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「こっちからはこの三鬼を出させて貰う。阿修羅、風神、雷神。来いっ」


ドンッ!

と効果音が鳴りそうな勢いで前に出て来たのは、これまた筋骨隆々な鬼さん達。


「ヒュー! 三獄鬼の登場ダァ!」「ちょっと可哀想じゃないっすかねぇ?」「本気すぎ!」


ゲラゲラと笑い声を上げる獄卒連中。

成る程、四天王的なキャラなのね。


「くっ、気を付けろ糸奇……奴ら三人私の世界の魔王軍幹部と同程度の力を感じる……!」


じゃあ大丈夫だな。


「分かってると思うが、俺らが勝ったらここを占拠させて貰うぜぇ? 好きな時に好きに遊ばせて貰う!」


少年漫画かと思ったらエロ漫画展開だった。

ヤベェよヤベェよ……。


「ん~? なんか盛り上がってるけど、どしたのみんな~?」


と。

ひょっこり、オモチャを見つけたような顔で現れたのは御津羽。


「新人ちゃんがおっぱじめちゃってねえ。やれやれよ」


乱れた浴衣を直しつつ説明するのはさっきまで宴会場で活躍していたサキュバスの一人。


「ごめんねタルトさん、仕事中にこの子がやらかしちゃって」

「んー? いいのよ糸奇ちゃん。アイツら旨みないし、下手だし、小ちゃかったし」何がとは聞かない。「あらぁ? 所で貴方、よく見たら可愛いわねぇ。肌も綺麗。もっと傷だらけだったなら最高だったけど」

「ヒェッ!? な、何を……」

「タルトさんはどっちもイケるんだよ~オウカちゃん」


傷を治しておいて良かった。

この人に狙われたら夢の中ですら追いかけられるからね。


「にしても~、成る程成る程、災難だったね~オウカちゃん。どうやらぼくの手を借りたい場面~? (ムシャムシャ)」

「す、すまない御津羽……、ん? さっきから、何を食っているんだ? 肉、か?」

「これ~? 何だろうね~? その辺に『実ってた』から、ブチリともいだんだ~」


御津羽がヒョイと上げた手に持っていたのは……【鬼の頭】。

確か【阿修羅】って名前だっけ。


ザワッ――――笑っていた鬼達が、一瞬で慄く。


「い、いつの間に!?」「そんな! あの阿修羅さんが!」「あのガキまさか!?」「知っているのか!?」

「お前も知ってるだろ! 他の地獄で獄卒も亡者もお構いなく喰い殺しまくったバケモンの話を!!」

「ッ!! あ、あのガキが【闇御津羽クラミツハ】だっていうのか!?」


闇御津羽――日本神話のマイナーな神ではあるがこちらの世界ではそこそこ有名。


「ん~そっか、これが今の焦熱地獄の幹部なんだ~。味が薄いってゆうか、食いごたえが無いってゆうか、質、落ちたね~? ま、ぼくが食い過ぎたせいなんだけど~」

「――あん!? なんだこりゃ! おいてめぇらまた騒ぎ起こしたんか!」


主任でもあるトロスちゃんが今にも人を殺しそうな形相で近付いて来て、

「お袋に色々言われるのはアタシなんだぞ! 糸奇が来るといっつもこうだよ!」


なんて嘆く。

お袋、というのはカアラさんの愛称? で、母さんだのママだの呼ぶ子達もいる。


「ちょっとトロスちゃ~ん。ぼくらを怒る前に見てよこの状況~」

「ああん? あ? なんで新人のガキが怪我してんだ? ……、……ああ、そうか。客にやられたんだな?」


直後、「そりゃあぶっ殺すしかねぇよなぁ!!」


トロスちゃんが獄卒連中に向けて何かを投げる。

カッ! と宴会場の壁に刺さったのは……おしぼり。

おしぼりって刺さる?


「え……ぅえ!? ふ、風神さんと雷神さんの首がふっとんでる!」「また三獄鬼が何もせずにヤられた!」「トロス? まさか!?」「知っているのか!?」

「お前も聞いたことあるだろ! 『天界を乗っ取ろうとした』バケモンの名前を!!」

「ッッ!! あ、あの女が【オルトロス】だっていうのか!?」


オルトロス――ギリシア神話のそこそこ有名(ゲームでも目にする)な怪物で、こちらの世界でも悪名を知る者が多いらしい。

僕より目立つな(嫉妬)。


「こ、これが、御津羽やトロスの実力!? 二人共、魔王……いや、それ以上だぞ!」


と。

あまりの展開に呆然としていたオウカが、漸く現状を理解する。

するのは結構なんだが……。


「や、こんなんで驚いちゃダメだよオウカ。御津羽もトロスちゃんもまだ露ほども実力見せてないし、元々持ってた装備品すら身に付けてない裸一貫だし。第一、二人とも桃源楼じゃ中の中ぐらいの実力だよ?」

「なっ。こ、こんな魔王クラスの奴らが、ここにはゴロゴロと……?」


そう。

ゴロゴロしている。

ここを攻め落とすつもりならボスラッシュを覚悟して貰いたい。

覚悟だけで崩せる城ではないけれど。


「み、みんなゴメンね……? 情けない九狐が、このオウカちゃんに助けて貰ったばっかりに……」

「えっ――発端は九ちゃんなの~?」

「な、成る程、わかった。わかったから気にすんな九狐っ」

「やっぱり……九狐の始末は九狐がしなくちゃだよね……?」ゴゴゴゴゴ

「「大人しくしてていい!!(よ~)」」


敵の前とは一転、味方の前で慌て出す御津羽とトロスちゃん。

もし、この桃源楼で四天王を決めるとするなら、間違いなく九狐ちゃんはその一人に入るだろう。

彼女が一度動いたら、壊れるのは桃源楼どころか幽世だけでは済まない。

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