? 皆?」
そこにいた皆がざわざわしてた。どうしてかな?
「今すぐ溯夜様から離れて頂戴! 溯夜様は私のものなの!!」
「すごい形相だねー。役者になれるよ。姫香」
バシッ!
頬に痛みを感じたような気がして何時の間にか私は椅子から吹っ飛ばされていた。あれ、ちょっとやばいかも。周りの空気も一変したのを感じた。目立っている。
「貴方のそんなところがいつも腹立つのよ! 何を言ってもヘラヘラしてて、言うことを一切聞いてくれやしない!! …もう一度言うわ。溯夜様に関わらないで頂戴!!」
「姫香は私に溯夜さんと関わって欲しくないの?」
バシッ!
さっきは右頬を叩かれたような気がするけど、今度は左頬かな? 良くわからないや。頭がぐるぐるする。
「貴方…よくもあの尊き方をそんなふうに仰ることが出来るわね! 庶民風情が出しゃばるんじゃないわよ!!」
そして私は姫香に殴られたり、蹴られたりした。周りの皆も加勢してたかな? 良く分からなかった。
今日は本当にボーッとしてて…そのことすら覚えてなかった。
「朱莉!!」
それも、少しの時間だった気がする。
溯夜さん達が来たから、私は意識を失った。
+++
朝、溯夜と生徒会室で会った。
彼はすごく眠たそうにしていたため、ソファーですぐに眠りにつこうとした。
その時だった。
「皆! これを見て!!」
朧が叫んだ。何事か? と僕と修斗は駆け寄った。
そこにあったのは、監視カメラの映像で…常盤ちゃんがいじめられていた。
「溯夜! 常盤ちゃんが!!」
「何!?」
溯夜はすぐ起きた。そして、目の前にある映像を見て驚愕した。
「あのウジ虫どもが!」
そんなふうに罵倒するのも珍しい。
「溯夜! 悪態をつくのは後だ!!」
とにかく、このままこの行為を容認するわけにはいかない。僕たちは常盤ちゃんの教室へと向かったが…
生徒会室を出た先には溯夜の親衛隊がいて、こちらの行く先を邪魔して来た。
なるほど。これは溯夜の親衛隊が連携しているのか。決して常盤姫香だけの行動ではないんだな。と僕は思った。
それにしては、常盤ちゃんへのいじめは堂々と行われていたが…
「全く貴方たちは御自分の感情だけに正直なのね!」
「ああ、俺もそう思うぜ!!」
朧、修斗。
これに関しては僕も怒りを感じない訳がない。彼女達を掻き分けて、僕たちは走る。
+++
俺は俺にまとわりつく女子を舐めていたと後悔することになった。
朱莉自身のことだけに神経を使い過ぎたようだ。そのために、彼女を他のものから守れなかった。
心も身体もボロボロになった朱莉を抱き締める。これは俺が早く本来の彼女の姿を見たいと思った結果なのか?
彼女の心傷は深いはずなのに、それが早く治ると勘違いした結果なのか?
早く、早く…と彼女を強引に急かしてしまった結果なのだ。
それは…俺の責任だ。ちゃんと受け取らなければならない。
後悔は後にしよう。いくらでも出来る。
それよりも優先させるべき事柄は…
「お前ら…こんなことをして良いと思っているのか?」
「さ…溯夜様…」
「人に暴力を振るうなど、正気の沙汰ではないな…嫉妬とは怖いものだな」
目の前のゴミ屑の輩に怒りを撒き散らすわけではなくーー
「失せろ」
ーー朱莉を保健室へ運ぶことだ。
俺の気迫に怯えでもしたのか、集まっていた人垣が割れる。
「馨、修斗。後を頼む。朧は俺と来い」
そして、俺は朱莉を抱えて保健室へと急ぎ向かった。




