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敵幹部が仲間になりました

 半刻(一時間)後。清州城の謁見の間には、死に装束姿の勝家の姿があった。


 その姿には、利家や慶次、秀吉などは面食らっているが、信長は眉一つ動かさない。


 ――この謝罪の仕方、五〇〇回以上見たなぁ……まっ、勝家にとっては一回目だけど。


「勝家、その恰好はどうした?」

「はい、本日は、切腹の許諾と、信長様自らの介錯をお願いしたくまかりこしました」


 ――うん。千度の人生でもだけど、こいつ真面目なんだよな。


 勝家は信勝についたが、そのことで勝家を攻める気はない。千度の人生に加えて、今世では信長と年が近く、幼い頃から信勝の家臣として一緒にいたため、平成風にたとえると、弟の女友達、みたいな感覚で、彼女の性格はよく知っている。


 彼女は決して悪意ある人間ではなく、ただどこまでも、主君に尽くすタイプなのだ。


 彼女は信勝の重臣。だから主君信勝の望み通り、彼に協力していたに過ぎない。


「主君の器を見抜けず、諫めることもできず、信勝様の謀反も止めず、家中に不和を招いたのはひとえに私の責任。私には、織田の臣下たる資格がございません」


 勝家が額を床につけ、深く土下座をすると、信長はやや気後れする。


「いや、そんな気にしなくても……それにお前が主に忠実なのも、凄ぇ強いのも知っているし、これからは俺に仕えて償ってくれればそれでいいよ。それにもうその堅苦しい喋り方やめろよ。俺ら幼馴染だし、昔みたいに気軽にしていいぞ、勝姉」


 信長の提案に、勝家の背中が強張る。それから、ゆっくりと涙に濡れた顔を上げると、勝家は再び頭を下げた。


「ありがたき幸せ。この勝家、誠心誠意、お仕えします!」


 勝家のことは、信長の舎弟たちも知っているので、長秀や信盛、恒興などの三馬鹿や、利家は『これで勝姉もようやく自分らの仲間だな』と平和そうな顔をしている。


 ただ、信長としては違う想いもあった。

 突然だが、武に生きた柴田勝家は生涯、事実上の未婚で、色恋には縁遠い人だった。


 それは、つまり……。


 ――これ以上行き遅れさせるわけにはいかないからな……今世では結婚させてやりてぇ。


 信長は思い出す。

 若い頃は『私に男など不要。私は武に生きるのみ』とか余裕ぶっこいていた勝家が晩年、部下が結婚するたびにヤケ酒を煽り、むせび泣く姿を。


 ――虚空に向かって、空気夫と会話している姿を見たときは哀れすぎて涙が出たぜ。幸い勝家は黙っていれば美人だし、利家以上の爆乳爆尻だし探せばきっと――。


 信長の思考を遮るように、勝家は立ち上がり叫んだ。


「信長様。信勝側の逃げた連中はみんな尾張最後の反抗勢力、織田信賢のところに逃げ込んだ。連中との戦では、あたしを最前線に配置してくれ!」


「おう、そのつもりだ」


 勝家は握り拳を作りながら、大きな口を開けてがなりたてる。


「うっしゃああ! 見てろよ信賢! 家来共を全員くびり殺しててめぇらの首ももぎとってやんぜ! 今日からは日課の瓦割りを五〇枚から一〇〇枚に倍増だぁあああ!」


 足を広げたがに股で、勝家は火を噴くようにして叫んでいた。


 勝家の爆乳が、死に装束の下で激しく揺れ、上下左右に暴れまわり、前合わせが開いてしまい、深い谷間を見せる。

 同じように、ダイナミックに弾みあがる安産型のお尻のせいで、帯がゆるんで、大惨事が起こりそうだ。

 自動脱衣など、どれほどの振動があれば起こるのだろうか。ただ、その姿を前にした信長の舎弟たちは、一切の煩悩を感じさせない、仏像のような表情だった。


 ――ごめん勝家。やっぱ無理かもしんない……。


 勝家の色気のなさに、信長はドン引きだった。



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