377.
「お、ここがさっき話した行き止まりの場所だな」
「なー」
アクトとミシェが見つけた地下への入口からほぼ暗闇の地下通路入り、一本道を歩くことしばらく。
アクトの持っている蝶々結節の灯りの光が進行方向の壁に当たり、行き止まりを指し示す。
後ろから着いてきていた他の面々も次々に顔を出す。
「確かに行き止まりだな」
ルフナスカが杖で壁を叩くとゴンゴンと鈍い岩壁の音がする。
「ですが間違いなく"先"がある気配がありますね」
岩壁をペタペタと触りながらエルヴィーラが頷く。
「そうなのよ。 でもどれだけ攻撃しても全然ビクともしなくって……」
「ミシェの攻撃で無理なら魔術でも簡単に壊れなさそうだな」
それから魔術をいくつか撃ってみたり改めて物理的に壊そうとするなど、主に岩壁を壊す方向で調査が始まった。
「結論からいうと……魔力による空間偽装に近いですね」
ひととおりの試せることは試し、調査の結論としてエルヴィーラが呟く。
「それにしては魔力の気配の方の遮断がお粗末だな、気配が残っていたらここにあると分かり切って意味無いではないか」
「でもこれだけ何してもどうしようもないってことは、突破されない自信があるってことじゃねぇの?」
アクトの言葉にルフナスカがムッとした顔になる。
「腹立たしいが、魔術でも物理でも壊れないなら一理あるな。 何か突破方法はありそうか?」
「あくまで魔力による空間偽装ですから、勿論ありますよ。 エリィ、頼めますか?」
「俺の出番だな、任せろ!」
腰に挿してある魔断剣を抜きながらエリィが言う。
「剣を壊さないように丁寧そっとにだぞ、力任せに斬るなよ。 魔断剣は繊細なんだから壊すなよ、刃こぼれもさせるなよ」
魔断剣を修理士であるルフナスカが睨むようにジッと目を細めながら呟く。
「……分かってますよ、任せて下さい!」
少し不貞腐れた顔をしてから、エリィが振り上げた魔断剣を壁に向けて振り下ろす。
先程までの岩壁の音が嘘のようにスゥッと壁に剣先が突き刺さり、ケーキを斬るようにそのまま地面までストンと刃が辿り着いた。
その後、行き止まりだった岩壁には人1人が通れそうな穴がぽっかりと現れた。
「これは……階段?」
ミシェが穴の中に蝶々結節の灯りを向けながら言った。




