第3話:もどかしい気持ち
「…つまんない。」
ぽつりと一言、私は漏らした。
「しょうがねぇだろ。サークルなんて入る余裕ないって。俺、ギリギリ合格したようなもんだから。」
太陽君はため息をついて、アイスコーヒーを飲み干した。
今は入学式帰りのファーストフード店。少しでも、一緒にいる時間を…と思い、同じサークルに入りたいとお願いしたけど、この有様。
まぁ、太陽君の言うこともわかるけどさ。
「…わかった。じゃあ、たまには一緒に帰ったりしようよ。」
「ん。…あんたはサークル入るの?」
あ、また『あんた』に戻ってる。名前で呼んでよ…なんて、可愛いく言えるわけないし、諦めよう。
「まだ迷ってるけど、友達と一緒のとこに入ると思う。」
「今日一緒にいた人?」
「うん。」
「ふぅん。」
…なに、その返事。もっと私に興味持ってくれないもんかな。…って言うか、この人、私のこと好きなのかな。自信なくなってきた…。
ホント、この人って謎。
「変な顔。」
どうやら私はふてくされたらしく、太陽君は私の鼻をつまんでそう言った。
「食い終わった?」
「あっ、うん。」
太陽君は立ち上がると、椅子に置いていた私のバックを手に取り、歩き始めた。さりげなく私の荷物を持ってくれたりするとこ、ホントにかっこいい。
「で、帰りはどっち?」
「どっちって?」
「あんたんちの方向。」
…もう、帰るつもりなのかな。まだ4時だっていうのに。
「…あっち。」
私は少し無愛想に真直ぐ前を指差した。
「電車?」
「うん。」
「じゃあ、駅まで送る。」
やっぱり。今日はこれでお終いか。まだまだ話したい事あるのにな…。
「…太陽君はどこら辺に住んでるの?」
「大学まで歩いてすぐのとこ。」
「…ふぅん。」
寄ってもいい?なんて、軽々しく言えないし…。だからってこのまま帰るのも寂しいし。なんか、もどかしい。今までこんなことなかったのにな。本当に相手を好きになると、こんな簡単な事でさえ言い出せなくて、寂しい思いしたりするんだね。
「…今日、まだ片付いてねぇんだ。」
「えっ?」
「部屋。」
「あ、うん…?」
「…だから!」
「はいっ!?」
「…今日中に片付けるから、明日はもっと一緒にいるから。」
太陽君はそう言うと、今までよりも少し歩くペースを上げた。…たぶん、真っ赤になった顔を、私に見られたくないから。
もう、なんだろう…すっごくこの人が好きだな。不器用だけど、やっぱり大好き。
「絶対今日中に終わらせてね!」
私は真っ赤になってる太陽君を覗き込んで、そう言った。