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交通機関は無料!(関所撤廃)

 次の日。信長は領内中の豪族や公家といった、小領主へと書状や伝令を飛ばした。


 内容は至って単純『わたくし信長領では一切の関所、通行料や通行税を廃止します。三日以内に従わない人は所領召し上げお家取り潰しのうえ打ち首に処します』


 それから三日後。信長に従う意思のある一部の豪族や公家は、関所を次々取り壊しはじめた。だが、大多数の者たちは信長への反意を隠すことをやめ、挙兵しはじめた。


 それを知った信長は、ノリノリでその有力者たちに所領召し上げお家取り潰しのうえ打ち首という沙汰を下す書類に花押サインをすると、すぐに舎弟たちを町へと走らせた。


 その日の夕方。舎弟のひとり、佐久間信盛が領内の町なかを走りながら声を張り上げた。


「大変だみんな、戦になるぞ!」


 その声に釣られて、通行人や商店の店主たちの視線が動く。それから涙ながらに、

「信長のアニキはみんなの暮らしが楽になればと通行料と通行税を免除にしたんだ」

 その言葉には、商人たちを中心に誰もが注目した。通行料や税がなくなれば、商品の輸送量、仕入れる代金がぐっと安くなるからだ。


「なのに欲深な豪族や公家共がみんな反対してあまつさえ信長のアニキを殺そうと挙兵して戦争をしかけるんだぁああああ! ひどいよひどいよおーいおいおいおい!」


 そのあまりにも惨めで情けない姿に、町人たちは同情の念を感じつつ、あまりにも傍若無人な豪族や公家、道路の所有者である地主たちへの怒りに燃えた。


 当時、多くの領民は多すぎる関所とそこで徴収される通行料や通行税に頭を悩ませていた。平成風にたとえると『交通機関無料』ぐらい素晴らしい政策だった。


 町中から『信長様は領民の暮らしに目を向けてくれる良い領主様だ』『それに引き換え地主共はふてぇやろうだ』という内容の声があがる。


 小領主へのヘイトがいい感じに溜まり、アンチ小領主の空気ができると、信盛は地面に突っ伏して泣くフリをしながら、悪魔のような笑みを浮かべる。


 こんな光景が、そこら中の町で展開された。


   ◆


 次の日。小領主たちが信長へ戦をしかけるべく、地元民を徴兵しようとするが、


「あっあぁあん!? 信長様に戦しかけるから協力しろだぁ!? てめぇらクソ領主なんかに誰が協力するかボケェ!」


 徴兵に来た使者たちに、庶民たちはヤクザも真っ青の表情でメンチを切り、刀や槍をチラつかせた。


 当時の農民たちは徴兵で戦経験をするのが普通で、どこの家庭にも当たり前のように刀や槍があったし、人殺しの経験もある、結構怖い人たちだった。徴兵されない町人は、包丁や鉈を手に使者にメンチを切った。


 兵士として日当は払うと言っても、庶民たちは誰も首を縦に振らず、使者は逃げ帰った。


 結局、どの小領主、豪族や公家も兵士を集められず、だが関所撤廃の命令は無視してしまい、信長から所領召し上げお家取り潰しのうえ打ち首の沙汰は下っているわけで、やらなければやられる、の状況下にある。仕方なく小領主たちは、


「ええい、俺の兵が少なくても、他の連中は兵をそろえているだろう」


 そう期待して、一緒に信長の那古野城を攻めると約束した他の勢力との待ち合わせ場所へ行くと、全員そろって少数揃いだった。


 でも前述の通りやらないとやられるわけで、どうしようかと思っていると、那古野城から完全武装した青少年たちがぞろぞろぞろぞろ、ぞろぞろぞろぞろと千人は出てきた。


 先頭を歩く青年、信長が、魔王の笑みを浮かべて一言。


「はーい、おしおきの時間でーす」


 豪族や公家たちの兵は凍り付き、一刻とかからず蹴散らされた。

  

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