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問1 (11)

 僕は軍警の部隊長の魔述をかき消すため、大声で(と言っても間違えていたら恥ずかしいので、一番近くにいた兵士に聞こえるか聞こえないかくらいの、そこそこの声量で)叫んだ。


「① Cancel(キャンセル)!」(「取り消せ」・選択肢イ)

「② Don’t (ドント)use (ユーズ)magic(マジック)!」(「魔法を使うな」・選択肢エ)


 すると手に持っていた文法書が、目がくらむばかりの光を一面に放った。

 そして、光が消えるとともに、兵士やレジスタンスの魔述による光も、観客を束縛していた光文字も、僕自身の手足の光も、消えていた。



「お、おい……束縛が解けたぞ」


 観客たちが動き出す。


「ど、どうした! 魔述銃が……!」


 兵士の持つ武器から発せられていた光の攻撃が止んだ。


「これは……? 詠唱が止まっただと?」


 五井隊長も困惑した顔で手に持つ杖を見つめている。



 やった。僕ってすごいんじゃないか? 英語が通じた……! いや「通じた」って誰にだっていう話……だ……。


 急に、頭から血の気が引くのが感じられた。

 目の前が暗くなる。

 体を支えていた腕の力が抜けた。

 地面に再び倒れ込む。


 これは……魔述を使った反動が思いのほか大きい。効果が強すぎた分、負担も大きいんだ。

 口の中に血の味がする。

 胸元を見ると、一面血で濡れていた。どうやら鼻血が出たようだ。


 周りは騒ぎになっていた。

 魔述での束縛から解放された観客たちが、蜘蛛(くも)の子を散らしたように四方に逃げ惑う。

 兵士も混乱して統率が取れていない。


 皆を、助けられたのかもしれない。

 目でルネを探す。

 ちゃんと、逃げられてたらいいな。

 段々と意識が薄れていくのを感じる……。


 しかし、歯車がガタガタと軋むようなけたたましい機械音と、規則的な蒸気の排出音が、いま一度意識をつなぎとめた。

 先ほどのレジスタンスの蒸気車両だった。

 車両は僕の目の前で減速する。

 スライド式のドアが開いており、数人の人影が見えた。


 その中に……ルネ? と思しき人影もあった。


 一人が身を乗り出し、手を差し伸べてくる。

 さっきのレジスタンスのお姉さんだ。


「魔法使いさん、さっきは助かったわ。ありがとう。それで、いきなりの質問でとても悪いんだけれど、あなた一人で逃げて何とかするか、私たちと一緒に」


「行きます」


 被せ気味に回答をし、お姉さんの手を取ると、世界が暗転し、今度こそ意識が落ちるのを感じた。






□ ◇ □ ◇ □ ◇ □ ◇ 





「……い……ろ……」


 誰かの声がする。


「……おい……士郎……起きろ……」


 呼ばれている。聞き覚えのある声だ。


「おい、起きろって!」


 ゴッ。

 頭に衝撃が走った。


「……っつ……」


 頭を押さえて起き上がる。


「士郎君~。初めからずっと寝てるじゃないの。眠気覚ましだよ~」


 目の前に男性の顔があった。

 次いで、周りに大勢いるのが目に入る。

 あちゃ~、という表情の友人。


「……え?」


 そこは見慣れた、いつもの学校の教室だった。


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