75.黒塔古都の夢
──それは酷く鮮明な夢。
『来たぞ! 魔物の群れが来たぞー!!』
世界最高峰の山岳の麓。
遺跡のような建物が立ち並ぶ街並みは、時の流れに置いて行かれたような悠久さを感じる。
そんな街並みとは対照的に、旅人達の粗雑な賑やかさと活気のある大通りを、大声を上げて走る1人の兵士。
カンカンカン!
ほどなくして、街中に魔物の襲来を告げる甲高い警鐘の音が鳴り響く。
明らかな異常事態を告げる音が鳴り響く中、街は特に混乱も無い様子で、店の入り口は固く閉ざされ住民達は住宅街へと消えていった。
そして魔物に対応するのだろう、武装した旅人達が大通りに集結していた。。
『街の中なのに魔物が出るのか?』
一連の光景を宿屋の部屋の窓から、名物の果実を食べながら見ていたアクトは首を傾げる。
普通であれば街に結界が張られており魔物が入ってくることはない。
しかしこの街には結界が無い上、魔物の群れが襲ってくるという。
『この街は、昔ながらの街並みを保ってるからな。 当然、結界なんて便利なものは無い!』
エリィが剣を携えながらそう答える。
隣ではミシェも槍を手に取り準備万端、という感じだった。
『なんだかよく分からないけど、よく魔物の群れが襲ってきて、それを退治するのは滞在してる旅人のマナーなのよ。 って訳で、アクトも行くわよ』
『え、オレも?!』
ミシェの言葉に、ナナを頭の上に乗せてお留守番モードだったアクトが驚く。
『最前線が取りこぼしたスライムだけで大丈夫だから。 スライムなら楽勝で倒せるでしょ?』
『ま、まぁスライムなら……』
『なー……』
アクトも武器を取り出して、
3人と1匹は戦場となる街の大通りへと向かった。
大通りに着くと、ほどなくして地鳴りのような音と共に魔物の群れが押し寄せてきた。
スライムを始めとして、獣や鳥など多種多様な魔物の種類に目を見張るものがあるが、黒帝竜の群れに比べれば大したことが無いというものである。
『あの巨大怪鳥、硬くて全然刃が通らないぞ……!』
『任せろ、てやー!』
エリィが剣を振るうと、金属のような羽に包まれた鳥の翼が切り落とされ、地上に落下する。
『誰か、あの三つ目の巨人を止めろー!』
『ああいうのは目を潰せば大丈夫でしょ、はっ!』
ミシェが槍を突くと、巨人の身体が大きくよろけ、倒れこむ。
そこをすかさず他の旅人が追撃を行った。
『あの2人やっぱスゲーなぁ』
『なー』
アクトは、そんな混戦状態の合間を縫うようにコソコソと動いているスライムを倒していた。
『そろそろ終わりそうね』
数刻後、襲来する魔物の数も減ってきて、片付けや魔石拾いをする旅人が増えてきた頃、ミシェとエリィは武器を仕舞って戻ってきた。
『スゲー、なんとかなるんだな』
『これだけ人手があれば、楽勝だな!』
『魔物ではあるけど、この街の恒例行事みたいなものだからね。 ただ最近もあったばっかりって話だったから、ちょっと気になるけど……』
魔物の襲来は終わっていないが和やかな空気の中雑談をしている最中。
フッと突然空が暗くなる。
人々が空を見上げるとそれは陰りではなく。
空が赤紫色に染まっている色だった。
『な、なんだ、アレ……?!』
しかし不吉な空の色より目を見張るものがあった。
それは、黒い太陽ともいうべき、巨大な黒い球体。
次の瞬間、巨大な黒い球体から強烈な衝撃波と光が発され、辺りを包んでいく。
そこで、夢はプツリと終わった──
旅の再会です!
毎週月・水・金曜日21時更新を目指して頑張るので、引き続きよろしくお願いします!




