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「よし、じゃあ黒帝竜調査隊について詳しく説明するぞ!」
クルクノス王城の一角にあるミシェが王城に滞在に使用している客間のリビングルーム。
会議室は国内の治安維持について引き続き話し合うということで、調査隊として指名されたアクト達5人と1匹は客間の方へ移動してきたのだ。
客間はアクト先日見た風景とあまり変わっておらず部屋の中央のテーブルにお菓子が並べられており、各々が好きな位置に座る。
「全員顔見知りだと思うけど、先に自己紹介しておくか! 俺はエリエッシュロ。 今回は、父上から調査に関する全権を貰ってるから、分からないことがあれば何でも聞いてくれ!」
えへんと威張りながらエリィが自己紹介をする。
全然凄そうではないが、こう見えて第1王子……この国の次期国王である。
国王に全権を認められるということは、それなりに信頼もされているのだろう。
剣の腕前が折り紙付きであるのは、アクトも先の旅路で分かっている部分である。
「じゃあ次はオレか。 オレは輪転の軛のアクトール・アルバ。 何で指名されたのかはよく分からないけど、時計屋として魔法道具については任せてくれ。 こっちは相棒のナナだ」
「な~」
ナナを持ち上げながら、アクトが自己紹介をする。
実際、なぜ指名されたのかはよく分かっていない。
実績といえば先の旅路で黒帝竜の居場所を調査する魔法道具を納品したことくらいだが、それも用済みではあるので、やはり謎である。
「次はあたし? あたしはミシェ、旅の竜殺しよ。 一番部外者だと思うんだけど、あたしここにいて大丈夫なの?」
ミシェが不思議そうにしながら自己紹介をする。
ミシェに至ってはこのクルクノス王国の国民ですら無いのだから、当然の疑問だろう。
黒帝竜の調査隊という意味では、ドラゴンの専門家である彼女は間違いなく適任だろう。
エリィが「あとで説明するな!」と言うので、自己紹介が次に進む。
「エルヴィーラ・ウォルセントです。 恐らくエリィの手綱を握る役で指名されたと思いますので、よろしくお願いします」
相変わらず人形のような整った無表情で、丁寧に頭を下げるエルヴィーラ。
エリィが「ひどい!」と言っているがきっと気のせいだろう。
こちらも先の旅路で色々と頼りになる人物だと分かっているので、アクトとしては特に気になる事は無い。
そして最後の1人こそが、先の旅路にいなかった人物であるが、王族のエリィと大貴族のエルヴィーラは当然知り合いだ。
アクトもミシェもそれ以前から名前は知っている上、先の旅路で顔は合わせたことがある。
ただ短時間であったので正直ほぼ初対面と言っても差し支えはない。
黒髪を雑に後ろに束ね大貴族にしてはラフな黒シャツを着ている男性。
胸元には逆に貴族にらしく、深い紅色に輝く大粒の宝石をあしらったループタイを付けている。
「ゼノディア・グロッシュラーだ。 ドラゴンの専門家として呼ばれたのだろうが……指名されたからには最善を尽くそう」




