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「はぁ。つまりあの夫婦は暖房目的でテント内で練炭焚いたら中毒起こしたって事?」
「何とも間の抜けたオチ……まぁ、助かって何よりですわね」
あの後、騒動は何事もなくおさまり、私達は穏やかな午前中を過ごした。
それから、
「またいつでも好きな時に来るといいさっ。白玉島はいつでも歓迎するよっ」
島と狐花さんとの別れの時間。
島中の猫と兎が港に集まり見守る中、
「あ、オウカちゃんは居残りね?」「なにぃ!? し、糸奇~」
私達は迎えに来てくれたプランさんの車で地元に帰る。
「はぁ、今日で春休みも終わりかぁ。でも楽しかったで糸奇さん! またこのメンツで遊ぼうな!」
「まぁ、たまになら、ですがね。毎回だと心労が凄そうですし。それで……お母様。この後の予定は……?」
「久し振りに、わたくしも家へと帰りましょうかね。では皆様御機嫌よう。行きますわよ繭」
「は、はい!」
そんなこんなで昼過ぎに駅にて解散。
振り返れば、それこそ一般学生らしい『普通』な一泊二日を過ごせたと思う。
私としては妹の為の今回のキャンプだったが、友人二人も楽しめたようで何よりだ。
学校に入ってから知り合った二人だが、こうも異常事態に対して無頓着なのは有難い。
長く付き合っていけそうだ。
――そうして、家へと戻った後。
「ふぅ……」
焚き火をした後は体も髪もすす臭くなる。
それも醍醐味だが、室内に入ると一気にクるので帰宅後すぐにシャワーを浴びた私。
遊び疲れからか少し眠気もあるが、明日から学校なので少し準備しておかないと……なんて考えながら、部屋に戻ると。
糸奇と笛子が抱き合っていた。
「……なにやってんのよ、あんた達」
「んー? 昼寝だけどー? ねーフェネ子」
「ぐぅ……」
「寝るなら寝室で寝ろっつってんの。なに私の部屋に布団敷いてんのよ」
「んー、晴れてるから布団干そうかなとフェネ子と運んでたんだけど面倒くなって。近くにクマ子の部屋があったからつい、ねー」
「ぐぅ……糸奇さんの匂いが付いた布団……笛子をダメにするクッションです……」
はぁ。
「帰って早々寝て……『家の本業』はいいの?」
「優秀な人達に任せてるからいいのー。てかクマ子、バスタオルの下から色々丸見えぅげっふっ」
「これでもっと見えるかしら? (グリグリ)」
「神の顔を足蹴にするとはなんて罰当たりな。あと正直、普通にパンツ見える方がうれしいかも」
「見るだけ見といて散々な言いようね」
「こっち来なよー眠いでしょー?」
「……はぁ」
どうせ場所を変えるつもりなど無いのだろう。
それに確かに眠かったし、一時間くらいなら。
私はゴロンと寝転がった。
空いてたスペース的に、笛子とで糸奇を挟む形に。
「あー『モフモフ』あったかぁ」「くっついてくんな」
それを言って従う男でもないし、知っているので私も振り払うのを諦めている。
……意図的なのか無意識なのか、糸奇はいつも暖かさを欲している。
気持ちだったり、人肌だったり。
それは妹も感覚で理解しているが、その要因を、妹は知らない。
過去を見る事の出来る私だからこそ知り得た事実。(妹自身、そこまで知らなくてもいい様子だが)
蓋を開けてみれば、糸奇も精神は普通の人間と変わらない。
神ではあるが人並に悩み、人並に苦しんだ、人以上の寂しがり屋。
私達姉妹に、糸奇の悩みを解決出来る力は無い。
そも、妹は解決を望まないだろう。
元の家族が戻るくらいなら自分で増やすと豪語するくらいに今の現状に満足しているから。
私も、糸奇を助けたい気持ちなど更々ない。
助けられた恩返しなど、たまにこうして抱き枕にはなってあげれば上出来だろう。
過去は過去。
私達が干渉する義務は無い。
糸奇は、こうして捨て猫な私達を拾った。
拾ったモノを最後まで面倒見るのは飼い主の義務。
私達はただ、愛されるのが仕事。




